日常、起こり得るトラブルや疑問を法律を通して考えるページ

労働

文字サイズ:

労働全般

2足のわらじで働く場合の労働時間

 私の勤めている会社は週休2日制を採用しています。その休みを利用して他の会社でパートトして働こうかと思っています。このような場合、私の労働時間はどのように考えればいいのでしょうか?


Ans
今勤めている会社で働いた労働時間とパート先で働いた労働時間を通算した時間があなたの労働時間となります。


異なった事業場で働く場合の労働時間

 労働基準法38条によりますと

労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する

と定めています。

 ここでいうところの「事業場を異にする」とは、
労働者が同一の事業主に属する異なった事業場において労働する場合だけでなく、事業主を異にする事業場において労働する場合も含みます。今回の場合について考えてみますと、あなたの今の会社における労働時間とパート先での労働時間を通算するという事になります。


三六協定と割増賃金

 複数の事業場で働く労働者の労働時間を通算した結果、労働基準法32条に定められた一週40時間、1日8時間の法定労働時間を超えてしまった場合、時間外労働となってしまいますので、36協定と割増賃金の支払いが必要になります。(なお、週法定労働時間については、常時10人未満の労働者を使用する物品販売などの商業、映画、演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業、接客業の事業場の場合、44時間とする特例措置が取られています。)

 では、36協定と割増賃金の支払いが必要になるのは、今働いている事業場なのでしょうか?それともパート先の事業場なのでしょうか
 通常は、複数の事業場で働く労働者と時間的に後に契約を締結した事業主が、契約を結ぶ際、その労働者が他の事業場で労働いているのかどうかを確認した上で契約を結ぶべき立場にありますので、その時間的に後に労働契約を締結した事業主が三六協定や割増賃金を支払う必要があると解されています。

 しかし、先に労働者と労働契約を締結した事業主が、その労働者が他の事業場で働く事を知りながら労働時間を延長させてしまった場合において、その事により法定労働時間を超えてしまったとしたら、先に労働契約を締結した事業主が時間外労働の手続きをとる必要があると解されています。

(労働基準法32条、36条、37条、38条)


温泉旅行に行きたいのに、会社から残業を命じられました

 私は、金曜日の午後5時に会社の勤務が終了してから、仲のいい友人と温泉旅行に出かけるつもりでした。しかし、上司からその日は残業するように命じられてしまいました。
この残業を拒否する事が出来るのでしょうか?


Ans
あなたの勤める会社の労使間に時間外労働の協定があり、就業規則の中にも時間外労働の義務が定められているのでしたら、会社から時間外労働を命令された個々の労働者には労働義務が発生すると考えられます。
このようなことですので、あなたが残業を拒否すれば、懲戒の対象となる場合もありますので、上司に今回の残業には応じられない事情を説明して、残業の日を変更してもらうのが宜しいかと思われます。


時間外労働の命令権

 使用者が労働者に時間外労働を適法に行わせるためには、三六協定の締結、届出が必要です

 しかし、使用者は、この三六協定があれば労働者に対し、当然に時間外労働を命じる事が出来るのかどうかについては、学説、判例の見解が分かれています。
つまり、

  1. 三六協定によって個々の労働者に時間外労働の義務は発生せず、その義務が生じるには個々の労働者の同意が必要である
  2. 三六協定のみでは時間外労働の義務は発生しないが、就業規則や労働協約中に時間外労働に服するべき旨が定められているならば労働義務が発生する

といった見解に分かれています。

これら見解のいずれが妥当であるのかは大変難しい問題です。
しかし、就業規則、労働協約の法的性格からするとその中に時間外労働に服するべき旨が定められている場合、それが労働契約の内容になり、時間外労働の義務があると解するのが妥当と考えられます。


時間外労働の命令を拒否した場合

 もし、前記2の見解の立場に立って考えてみますと、三六協定があり、就業規則や労働協約中に時間外労働に服するべき旨が定められている場合でしたら、時間外労働を拒否する事は業務命令に違反する事になりますので、懲戒処分の対象になります
しかし、使用者が事前に時間外労働を命じたのではなく、当日の就業間際になって時間外労働を命じたような場合についてまでこの見解をもちだすのも、労働者にとって少し酷ではないかと思います
したがって、そのような場合には、時間外労働の拒否をもって業務命令違反とする事は出来ないと考えられます。


仮眠時間は労働時間となるのでしょうか?

 私の勤めている会社は、月数回の24時間連続勤務(泊まりの勤務)があります。この勤務では、7~9時間の仮眠時間が設けられています。
この仮眠時間が労働時間になるのでしょうか?


Ans
 泊まりの勤務で何事もなければ仮眠をとる事が出来る時間だとはいっても、電話や警報に対応する必要があるのであれば、貴方は会社の業務から完全に解放された状態にはなりませんので、仮眠時間は労働基準法上の労働時間にあたると考えられます。


労働基準法上の労働時間

 労働基準法上の労働時間にあたるかどうかは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていたと評価できるかどうかにより客観的に判断されます
仮眠時間については、実作業に従事していない仮眠時間であっても、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価できる場合には、労働からの解放が保証されているとはいえず、労働時間に該当するという最高裁の判例が出されました。(平成14年)

 この判例では、本来は不活動である仮眠時間中に電話や警報など緊急に対応する必要があるならば、その仮眠時間は全体として労働時間となるとされています。
この判例のポイントは、仮眠時間中であっても、緊急の実作業に就いた時間が労働時間である事は当然の事とし、仮眠時間全体が労働時間とされたことでしょう。

(労働基準法32条、37条)


社員研修と労働時間

 今年の3月に大学を卒業し、4月からある会社の新入社員です。
先日、会社の上司から今度の日曜日に社員研修があるので出席するよう言われました。当日は、旅費と食事代は出るそうですが、日当は出ないそうです。
このような社員研修の時間は労働時間に含まれるのではないでしょうか?


Ans
 あなたが参加する予定の社員研修が、就業規則上の制裁等の不利益な取り扱いがあるので参加しなければならないという強制がなく、自由参加のものであるなら、社員研修の時間は労働時間になりません。しかし、強制参加のものであれば、当然その社員研修の時間は労働時間となり、会社は賃金の支払いなどの措置が必要です。


社員研修が労働時間となる場合

 最近、企業では社員の能力を向上させて企業の業績を上げる目的などから色々な研修が行われています
そういった研修の形式も会社主催のものや社員が自主的に主催するものまであり、研修の日時や場所、研修の参加が自由参加のものから強制参加のものというように多岐にわたります。

 こうした様々な形態がある社員研修に参加する時間が労働時間になるか否かの判断基準は、使用者がその研修への参加を強制しているかどうかによります
一般に労働時間となるには、使用者の業務命令があり、指揮監督下に置かれる事が必要です。

 したがって、社員研修への参加が自由参加のものであれば、その研修に参加する時間は労働時間になりません。
しかし、この自由参加か否かを考えるにあたり、これに参加しないと就業規則上の懲戒処分などを受けたり、人事考課上のマイナス評価を受けるといった場合や、研修内容が業務に不可欠の内容であり、これに参加しないと業務遂行上支障をきたす場合などといった、事実上、参加が強制されているのかどうかといった観点から実質的に判断する必要があります。


労働時間となる場合の使用者の措置

 参加を強制される社員研修が所定労働時間内に行われるのであれば、使用者はそれに対する措置は特に必要ありません
しかし、その社員研修が1日8時間の法定労働時間外に行われる場合には、使用者は労使間で結ばれた時間外労働の協定届出と割増賃金支払いの措置が必要です。

 また、その社員研修が1週1日もしくは4週4日の法定休日に行われる場合には、使用者は、振替休日の手続きを取らない限り、やはり労使間で結ばれた休日労働の協定届出と割増賃金支払いの措置が必要となります。

(労働基準法32条、35条、36条)


危険有害業務における残業

 私の息子は、陶磁器の製造会社に勤務しています。窯の係をしているらしいのですが、職場は大変暑い所だそうです。
先日、息子の上司が仕事が忙しくなってきたので当分の間毎日3時間残業するよう言われたそうです。
しかし、この様な職場環境の厳しい者に3時間も残業を命じる事が出来るのでしょうか?


Ans
あなたの息子さんが従事している仕事は労働基準法上の有害業務に該当すると考えられますので、会社は、あなたの息子さんに対して時間外労働の協定がある場合であっても、1日2時間までしか労働を延長させる事が出来ません。
したがって、息子さんの会社の残業の命令は違法です。


労働基準法32条・36条

 労働基準法32条は、労働時間を週40時間、1日に休憩時間を除き8時間と定めています
(週法定労働時間については、常時10人未満の労働者を使用する物品販売などの商業、映画、演劇業(映画の制作の事業を除きます)、保健衛生業、接客娯楽業の事業の場合、44時間とする特例措置が取られています。)


 使用者が法定労働時間を超えて労働者を働かせるには、労働基準法36条に基づき、その事業場の労働者の過半数を組織する労働組合か、又はその事業場の労働者の過半数を代表する者と書面による協定(三六協定)を結び、労働基準監督署長に届け出なければなりません

延長できる労働時間については、厚生労働大臣が労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めるとされています。


有害業務従事者の時間外労働

 坑内労働その他健康上特に有害な業務に従事する労働者については、その健康保護のため、三六協定の手続きをとる場合であっても、1日2時間を超えて労働時間を延長してはならない事になっています
したがって、有害業務に従事する労働時間は1日の法定労働時間+2時間となり、10時間までに制限されています。


ここでいう有害業務とは、

  1. 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
  2. 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
  3. ラジウム放射線などの有害放射線にさらされる業務
  4. 土砂などのじんあいまたは粉末を著しく飛散する場所における業務
  5. 異常気圧下における業務
  6. 削岩機などの使用により身体に著しい振動を与える業務
  7. 重量物の取扱いなどの重激なる業務
  8. ボイラー製造など強烈な騒音を発する場所における業務
  9. 鉛、水銀などの有害物の粉じん、蒸気またはガスを発散する場所における業務
  10. その他厚生労働大臣の指定する業務

となっています。

(労働基準法32条、36条)
(労働基準法施行規則18条)


身元保証人になって欲しいと頼まれました

 私の知人が今の会社を退職し、新しい会社に入社する際に、その会社から身元保証書を提出するよう求められ、私の所に来て「身元保証人になってほしいんだけど」と頼みに来ました。昔からの知人ですし、他に頼む人もいなかったらしいので、私が保証人を引き受けたのですが、私は、法的にどのような責任があるのでしょうか?

Ans
 身元保証契約に期間の定めがなければ3年間、定めがあれば5年間、あなたはその知人の行為によって会社が受けた損害を賠償する責任があります。しかし、必ずしも損害の全額を賠償しなければならないわけではありません

身元保証に関する法律

 雇用契約をする際に、身元引受人ないしは身元保証人を立てるという事はよくある話です。「身元保証」という言葉のイメージからは、ただ単にその人物の素性を確認するだけのように感じられますが、法的な意味を持つ身元保証契約というのは、身元保証人が「被用者の行為によって使用者の受けた損害の賠償」を約束するものであります

だたし、その損害は労働に関する事に限ります

契約書を作るような身元保証はそういう内容であるのが通常です。
昔から、身元保証において保証人の責任の範囲が、期間・内容において極めて広くなりすぎる実態というのがあったらしく、昭和8年に「身元保証ニ関スル法律」が制定されています。

この法律では、身元保証人の責任は妥当な限度に抑える事となっていますし、この法律の規定に反する特約であって身元保証人に不利益なものは全て無効とされています。

 昔の法律ですので少し読みにくいかもしれませんが、条文は1条~6条しかありませんので、時間があれば一読してみてはいかがでしょうか。

期間制限

 この法律では、引受、保証その他の名称である事を問わず、期間を定めていないで被用者の行為によって使用者の受けた損害を賠償する事を約する身元保証契約、を対象としています。

身元保証契約はその成立の日からか3年間その効力を有するとされており、身元保証契約でその期間を定めた場合には、5年を超える期間を定める事はできないとなっています

使用者の通知義務

 身元保証期間内に被用者の立場に変化が起こる事はよくあります
例えば、転勤で保証人が監督しにくい所へ行ってしまったなどです。
この法では

  1. 被用者に業務上不適任または不誠実な事跡があってこのため身元保証人の責任を惹起(じゃっき)するおそれがある事を知った時
  2. 被用者の任務または任地を変更し、この為に身元保証人の責任を加重し、またはその監督を困難ならしめた時

には使用者は遅滞なく身元保証人にその旨を通知しなければならないとしています。

 そして、身元保証人は1または2の事実を知ったときは、身元保証契約を将来に向かって解除しその責任を免れる事が出来るとしています。

身元保証人の賠償責任

 身元保証人の賠償責任については使用者に生じた損害額そのものとはしないで、一切の事情を斟酌(しんしゃく)して合理的な額を裁判所が決定すべきものとしています
斟酌される事情としては

  1. 被用者の監督に関する使用者の過失の有無
  2. 身元保証人が身元保証をなすにいたった事由とそれにあたり払った注意の程度
  3. 被用者の任務または身上の変化
    という事があげられます。

(身元保証ニ関スル法律1条~6条)


従業員を介して求人をする

 当社の事務担当の従業員が急に退職する事になりました。優秀な方でしたので非常に残念です。そこで、至急後任者を採用しなければならなくなりましたので、新聞広告で募集し、更に従業員に謝礼を出すので良い人を紹介してくれるよう頼んでみたのですが、大丈夫でしょうか?

Ans
 新聞広告で労働者を募集する事は自由に行う事が出来ますが、従業員に謝礼を出して労働者を募集する事はできません。

職業安定法上の募集の方法

 職業安定法上、労働者を募集する方法としては、次の3種類の方法があります。

  • 文書による募集
    新聞・雑誌その他の刊行物に掲載する広告又は文書の提出若しくは頒布による方法
    注意点として、業務内容、労働条件を明示する際、平易な表現、的確な表示に努める事
  • 直接募集
    労働者を募集しようとする者が直接労働者の募集を行う、又は雇用関係にある被用者をして労働者の募集を行わせる方法
  • 委託募集
    労働者を募集しようとする者が、被用者以外の者に対し報酬を与えて労働者の募集に従事させる方法で、厚生労働大臣の許可が必要です。この場合、報酬を与えずに行う場合には、厚生労働大臣への届出で足ります。

 職業安定法上、労働者の直接募集を行う者は、募集に従事する自己の被用者に対し報酬を与えてはならない事になっています。
(ただし、被用者に支給する賃金もしくは給料及びこれらに準じるものを除く)
これは、労働者の募集に従事する者が募集主から報酬を得るがために募集者を増加させるよう応募者に甘言を用いたりする等の弊害をなくすためです。これに違反しますと罰則があります。

今回の場合も、従業員を通じ募集する事は直接募集に該当し、募集に従事する従業員に謝礼を支払う事は報酬を与えるものと考えられますので出来ません。

(職業安定法4条、5条の3、36条、39条、40条、42条)

採用する際の試用期間

当社は、3か月の試用期間を経てから正式採用する事になっています。今回、採用した者の勤務態度がいまひとつ良くないので、もうしばらく様子を見てから正式採用を決めようかと思っているのですが、大丈夫でしょうか?

Ans
試用期間を延長して様子を見る事は、合理的な理由がある限り問題はありませんが、期間を何回も更新して長期に及んでしまうと無効になる場合があります。また、試用期間が満了して正式に採用しない場合はその旨を試用者に必ず通知して下さい。

試用期間とは

試用期間とは、社員を採用する際に、その者が社員としての適格性を有しているかどうかの判断が難しい為初めから正式採用とせず、一定の期間を定め、その期間中の勤務態度、能力、技能、性格等を見て正式に採用するかどうかを決定する事ができる期間をいいます。
見習い期間、試採用期間とか呼ばれています。

試用期間の法的性質

日本の企業が行っている試用期間は、企業と使用者との間で労働契約は成立しているけれど、試用期間中に試用者に正社員としての不的確事由があれば正式採用を拒否するといううものが多いです。
一般的には解約権を留保した期限の定めのない労働契約と解されています

しかし、試用期間が期限の定めのないとか、期間が長期にわたる場合は、公序良俗ないし信義則違反として無効となります。
一般的には、3か月とか6か月といった期間を定めている事が多いですが、1年を超える期間は無効とされた判例があります

正式採用可否の意思表示

正式採用を拒否する場合は、使用者に対し、正式採用の拒否の意思表示を明確にしておく必要があります。この意思表示がないまま、試用期間が過ぎてしまうと解約権留保期間が過ぎた事となり、使用者を正社員として扱わなければならなくなります。

留保していた解約権の拒否理由は、その趣旨、目的に照らし客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当として是認される場合にのみ認めらる、と解されています。


裁判例で一般的に正当とされた理由として

  • 勤務態度や勤務成績の不良
  • 業務不的確性
  • 経歴詐称
  • 誓約書等必要書類の不提出

等があります。

(労働基準法14条)

海外勤務者と労働基準法

社員を海外に出張させた場合、海外に現地事務所を設けて社員をそこでの勤務させる場合、現地に法人を設立して社員を出向させる場合において、日本の労働基準法の適用はどうなるのでしょうか?

Ans
労働基準法の効力は日本国内にある事業に及びますので、現地事務所の実態が事業としての独立性があれば労働基準法の適用はありませんが、海外での事業が国内の事業の付随的な出張作業にとどまる場合には適用があります。

判例によりますと
タイの現地法人へ出向していた労働者に対する賃金支払いにつき、原則として出向先が負担するとの黙示の合意を認定しつつ、出向先の支払い不能の際には出向元が負担する旨の合意をも認定し出向元会社に賃金の支払い義務を認めたケースがあります。

(労働基準法13条、117条~121条)

就業規則は必ず必要なのでしょうか

? [#x59dcf8d]
従業員3名、パート1名の会社です。就業規則を作成する必要があるのでしょうか?

Ans
労働基準法は、常時10人以上の労働者を使用する場合は就業規則を作成し、労働者の意見を聴取し、その意見を添付し行政官庁に届ける義務があります。
「10人以上の労働者」は事業所ごとにカウントします。本社7人、営業所4人でしたら10人以上ではありません。また、「労働者」は一般従業員、パート、アルバイトを問いませんが(派遣労働者は派遣元でカウント)
貴社の場合ですと就業規則作成義務はありませんが、いざ争いになった場合、労働基準法に定める休暇や残業手当について労働者の権利が認められます。労働条件や職場規律を明確にして無用の争いを避ける事が望ましいでしょう。

(労働基準法36条、89条、90条、106条)

労働審判制度

労働審判制度とはどういった制度なのでしょうか?

Ans
労働者個人と使用者との個別労働紛争を速やかに解決する事を目的とした平成18年4月から始まった制度です
地方裁判所に、職業裁判官(労働審判官)1人、労働者側、使用者側が推薦する各1人の労働審判員で構成する「労働審判委員会」が置かれます。労働審判員は専門的な知識経験を生かして中立・適切な審判・調停を行う役割を担います。
対象は、個人労働紛争(労働組合が関与していない)であり、解雇、雇止め、賃金・退職金の不払い等の紛争です。

この制度の目的は「迅速な解決」は主として「調停の成立」であると言えるようです。

調停が成立しなかった場合には労働審判がなされます。
労働審判に不服のある当事者は審判書送達又は審判の告知を受けた時から2週間以内に異議の申し立てをする事ができ、その場合には労働審判は失効し、審判申し立てがあった時に遡って訴訟提起があったものと扱われます。

(労働審判法)

女性労働者を採用するにあたり

営業部門を強化するため数名の採用予定があります。採用するにあたり、対象者を男性、女性いずれかに限るとか、対象は男性30まで、女性25までという制限をしてもかまわないのでしょうか?

Ans
「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(雇用機会均等法)では、採用に際して「その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」としおりますので、ご質問のような採用は原則として禁止されています。しかし、女性労働者が男性労働者に比べて少ない部署における女性の募集については、女性を有利に取り扱う事になるので、雇用機会均等法が特例として認めています。

雇用機会均等法とは

雇用機会均等法は、労働者が性別により差別されることなく、又、女性労働者が母性を尊重され、充実して職業生活を営む事ができるようにする事を基本理念とし、事業主、国、地方公共団体にこの理念実現のための措置を講じる事を求めています。
さらに、労働者の募集・採用、配置、昇進、降格、教育訓練、福利厚生、職種及び雇用形態の変更、退職の勧奨、定年、解雇、労働契約の更新において、事業主に男女の均等な取扱いをする事を義務付けています。

同法をうけて厚生労働省が取り扱い指針を公表しました。

  • 募集又は採用にあたり、条件を男女で異なるものにする
  • 募集又は採用にあたり、男女のいずれかを排除する
  • 採用選考において、能力及び資質の有無等を判断する場合、その方法や基準について男女で異なる取り扱いをする
  • 募集又は採用にあたり、男女のいずれかを優先する
  • 求人内容の説明など募集又は採用にかかる情報の提供につき、男女で異なる取り扱いをする

募集及び採用に際して、これらの事を事業主が講じる事を禁止ています

雇用機会均等法は男女の均等な取扱いをその目的としていますが、特例として、男女の均等な機会及び待遇の確保に支障となっている事情を改善する事を目的としておこなわれる場合には、募集及び採用にあたり男女の異なる取り扱いをしても差し支えありません。例えば、採用基準の満たす者の中から女性を優先して採用すると言ったことが挙げられます。

(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)

外国人を採用をするには

中華料理店を経営しています。経営も軌道に乗ってきたので中国から中国人のコックを呼び寄せて採用したいと思っています。どの様な手続きがいるのでしょうか?

Ans
外国人が日本に入国して就労するには就労ビザを取得し、入国許可を受けなければなりません。日本において外国人は、入国の際に与えられた在留資格と在留期間に応じて就労する事ができます。

出入国管理及び難民認定法(入管法)

日本に入国し、在留する外国人は入管法に基づき、入国の際に与えられた在留資格で定められた在留活動を行う事ができ、その活動ができる期間が定められています。これを在留資格制度といいます。

入管法は在留資格を27に区別しており、ご質問における在留資格はこの内の「技能」かと思われます。

又、在留資格のうちで、短期滞在、文化活動、留学、研修、家族滞在の在留資格を付与された外国人は就労活動をする事ができません
この様な在留資格で外国人を雇ってしまうと、外国人は強制退去、雇主も罰則があります。注意して下さい。
ただし、留学生については、本来の活動を阻害しない範囲でかつ、学生として相応しくない職種でなければ、法務大臣の許可を受けてアルバイトをする事ができます。この事ができる許可を資格外活動許可といいます。

採用の注意点

外国人を採用するに当たっては

  • その外国人の職種に該当する在留資格があるのかどうか
  • その在留資格に該当するための入国審査基準をその外国人が満たしているか

これらを確認する必要があります。

今回の中華料理店における外国人の場合ですが、採用しようとする中国人のコックさんが、中華料理の調理について10年以上の実務経験があり、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けるのであれば、「技能」の在留資格と1年の在留期間が認められるのではないかと思われます。

入国の際の審査手続きの円滑な進行

外国人が入国する際、従前は

  1. 本人が自国政府に旅券の発給を受ける
  2. 自国内の日本の在外公館に対し在留資格に応じた査証の申請をし、査証を取得
  3. 入国の際、査証をつけた旅券を提示し、入国審査官に入国を申請し、審査を受ける
  4. 入国許可を受ける(ここで在留資格と在留期間が決定される)

といった方法が原則でしたが、2と3でかなりの時間がかかってしまいます。
そこで現在では、日本の招へい先(今回は中国料理店)が地方入国管理局に必要書類と在留資格認定証明書の交付申請をし、その交付を受けたうえで、本人がこの証明書を所持し、自国内の日本の在外公館に査証申請し、査証を取得する方法が一般的になります。
この方法ですと在留資格の審査がすでに終了していますので、上陸審査の時、審査の手続きが簡略化されます。

尚、平成24年7月から入管法が一部改正されますので詳しい事はお近くの地方入国管理局又は専門家にご相談下さい。

(出入国管理及び難民認定法)

powered by Quick Homepage Maker 4.85
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional