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相続の税金

相続についての税金

相続税を納期限までに納める事が出来ません

 私達の父が亡くなり、父の遺産を調べたのですが、ほとんどが不動産や美術品でしたので相続税の納期限までに金銭で納める事が出来そうにありません。
 この様な場合、どのようにすればいいのでしょうか?


Ans
 相続税を納期限までに金銭で納める事が出来ない場合は、延納や物納といった方法があります。


延納

 相続税を納める場合、基本的には金銭で納めなければなりません。もし、納期限までに納める事が出来ない場合は相続税の延納するための申請をし、延納の許可を受けなければなりません。
 延納の許可を受けるためには相続税の納期限または納付すべき日までに「延納申請書」「担保の供与に関する書類」を税務署に提出して行います。

 延納をする事ができる要件として

  1. 申告により納付する事となる税額が10万円を超えている事
  2. 納期限まで又は納付すべき日までに金銭で納付する事を困難とする事
  3. 担保を提供する事 延納税額が50万円未満で、延納期間が3年以下であれば不要

 延納出来る期間は最高で20年で、延納期間中に利子税がかかります。延納期間や利子税の利率については相続財産の内容によって決められます。また、平成18年4月1日以降に発生した相続・遺贈にかかる納税については、申告期限から10年以内に限り延納から物納に変更する事が出来ます。


担保の種類

 担保として提供するものは、国債、地方債、土地等、延納される税額や利子税額などを十分に担保する事ができるものでなければなりません

 延納されている税金が納められなくなった場合、担保として提供されたものは公売されて、その代金が延納税額や利子税額に充てられることになっています。


物納ができる場合

 相続税を延納によっても金銭で納めることが困難な場合は、相続財産そのものを納付する事によって納税する事が出来ますこの事を物納といいます
 物納をする場合は、納期限までに又は納付すべき日までに、金銭で納付する事を困難とする事由、物納しようとする税額その他所定の事項を記載した「物納申請書」を提出する事によって、相続財産による物納が認められます。
また、延納と物納の申請は同時に行う事が出来ます

 物納する事ができる財産は、相続や遺贈により取得した財産で日本国内にあるもののうち、次に掲げるものとされています。
1 国債、地方債、不動産、船舶
2 社債、株式、証券投資信託や貸付信託の受益証券
3 動産

 又、次のような場合には、物納が認められる場合もあります。

  1.  相続財産のほとんどが、相続人の居住用または事業用の土地又は家屋で、係争中の財産である等の特段の事由のないものについては、金銭で納付する事を困難とする金額を限度として、その土地(底地)について物納をする場合
  2.  相続財産のほとんどが、取引相場のない株式であり、かつ、その株式以外に物納に充てるべき財産がない場合には、金銭で納付する事を困難とする金額を限度として、その取引相場のない株式による物納をする場合
  3.  物納に充てようとする財産が、物納許可申請時において、美術品の美術館における公開の促進に関する法律による登録美術品の登録を受けたものである場合


物納が認められない場合

 許可の時点において、質権その他の担保権の目的となっている財産、係争中の財産、共有財産、法令上譲渡に関する特別の定めのある財産等、管理または処分が適当でない財産は、物納が認められない事になっています。

(相続税法38条、39条、41条、42条、52条)
(租税特別措置法70条の8の2~70条の12)


特別縁故者が相続した場合の相続税

先日、一緒に暮らしていた内縁の夫が亡くなりました。内縁の夫は身寄りのない人だと聞いていますので、相続人は誰もいないと思われます。
このような場合、私は内縁の夫の財産を受け取る事が出来るのでしょうか?


Ans
亡くなった人に相続人が誰もいなかった場合には、亡くなった人と一緒に生活していた人や療養看護に努めた人等、特別の縁故関係にあった者に、遺産の全部または一部が分与される事があります。


相続人がいなかった場合

 死亡した人に相続人がいるかどうかはっきりしない場合、その遺産は法人扱いされる事になり、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、相続財産管理人を選任します。相続財産管理人は、債権者などへの公告や死亡した人に債務がある場合には、債務の弁済の手続きを進め、又、家庭裁判所は、一定期間内にその権利を主張するよう、相続人捜索の公告をします。

 こうして、相続人の不存在が確定すると、遺産は、最終的には国の所有となりますが、亡くなった人と一緒に生活していた人や療養看護に努めた人等、特別縁故者から請求があった場合は、家庭裁判所は遺産の全部または一部を分与する事が出来ます。


特別縁故者の相続

 特別縁故者が財産の分与を受けた場合は、法定相続による取得という事ではなく、被相続人から遺言によって受け取ったものとみなされて相続税がかかる事になります
そして、その財産の価格は、通常は相続が開始した時の時価によるとされています。

 しかし特別縁故者への分与の場合の財産の評価は、分与を受けた時点で評価する事になっています。但し、相続税の計算は、あくまでも亡くなった人の相続開始の日における税法に基づいて計算する事になります。

 特別縁故者として相続財産の分与を受けた場合は、相続人が遺贈を受けた場合における相続税法上認められているいろいろな控除は適用されません
少し具体的にいいますと

  •  基礎控除
     遺産にかかる基礎控除5000万円は控除されますが、法定相続人1人当たり1000万円の控除は受けられません
  •  配偶者の税額軽減
     1憶6千万円または、法定相続分2分の1のいずれか多い方に相当する額に対する税額軽減措置(無税)は受けられません
  •  未成年者控除
     相続や遺贈によって財産を取得した者が相続開始時に20歳未満で日本国内に住所を有する場合に受けられる未成年者控除
     (6万円×(20歳-年齢))
  •  障害者控除
     相続や遺贈により財産を取得した者が心身に障害があり、日本国内に住所を有する場合に受けられる障害者控除
     (一般障害者の控除額=6万円×(85歳-年齢))
     (特別障害者の控除額=12万円×(85歳-年齢))
  •  相次相続控除
     10年以内に2回以上の相続があった場合に税負担を調整する意味でなされる控除

この他にも

  •  配偶者及び1親等の血族に当たらないため、相続税額に2割相当額が加算されます

 このような事になりますので、特別縁故者が相続財産分与を受けた場合は、その時の時価で評価して5000万円以下であれば非課税で済みますが、これを超えた場合には、超えた額について法定の計算による相続税が課せられます。

(相続税法4条、15条、19条の2~20条)
(民951条~959条)


相続税はどのように計算するのでしょうか?

 先日、夫がなくなりました。夫の遺産について色々調べてみたのですが、不動産や、株券などが相当あり、相続税が課税されるのではないかと思っています。相続人は、私と2人の子供です。
相続税の税額はどのような計算方法なのでしょうか?


Ans
一般的に、相続税額の計算方法は少々複雑です。まず初めに、遺産や債務の状況、法定相続人の数など色々な情報が必要です。
その上で段階を経て税額を求めます。


課税価格の合計額

 相続税の課税対象となる財産には、不動産、現金、預貯金、有価証券などといった本来の相続財産のほか、みなし相続財産や相続前3年以内の贈与財産、相続時精算課税を選択した贈与財産等があります
そして、これらの財産の評価額を相続人ごとに合計します。その額から、被相続人の債務と葬式費用を差し引いた金額が、相続人ごとの課税価格で、これを合計したものを「課税価格の合計額」といいます。


課税遺産総額

 「課税価格の合計額」がわかったら、次に「課税価格の合計額」から相続税にかかる基礎控除額を差し引きます。
この額が、課税遺産総額といいます。

この基礎控除額は次の計算式で求めます。
基礎控除額5000万円+1000万円×法定相続人の数

 法定相続人は、実際に相続したかどうかに関係なく、原則として民法上の相続人の数で計算します
ここで注意すべきことは、養子がいる場合です。この場合の法定相続人は次の通りです。

  • 実子がある場合→実子+養子のうち1人
  • 実子がない場合→養子のうち2人まで

 その他にも、相続放棄をした人があっても相続放棄がなかったものとして法定相続人の数を計算します。

以上で説明しました基礎控除額より課税遺産総額が少なければ相続税を納付する必要もありませんし、申告も不要となります


相続税の総額

 相続税は、相続した人にかかる税金ですので、多く相続した相続人は、税金も多く課税されるのが原則です
しかし、相続税を求める際計算上は、各相続人が、民法の規定による法定相続分に応じて取得したものと仮定して、各人の仮の相続税額を計算するというワンステップが必要です。
この場合、相続放棄をした人がいたとしても、相続放棄をしなかったものとして、その人も含めます。
計算式は以下のようになっています。
課税される遺産総額×各相続人の法定相続分×速算表の税率-速算表の控除額=各相続人の仮の相続税額

ここで求められた各相続人の仮の相続税額を合計したものが、相続税の総額になります。

上記計算式で必要な速算表の税率速算表の控除額は以下の通りです。

課税標準税率控除額
1000万円以下10%ーー
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
3億円以下40%1,700万円
3億円超50%4,700万円



各相続人が負担する税額

 次に、各相続人が実際に取得した財産の価格に応じた相続税を、先程計算した相続税の総額を使って計算します

計算式は以下のようになります。
相続税の総額×(各相続人の課税価格÷各相続人の課税価格の合計額)=各相続人の税額

このようにして計算すると、各相続人の負担税額を計算する事が出来ますが、納付する税額は各相続人の立場によってさらに控除、増額される場合があります
贈与税額控除額、配偶者に対する税額軽減額、未成年者控除額、障害者控除額、相続税額の2割加算といったものです。

(相続税法11条~20条の2)


相続税の対象となる財産

 先日父が亡くなりました。父が遺した財産を調べてみたのですが、相続税の対象となる財産とはどのような財産なのかわかりません。
父が遺した財産全てが相続税の対象になるのでしょうか?


Ans
 まず、相続税というのは、人の死亡により残された財産をもらった人に課税される税金です。金銭的価値のある全ての財産が相続税の対象となっています。


相続財産

 相続財産には、土地、建物、現金・預金、株券、債券、ゴルフ会員権などの一般的なものの他に、庭園設備、日常使用していた家庭用品なども含みます
しかし、財産全てにそのまま税金がかかるというわけではなく、課税対象財産ごとの評価額を合計した正味の遺産額が、相続税の基礎控除を超える部分に、相続税がかかります


相続財産とみなされるもの(みなし相続財産)

 このように、亡くなった人の所有していた財産の他に、相続財産とみなされて課税対象となるものがあります

 例えば、死亡保険金は、保険料を支払っている夫が死亡したら受け取り人である妻に保険金を支払うといった契約により保険会社から支払われるものです。
本来ならば、亡くなった人の財産ではありませんが、死亡により利益が生じる事から、相続財産とみなしています。
この他にも、会社から遺族に支払われる死亡退職金や功労金のうち、死亡後3年以内に支給額が決定たものも相続財産とみなします。
ただし、死亡保険金と死亡退職金のうち、それぞれ500万円×法定相続人の数までの金額については相続税がかかりません


相続開始前3年以内の贈与財産

 遺産を分けることになる相続人に、その相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産(贈与税の配偶者控除の特例を受ける特定贈与財産は除く)がある場合には、贈与時の評価額で相続財産に加えられます
この場合、既に申告した贈与税があれば、相続財産に加算した贈与財産価額に対応する贈与税額は、贈与税額控除として相続税から差し引く事が出来ます。


相続時精算課税制度を選択した贈与財産

 相続時精算課税制度を選択した生前贈与がある場合には、生前贈与をした時の評価額で、相続財産に加算します
この場合、先程のような相続開始前3年という期間の制限はありませんので、全て相続財産に加算する事になります。


相続税がかからない財産

 以下のような財産は相続税の対象となりません

  •  墓所、霊びょう、祭具など
  •  宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者が相続または遺産により取得した財産で、公益を目的とする事業の用に供するもの
  •  地方公共団体が行う心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権
  •  生命保険金、退職手当金などのうち、一定の金額(非課税限度額;法定相続人の数×500万円)

 この他にも、相続財産を相続税の申告期限までに、教育、科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献、その他公益の増進に著しく寄与すると認められる国、地方公共団体、特定公益法人などに贈与した場合には、相続税や贈与税が不当に減少する結果となる場合を除き、その贈与した相続財産に、相続税は課税されません。

(相続税法2条、3条、12条、19条)
(租税特別措置法70条)


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