取引と金銭貸借
- 割賦・訪問販売などの問題
- その他消費者取引の問題
- クレジットカードの問題
- 金銭貸借等の問題
- 保証と担保の問題
割賦・訪問販売などの問題
ローン提携販売とクレジット契約
インターネットで何げなくさまざまなホームページを見ていると「ローン提携販売」という言葉が出てきました。
これはどういったものなのでしょうか?又、クレジット契約(信用購入斡旋契約)とはどう違うのでしょうか?
Ans
ローン提携販売は、クレジット契約(信用購入斡旋契約)と似ているようですが、全く違うものです。
どちらも割賦販売法による規制をうけ、クーリング・オフの適用はありますが、その他の規定については適用されないものが多くあります。したがいまして、契約書をよく読んでどちらの契約かを知っておくといいでしょう。
ローン提携販売とは
ローン提携販売とは、商品などを購入する際、購入者が、販売業者の保証のもとに金融機関との間で金銭消費貸借契約を結び、融資をうけ、融資を受けたお金でもって販売業者に購入代金を一括支払いをし、金融機関に融資を受けたお金を分割返済する取引のことをいいます。
一般にオートローン、電化ローンなどと呼ばれているものがこれにあたります。
金融機関から商品代金を融通してもらい、後で分割弁済をするという点ではクレジット契約とよく似ています。
しかし、ローン提携販売は、金融機関に対し、販売店が購入者の弁済を保証しているという点において大きく異なります。
金融機関としては、販売業者が保証人となってくれるので購入者の弁済が止まってしまったとしても回収する事ができやすいというメリットがあります。
ローン提携販売は、信用購入斡旋契約と経済的には変わりがなく、割賦販売法の適用があり、クーリング・オフや書面の交付義務の制度がありますが、クレジット契約に適用されている事がローン提携販売では適用されないものもあります。
抗弁の接続
クレジット契約では、販売業者に対して主張できた抗弁(言い分)を金融機関にも主張して代金の支払いを拒む事が出来るという規定があります(抗弁の接続)。
従前、この規定はローン提携販売には適用がありませんでした。
その理由として、購入者からの支払いが遅滞すると、貸し付けた金融機関が販売業者に対し、保証契約に基づいてその履行を求め、販売業者はこれを履行すると今度は購入者に一括弁済を求める事となりますので、結局、購入者と販売業者間の問題になるので、上記のような抗弁はそこで主張すればいいのではという事にあります。
しかし、金融機関と販売業者の経済的一体性からすると、この結論はおかしいとの批判も強く、平成11年の法改正により、ローン提携販売についても割賦販売法30条の4及び30条の5が準用される事になり、購入者は販売業者に対する抗弁を金融機関に対抗する事が出来るようになりました。
解除及び損害賠償の制限
クレジット契約については、分割金の弁済が滞った場合
- 解除については20日間以上の猶予期間をおいて書面で催告する事
- 損害賠償の額については、通常の使用料または販売価格から時価を控除した額のうちいずれか高い方に法定利息を加えたもの
といった制限等が割賦販売法に定められていますが、ローン提携販売については明示の規定がなく、その適用がないかのようです。
そうした所、クレジット契約と比較して、この扱いについては批判が強く、特に損害賠償の額については、最高裁の判例でローン提携販売については、クレジット契約と同じ扱いをするという見解が示された事もあり、販売業者からの求償については、これらの制限があると考えてもよいのではないかと思われます。
(割賦販売法2条、5条、6条、29条の2~29条の4)
未成年の姪が振袖を購入した際の、連帯保証人の責任
私の姪は未成年です。その姪がクレジットで振袖を買おうとしていたのですが、両親はそれに反対したそうです。
そこで、叔母である私の所に来てクレジット債務の連帯保証人になってくれと泣きついてきました。気の毒になりましたので連帯保証をしてあげました。
暫くすると、姪はクレジット代金を支払いきれなくなり、未成年を理由に売買契約の取り消しをしようとしています。私は保証債務を履行しなければならないのでしょうか?
Ans
未成年を理由に取り消す事が出来る取引による債務を、未成年である事を知りながら保証した者は、その取引が取り消されても責任を負わなければならないのが原則です。
しかし、今回の場合はこの適用がないものと考えられますので、保証債務の履行を免れるものと思われます。
未成年者を理由による取消し
今回のご質問を整理してみますと
①姪御さんは販売店との間で振袖の売買契約を締結
②クレジット会社との間で立替払契約を締結
③あなたは②の契約から発生する債務を保証した
という事になります。
ところで、未成年者が売買などの法律行為をするには、法定代理人の同意が必要であり、その同意がない場合にはその法律行為を取り消す事が出来ます。
そうであるなら、①の売買契約を取り消すと初めからなかったものとなり、未成年者はその代金を支払わなくてもよい事になります。(そして、払ったものがあれば、返してもらえます)
①と②の契約は別々の契約ですが、①の契約の取り消しをクレジット会社に主張して、クレジット代金の支払いを拒絶する事が出来ます。(抗弁の接続)
抗弁の接続については
「取引と金銭貸借」>「クレジットカードの問題 」>「クレジットの分割払いで購入した商品が来ない」
で解説していますのでそちらをご覧ください。
民法449条の考え方
本来、取り消しにより「主たる債務」が消滅してしまえば、保証債務も無くなり、保証人もその責任を免れる事になります。
しかし、民法449条は、能力を制限される者が能力の制限を理由に取り消す事が出来る場合の保証人の責任について定めています。
それによると、保証人がその取り消し原因を知って保証した時は、主たる債務と同一の目的を有する独立の債務を負担する意思があったと推定し、例外的に責任を免れないとされています。
(実際に、保証人がそのような意思を持って保証したのかは疑わしく、この条項の合理性については疑義が持たれています)
もし、①の売買契約における代金債務の連帯保証でるなら、民法449条が適用され、保証人としての責任を免れる事は極めて難しいでしょう。
しかし、今回の場合は、①の売買契約ではなく②の立替払契約の連帯保証はどうなるのかという事です。
①を取り消した事により②も取り消されたものと同様な状況になるのですから、民法449条を適用できると考える事も可能です。
しかし、449条の合理性には疑義がありますので、この条項を適用するのは慎重にならざるおえません。
今回、取り消されたのが②の契約であったなら449条を適用する事も出来ますが、①の売買契約であったなら449条を適用すべきではないでしょう。
なぜなら、①と②の契約は別個独立の契約だからです。
したがって、①の売買契約が取消された原因を②の立替払契約の保証人が知っていたからといって、449条を適用すべきではないと考えるべきだからです。
そうなりますと、主たる債務が取消され、はじめからなかった事になれば、保証債務もなくなる事になりますので、あなたの責任は免れるという事になります。
少しややこしくなってしまいました。申し訳ございません。
その原因としては、449条に基づいて保証人となろうとするのかどうかという事ではないかと思います。
未成年者が高価な品物を買わされた場合
私の高校生の娘が高額な英会話教材を買う契約を締結してしまい、少し驚いています。英会話教材の代金を支払わなくてはならないのでしょうか?
Ans
未成年者(民法上、20歳未満の者)が売買等の法律行為をするは、法定代理人の同意が必要です。この同意のない場合には、原則として、契約を取り消す事が出来ます。
民法の原則
日本の民法は、社会人として十分な判断能力を持った人間を前提としています。この様な者が約束(契約)をした場合には約束した事を守らせるようにしています。
しかし、未成年者は一般にこの判断能力が未熟であるため、単独で取引した場合に、望ましくない結果が生じてしまうおそれがあります。
この様な事から民法は原則として、未成年者が取引をするには、法定代理人(一般的には親)の同意を必要とする事にし、この同意のない契約は取り消すことができる権利を認めました。
以上は、あくまでも原則的な事です。以下はそれ以外の場合です。
詐術を用いた場合
あらゆる未成年者の取引を取り消す事が出来るわけではありません。
例えば、未成年者が成年者であるかのような言動をしたり、親の同意があるような言動をしたりして、相手方を誤信させる様な『詐術』を用いた場合には、取り消す事が出来ません。
この詐術に当たるかどうかの判断は、単に沈黙していたとか、相手方に聞かれて未成年者である事を否定していただけでは足りず、より積極的な言動が必要であると解されています。
処分を許された財産
以下の場合には取り消しをする事ができません。
- 仕送りなどのように使用目的を定めて処分を許された財産があり、その目的の範囲内で費消した(使った)場合
- 小遣いなどのように、使用目的を定めないで処分を許された財産を費消した(使った)場合
それでは今回、問題となった英会話教材が分割払いで、その分割金が毎月の小遣いの範囲内だとしたらどうなるのでしょう?
ある判例では
1か月分の分割金が「処分を許された財産」の額の範囲内であっも、支払総額が2カ月分である時には、取り消しが出来るとしたものがあります。
未成年者が婚姻している場合
未成年者が婚姻している場合には、その者は成年者とみなされてしまいますので、その者がした契約を守らなければならなくなります。
まだ年齢が未成年だからといって取り消すことはできません。
追認をした
法定代理人(親など)が未成年者がした取引を知り、これを認めた(追認をした)場合、取り消す事が出来なくなります。又、取引があった事を知った親が分割金を支払ってしまった場合も、追認をしたとみなされてしまいますので注意してください。
相手方の催告
相手方は、法定代理人に対し、1か月以上の期間を定めて追認するかどうかの確答を求める事が出来ます。この際に法定代理人は、これを放っておいて定められた期間を過ぎてしまうと追認したものとみなされてしまいます。
内容証明郵便による取り消し
取引の取り消しは、法定代理人または未成年者から相手方に通知すればそれで足りますが、後日、何らかのトラブルが発生した時の為に、配達証明付きの内容証明郵便でしておくと宜しいかと思われます。
契約を取り消した時は、代金支払い義務はなくなり、既に支払った代金があればそれの返還を求める事が出来ます。商品については、返さなくてはなりませんが、使用、費消していた場合には、残ったものを返せばいい事になっています。
(民4条、5条、20条、21条、120条~123条、125条)
妻が勝手に私名義のクレジットカードを使用
私の妻は、私に内緒で最新式の掃除機をクレジット契約で購入してしまいました。価格は8万円です。当然の事ですが、クレジット会社は私に代金の支払いを請求してきます。
私は全額支払わなければならないのでしょうか?
Ans
あなたの奥さんがなした、掃除機の購入をするためのクレジット契約による債務は、「日常家事債務」と考えられますので、あなたにもクレジット代金を支払う責任があります。
日常家事債務は連帯債務
現在の民法では、夫婦それぞれの財産はそれぞれが管理処分をする権利を有する事になっています。したがって、勝手に夫婦の一方が他方の財産を処分する事が出来ません。
しかし、民法にはこの原則に対しての例外規定を設けました。「日常家事債務」というものです。
「日常家事」について夫婦の一方が法律行為をしたときには、他方は、これによって生じた債務を連帯して責任を負うという規定です。
「日常家事」というのは、「夫婦の共同生活に通常必要とされる一切の事項」と言われています。具体的にいいますと、「家庭用の食料品の購入、衣料品の購入、子供の教育等」といった事をあげる事が出来ます。
日常家事に当たる場合、当たらない場合
この「日常家事」の範囲が具体的にどのくらいなのかを判断するに場合に、裁判所は、それぞれの夫婦の社会的地位、職業、資産、収入、地域社会の慣習、取引の種類・性質等を考慮して判断します。
テレビの購入、電子レンジの購入、湯沸かし器の購入、学習用の教材の購入等が「日常家事」に当たるとされましたが、先程の様々な要素を考慮した上での事ですから、どのような場合でも同じ結果になるとはいえません。
また、「日常家事」に当たらないものとして、太陽温水器の購入、担保権の設定、布団の購入などがあります。
今回購入された掃除機について考えてみますと、具体的状況は明らかではありませんが、掃除機は通常、家庭生活の必需品となっている事、価格が8万円というそれほど高額であるとは言えないことなどから、「日常家事債務」に当たると解され、あなたに支払い義務があるかと思われます。
現実的に難しい事かもしれませんが、奥さんに対して、支払いをするから月々のお小遣いを上げてもらう等の措置をとる事ができれば宜しいかと思われます。
「内金」というものの考え方
よく聞くのですが、売買契約に先立ち、または同時に「内金」などと称してお金を売主に支払う場合があります。
この様な場合に、売買を解消する事が出来るのでしょうか?
Ans
本来、内金とは、売買代金の一部として前払いされる金銭の事をいいます。
この内金と称して支払ったお金の性質が「申込証拠金」か「手付金」かを考えなければなりませんが、どちらの場合でも、売買の解消をする事が出来ますが、手付金であれば戻ってこないでしょう。
申し込み証拠金
物を買う際、まだ契約に至らない前に買い手が「他の人に売らないでほしい」という事で、いくらかの金銭をい支払う事があります。
買い手としては、一応買うつもりだけれど、もう少し考えた後に買うのをやめると決めたらやめさせて下さいという程度の気持ちでしょう。
これは、後日売買契約をするという約束をしたに過ぎず、授受された金銭はその証拠としての事であると同時に、やめたくなった場合はこのお金を放棄してやめるという趣旨で授受されるものだという事になると思います。
この様に授受された金銭を「申込証拠金」「予約金」等といわれています。この様なものについて特別の定めがある場合があれば、それに従う事になりますので、初めに相手方とお話をされた方がいいかと思われます。
手付
これに対し、既に購入するという意思を表明していて、契約と同時に金銭を交付する場合があります。
これが、手付といわれるものです
手付には概ね3種類あります。
- 証約手付
契約が成立した事の証拠としての意味の手付 - 解約手付
無条件に契約を解約する権利を留めておくという意味の手付 - 違約手付
契約の不履行があった時の違約金を定めておくという意味の手付
民法は、手付が交付された時は解約手付であるとの推定規定を置いていますので、原則として、手付金が交付されている時は、これを放棄して契約の解約をする事ができる事になります。
つまり、手付金は返ってきませんが、代金を支払う必要もなくなるということになります。
通信販売で買う場合の問題点
通信販売を利用する際に、商品が届かない、商品が粗悪品、商品が壊れていた等という問題についてはどう対応すればいいのでしょうか?
Ans
通信販売ではいつ契約が成立するのでしょう?
一般に契約は「申し込み」と「承諾」があった時に成立します。
通信販売では購入者は購入を申し込んだときが「申し込み」、販売業者が商品の発送をした時「承諾」があったとみる事が出来ます。
したがいまして、契約が成立するのは商品を発送する時という事になります。
もし、商品はもういらないということであれば最初にした購入の「申し込み」を「撤回」しておく必要があります。後日証拠を残しておくために、撤回の通知は配達証明付きの内容証明郵便でしておくとよいでしょう。
(内容証明郵便についてはこちらを参照)
では、商品が壊れて届いた場合はどうでしょう?
一般的に通信販売では販売業者が商品を購入者のもとに届ける事が契約の内容になっています。(持参債務)
持参債務の場合、壊れてないものを届ける事が義務となっていますので、壊れていた場合には改めて壊れていない商品を届けるよう請求する事が出来ます。
これに業者が応じてくれない場合には契約を解除する事が出来ます。
商品が粗悪品であった場合は?
カタログなどを見て購入者が商品を購入する事決める事が一般的ですので、カタログに記載されているのと同様の商品を販売業者は届ける義務があります。届いた商品が粗悪品であれば購入者は改めてカタログに記載されているのと同様の商品を届ける事を請求する事が出来ます。
これに販売業者が応じない時は契約を解除する事が出来ます。
しかし、商品がカタログより少々安っぽいという程度の違いだけではこういった請求をする事は出来ません。
訪問販売で買った物の返品について
セールスマンが私の家に訪問してきて、つい話に乗せられ商品を買ってしまいました。この様な場合、返品する事ができるのでしょうか?
Ans
原則として、売買契約が成立していれば、理由なく解約は出来ませんが、特定商取引に関する法律の適用があるならば、クーリング・オフをして返品し、代金を返還する事ができます。
訪問販売とは、営業所以外の場所で商品などの売買をする事をいいます。特定商取引法という法律は、こうした場合に購入者の利益を守るために様々な規制があり、クーリング・オフもその1つです。
特定商取引法
特定商取引法によると、業者は
- 商品などの対価、支払時期・方法、引き渡し時期、クーリング・オフに関する事項を記載した書面
- 契約内容を明らかにする書面
を交付しなければならないとなっています。
そして、商品、権利、役務を訪問販売で購入した場合、前記の書面①を交付された日から8日間(①のまえに②の書面を交付があれば、その日から8日間)であれば、無条件で書面で契約を解除する事ができます。
この書面による解約は配達証明付き内容証明郵便でしておくとよいでしょう。(解約の効果は発信した時です)
(内容証明郵便についてはこちら)
クーリング・オフの注意点
- クーリング・オフは原則、全ての商品・役務の取引に適用されます。
但し、生鮮食品、葬儀などクーリングオフになじまないものは除外されます。 - 代金総額が、3000円以上である
- 営業用のために購入した場合は出来ません。
クーリング・オフをする際に発生すると思われがちな費用などを利用者が負担させられる事はありません。
又、訪問販売の際、セールスマンの話が不実告知(虚偽説明)・不退去等による困惑により契約を締結した場合に、消費者契約法(平成13年施行)の要件に該当すれば、追認する事ができる時から6カ月以内ならば取り消す事ができます。
(特定商取引法に関する法律1条~5条、9条、24条)
(特定商取引法に関する法律施行令1条~3条、6条~7条)
(消費者契約法4条)
口頭によるクーリング・オフをした場合
訪問販売で、ついセールスマンの口車に乗せられて商品を買ってしまいました。購入3日後に電話で解除する旨を伝えました。その後、1カ月ほどして業者から書面でしなかったから解除は認められないと言われたのですが、私の解除は認められるのでしょうか?
Ans
あなたは「口頭によるクーリング・オフ」をした事になります。クーリング・オフは書面でする事になっていますが、「口頭によるクーリング・オフ」も有効であると解されています。
クーリング・オフの趣旨
商品や取引に関する知識などにおいて、買い手より売り手の方に圧倒的に優越しているという現状、これに乗じる売り手の巧妙な、高圧的なセールスをするという実情を考え、買い手に契約を存続させるかどうかを考えさせる期間が必要ではないかという趣旨からでてきたものです。
特定商取引法
原則として、意思表示に制約はありません。しかし、特定商取引法9条では、クーリング・オフは「書面」で行うとしています。
この理由は、その日付について後日紛争が生じないようにしておくためだと言われています。
ですので,クーリング・オフは内容証明郵便を利用した方がいいでしょう。
(内容証明郵便についてはこちら)
設問の口頭によるクーリング・オフについてですが、上記のとおり有効と解されていますが、あくまでも通知をしたことが立証できた場合であり、これを立証する事は現実問題として非常に難しい場合もありますので、やはり書面ですべきでしょう。
又、訪問販売の際、セールスマンの話が不実告知(虚偽説明)・不退去等による困惑により契約を締結した場合に、消費者契約法(平成13年施行)の要件に該当すれば、追認する事ができる時から6カ月以内ならば取り消す事ができます。
通信販売で代金を支払ったのに、商品が届かない
通信販売で商品を注文し、代金を送金したのですが、全く送られてきませんでした。もう、商品はいらないので返金して欲しいのですが、どうしたらいいでしょうか?
Ans
申し込みをした業者が「承諾書」を発してるならば、商品の引き渡し期限を定めて催告した後、商品が来なければ契約の解除をして代金の返還を請求する事ができます。「承諾書」を発していないならば、申し込みを撤回して、代金の返還請求をする事ができます。
通信販売における契約の成立時期は業者が承諾をした時(商品の発送時、承諾書を発送時)です。
また、特定商取引に関する法律では、商品購入の申し込みがあり、代金の支払いがあったら、遅滞なくその申し込みに対し、承諾するかしないかの返事を書面でしなくてはなりません。
この2つの事をまとめて当てはめてみると
通信販売業者は、商品の発送前に承諾書を発送していれば、その時に契約が成立しますが、まだ発送していない場合は契約は成立していません。
この「承諾書」を発しているか否かで返還請求の仕方が違います。
- 承諾書が発せられていない時
この場合は、まだ契約は成立していないので、承諾の通知をするのに相当な期間が経過していれば、申し込みを撤回する旨を告げ、支払った代金の返還を請求します。 - 承諾書が発せられている時
この場合は、すでに契約は成立していますので、むやみに契約の解除をする事はできません。出来るのは商品の引き渡しの請求をする事です。
しかし、一定期間内に送るよう催促しても通信販売業者が商品を送ってこない場合には、契約の不履行(債務不履行)というこのになり、契約の解除をする事ができます。契約解除の通知は、配達証明付きの内容証明郵便でした方が証拠を残すためにいいかと思います。(内容証明郵便についてはこちら)
契約を解除してしまえば、契約はなかった事になりますので代金の返還を請求する事ができます。
*電話勧誘販売についてはクーリング・オフの適用はあります。
(特定商取引に関する法律13条)
(民412条、526条、540条)
その他消費者取引の問題
霊感商法・霊視商法とは
自宅にある日、品の良い女性が訪れました。近くに引っ越してきたらしく挨拶回りなのかなと思ってしばし世間話をしていた所「占いをしてあげます」というのでみてもらいました。
手相や家系図を見てもらうと、「あなたには先祖の因縁が付いていて、このままでは家族に災いがおります。それを防ぐには、この掛け軸を買えば大丈夫です。」というので、私は気味が悪くなって、30万円もする掛け軸を買ってしまいました。
解約したいのですが、出来ますか?
Ans
あなたの場合、特定商取引に関する法律(特定商取引法)に基づき、クーリング・オフをする事が出来ると思われます。また、場合により、詐欺・強迫により契約を取り消す事が出来ます。
霊感商法・霊視商法
占い(人相、手相、名字の字画など)をすると称して接近し、先祖の因縁が付いているなどと述べて人を不安な心理状況に陥れ、それに付け込んで、印鑑、壺、掛け軸などを売りつける商法を霊感商法といいます。
今回のように、各家庭を訪問るする場合もあれば、展示会と称して一定の場所に誘い込んで販売するという場合もあります。
その他にも、悩み事相談なるパンフレットを新聞の折り込みチラシに入れ、悩み事の相談者を集めては「先祖の因縁」とか「水子のたたり」があるなどと述べて、人を不安に陥れ、それらから救われるためには祈祷する必要があると言って法外な祈祷料を支払わせるなどの商法もあります。
これを霊視商法とよんでいます。
霊感商法も霊視商法も、宗教や霊といった超自然的なものを利用し、人を心理的不安に陥れて金員を出させるという点では同じ手口です。
こうしたものに対しての救済方法はどのようなものがあるのでしょうか?
特定商取引法による救済
今回の場合には、女性が購入者の家庭を訪れて販売をしていますので、「訪問販売をしている」といえ、同法の適用があり、同法によるクーリング・オフが出来ます。
クーリング・オフとは、無条件に解約する事が出来る制度であり、契約書などの法に定められた書面を受け取った日から(その日も含めます)8日間以内に、書面で契約を解約する旨の通知をすれば、解約ができます。
しかし、相手方の営業所で契約を締結した場合には同法の適用はありません。
その他の救済
霊感商法では、販売員や霊能者と称する者が、何人も取り囲んで先祖の因縁の害を説いたりして強い不安感を与えます。
また、霊視商法では、奇妙な雰囲気の部屋の中に招き入れられ、祈祷師なる者が同様に「因縁」「怨念」などと説かれて不安な気持ちにさせられます。
どちらの場合も、不安感を与え、商品を購入させたり、祈祷を受けないと、あなたやあなたの家族にどのような不幸が及ぶかわからないと信じさせ、また畏怖させるわけですから、詐欺または脅迫にあたる場合があり、この場合には契約を取り消す事が出来ると考えられます。
そして、このような商法は、人の不安につけ込むものであり、全体として公序良俗違反になるといえます。
更に取得した代金、祈祷料が法外なものであれば、暴利行為としても公序良俗違反になり、無効であるといえます。
しかし、これらの立証は一般的に難しいのが現状であり、仮にそれが出来たとしても費用と時間と手間がかかりますので、常日頃からこうした商法に引っかからないように注意する事が肝要かと思われます。
消費者契約法との関係
なお、このような不実行為(虚偽説明)、困惑行為などの消費者契約法の要件に該当する場合には、平成13年4月から施行された消費者契約法の適用を受けますので、追認する事が出来る時から6カ月以内であれば、取り消す事が出来ます。
(特定商取引に関する法律5条、9条)
(消費者契約法4条)
(民法90条、96条)
催眠商法
街を歩いていた所、『今日、この地で新発売!お望みの商品を即売致します』などというビラにつられて会場に行った所、会場の熱狂的な雰囲気につられ、羽根布団を買ってしまいました。
後で調べてみると高い買い物をしたという事がわかり、非常に悔しい思いをしています。どうにかならならないのでしょうか?
Ans
いわゆる催眠商法に引っかかったものと思われます。その業者が目的を隠して客寄せをしていたとすれば、特定商取引に関する法律(特定商取引法)によるクーリング・オフをする事が出来ます。
催眠商法の手口
催眠商法とは、客を一定の場所に集め、閉鎖的な状況を作り出して、群集心理を操って冷静な判断能力を客から奪い、その上で目的の商品を買わせる悪徳商法です。
その手口としては、まず、ビラの広告や雑貨などの無料引換券で人々をある一定の場所に集め、その部屋を閉め切ります。
そして、話術の堪能な販売員がお客の心を惹き付け、その話の中でさらりと「今日はこの商品を早く手を挙げた方先着10名様に100円で販売します」とか「クイズに答えられた方先着10名様ににこの商品を1000円で提供させて頂きます」などと述べ、人々が先を争って手を上げたりさせるなどの状況を作り上げ、会場を興奮状態にします。
この様な状況でお客が冷静な判断能力を失った所を見はからい、本当に売りたい商品を紹介します。
「本日は、この羽根布団が超目玉商品です。なんと、定価30万円するのですが、今回はここに来て下さった方に限り5万円の超破格値で提供させて頂きます」といったような勧誘でしょう。
そこにいるお客は、既に頭に血が上っていますので、羽根布団が必要なのかどうか、5万円のが妥当なのかなどと考えもせず反射的にわれ先に手を挙げてそれを買ってしまうのです。
そうして、後で考えてみると、必要なものではなかった、値段もせいぜい2万円程度のものでしかなかったということが多いのですが、買ってしまった以上、後のまつりという事で諦めてしまうのです。
特定商取引法による救済
この様に、催眠商法で買ってしまった人は救済されるのでしょうか?
まず、目的を隠して客寄せする催眠商法の場合には、特定商取引法の適用対象とされています。
したがって、たとえ業者の営業所で契約を締結したとしても、クーリング・オフにより、契約を無条件に解約する事が出来ます。
クーリング・オフは契約書などの法律で定められた書面を受け取った日から(その日も含めて)8日間以内に書面で解約する旨の通知を発する事により効力が生じます。
もし契約書などの書面を受け取っていなければ、この8日間の期間制限はなくいつまでも解約する事が出来る事になります。
その他の救済手段
催眠商法は、予めたくらんで、集団催眠的な勧誘方法により、客の判断能力、思考力を麻痺させて契約させるもので違法な勧誘と言わざるおえません。
したがって、この様な勧誘により成立した契約は公序良俗に反し無効なものといえ、更に業者に対して不法行為責任を追及する事も考えられます。
又、販売会場で業者は、商品について過大な広告をするのが常ですから、説明通りの値打ちのない事を知りながら、あたかもその商品がもっと値打ちのあるかのように装って売るのですから、これは詐欺にあたり、その契約を取り消す事が出来ます。
しかし、公序良俗違反、不法行為、詐欺は、立証が難しいのが現状です。
仮に出来たとしても時間がかかったり、裁判の為の費用がかかったりしますので救済はなかなか難しいと思われます。
ですから、こうした商法には近づかない事が一番の方法です。
消費者契約法との関係
そして、この様な勧誘の話が不実告知や困惑行為などの消費者契約法の要件に該当する場合には、平成13年4月から施行された消費者契約法の適用を受けます。
その場合には、追認する事が出来る時から6ヵ月以内であれば、取り消す事が出来ます。
(民90条、96条、709条)
(特定商取引法に関する法律9条)
(消費者契約法4条)
資格商法ってなに?
最近、私の自宅に「○○協会」と称する団体のセールスルマンがよく来ます。話を聞いてみると、この団体の主催する講座を受講すれば、ある資格が取れ、近い将来公的な資格となるので私の将来にも役に立つ、との事でした。
私は、将来役に立つのならと思い契約する事にしました。受講料を送付した後、関係行政機関に問い合わせをした所、その資格が公的な資格になる予定はないとの事でした。出来るなら解約したいのですが、出来ますか?
Ans
あなたの場合には、特定商取引に関する法律(特定商取引法)により、クーリングオフが出来ると思われます。又、詐欺による取消しや、錯誤による無効の主張もする事が出来ます。
資格商法
ある講座を受講すると、公的に認められた何らかの資格が取得する事が出来ると称して、申込金や受講料を支払わせる商法を「資格商法」といいます。資格の名称に「士」の文字が使われる事もあるので「サムライ商法」とも呼ばれます。
本当に、受講して得る資格が世の中で役に立つものであれば問題はありません。しかし、全く世間で認められていない資格を、あたかも国家資格やそれに準ずるものであるように勧誘するのは欺瞞的といえます。
この様な資格商法には特徴があります。
- 名称が「○○協議会」「××審議会」「△△協会」などのように、いかにも公的機関が主催してるのではと思わせるイメージ
を与えるものである - 職場などに執拗に電話をかけ、あいまいな返事をした事をもって契約の成立を主張する
- 「あなたが、最後です」「申込期間は今日までです」などと、勧誘される者を焦らせるようなセールストークをする
- 「申込みまたは支払いをしない」と、こちらが伝えると「仕事を続けられなくしてやる」などの脅迫的言動を用いる
特定商取引法の適用
特定商取引法は、商品の販売についてのみならず、今回のような「技芸または知識の教授」のごとき役務についても適用されますので、セールスマンが勤務先に訪れて契約をした場合や電話による勧誘を受けて契約をした場合にも、クーリングオフをする事が出来ます。
クーリングオフは、無条件に契約を解約する事が出来る制度であり、契約書など法に定められた書面を受け取った日を含めて8日間以内に、書面で契約を解約する旨の書面の通知をすれば解約が出来ます。
補足
ダイレクトメールによる勧誘など一部の通信販売の方法によっての勧誘活動がなされる場合には特定商取引法の適用はありませんので注意が必要です。
その他の救済(詐欺、錯誤、脅迫)
今回の場合では、私的な資格に過ぎないにもかかわらず、近い将来公的な資格になるかのように勧誘される者を騙して契約をさせたのですから、詐欺にあたると言わざるおえません。
そうしますと、騙された者としては、詐欺を理由に契約を取り消す事ができ、契約を取り消せば、その契約は遡って無効になりますので、支払ったお金を返すよう請求する事が出来ます。
又、相手の言動によって錯誤に陥るとも考えられますから、錯誤による無効を主張して既払金の返還を求める事も出来ます。
その他にも、申し込みを断ろうとした際に、脅迫的言動を言われる事もあります。こうした状況で、後の事を恐れて契約をしてしまった場合には、脅迫を理由として取り消しをする事が出来ます。
消費者契約法との関係
この様なセールスマンが、不実告知(虚偽説明)、困惑行為など、消費者契約法の要件に該当する場合には、平成13年から施行された消費者契約法の適用を受けます。この場合には、追認する事が出来る時から6カ月以内であれば、取り消す事が出来ます。
いずれにしても、契約を締結する際には、契約をする前に相手方についてよく調べておく必要があります。
(民95条,96条)
(特定商取引に関する法律1条、9条)
(消費者契約法4条)
高額なキャンセル料の請求
中古車販売店に行ったのですが、目的の車種がなかったので探してもらう事になりました。その際に注文書を作成しました。そうした所、代金を前払いして欲しいと言われたので、注文した翌日に注文を撤回しました。すると販売店は、買主の都合で契約を撤回した場合は代金の20パーセントを損害賠償金として支払わなければならないと注文書に書いてあるからと言って請求してきました。この損害賠償金を支払わなければならないのでしょうか?
Ans
簡単に申しますと、消費者契約法9条1項の適用により支払い義務はないと思われます。
損害賠償の予定
契約をした場合には、契約を一方的にキャンセルする事は出来ないのが原則です。契約を遵守しなければ債務不履行となり損害賠償をしなくてはなりません。
実際に債務不履行があった場合、どれくらいの損害賠償になるのか見当もつきません。そのような事をなくすために契約当事者があらかじめ債務不履行の場合の損害賠償の額を決めておく事があります。一般にいう所の「損害賠償の予定」というものです。
民法は、損害賠償の予定の合意を有効であるとし、裁判所もこの額の増減をする事は出来ないと、規定しています。
この合意があると、債権者は債務不履行の事実さえ証明すれば、損害の発生、その額について証明する必要はなく、大きめの額で約定していれば履行を確保する事が出来るというメリットがあります。また、債務者にとっても、損害賠償額があらかじめ明確になっていれば、リスク計算しやすくなるというメリットがあります。
消費者契約法
それでは今回の問題において考えてみます。
「損害賠償の予定」は有効なのでしょうか?
民法の原則からすると有効であると解する事が出来ます。
しかし、民法は対等な当事者を前提としています。
実際には、事業者と消費者との間には情報力、交渉力において相当の差があるのが通常ですから、民法の前提は崩れているといってよいでしょう。こうした実情を考慮して消費者契約法で消費者の保護を図っています。
事業者と消費者との契約における契約条項は事業者が一方的に用意する事が通常ですので、事業者に有利になっている事が少なくありません。この様な場合に、消費者契約法は消費者にとって不利な条項を無効とするとしています。
損害賠償の予定条項については、平均的損害額を超える部分については無効であるとしています。
それでは、「平均的損害額」とはどのようなものなのでしょう?
抽象的にいいますと、解除の事由、時期などにより同一の区分に分類される複数の同種の契約の解除に伴い、事業者に生じる損害額の平均値、とされています。さらにその立証責任は事業者にあります。
結論
今回の「平均損害額」がどの程度であるかは一概には述べる事が出来ません。しかし、注文の翌日に撤回していることから考えますと通常は損害は生じていないと言えるのではないかと思われます。そうだとするとキャンセル料を支払う義務はないということになります。
会員権商法
自宅にリゾートクラブ会員権の購入を勧めるセールスマンが最近訪れます。その人によると、「リゾートホテルが有利に利用でき、会員権も将来は上がる見込みだからお得です。仮に売却できなくても時価で引き取ります。」という事でした。リゾート会員権を購入したいのですが、大丈夫なのでしょうか?
Ans
リゾート会員権は、施設を他の人より有利に利用できるのか、将来、値上がった時に換金する事ができるのかを慎重に調べてから購入するかどうかを考えた方がいいかと思います。
リゾートクラブ会員権
リゾートクラブ会員権は、ホテルや付帯設備を他の人より有利が条件で利用できるというものです。
セールストークとして、いつでも自由に利用できるなどと説明すると思いますが、いざ休みをとり利用しようと思っても、殆どの人が一斉に休日をとる時期(夏休み、ゴールデンウィークなど)と同じ時期になってしまうので、購入した人が考えていた、「いつでも、自由に」という事は難しいのではないでしょうか。
そこで、解約を申し入れをしても応じてくれなかったり、支払った額の一部しか返還してもらえない場合が殆どでしょう。
また、譲渡換金しようとしても会員権の流通市場が十分に整備されている訳ではないので、換金する事ができないという事になります。
仮に換金する事ができたとしても、希望金額とは程遠い額で回収する事になると思われます。
クーリング・オフの利用
訪問販売の方法等により契約した場合は、特定商取引に関する法律の適用があります。つまり、同法9条により、同法5条所定の「書面の交付」を受けた日から8日以内であればクーリングオフ制度で契約を解約する事ができます。
民法上の救済
リゾートクラブ会員権の販売をするセールスマンは「値上がりしたら、すぐ換金する事ができます」などと、実際にそのような流通市場が十分整備されていない現段階では、民法上詐欺に該当する可能性がありますので、その場合には契約を取り消せることができます。同時に、錯誤にも該当すると考えられますのでその際には無効を主張する事ができます。
消費者契約法
又、訪問販売の際、セールスマンの話が不実告知(虚偽説明)・不退去・断定的判断の提供等による困惑により契約を締結した場合に、消費者契約法(平成13年施行)の要件に該当すれば、追認する事ができる時から6カ月以内ならば取り消す事ができます。
リゾートクラブ会員権の購入をお考えの際は、経費、会則、解約方法などをよく確認し、実際に施設に足を運び、施設の利用実態、評判などをしっかりと確認する事が必要でしょう。
(民95条、96条、709条)
(特定商取引に関する法律5条、9条)
消費者契約法とは?
消費者契約法とはどの様な法律なのでしょうか?
Ans
消費者契約法は
消費者と事業者の契約につき、消費者の保護を進め、契約の勧誘の際に事業者に不適切な行為があった時は消費者は契約を取り消せることとし、契約に消費者の権利を不当に害する条項があった時はその条項を無効とする
としています。
元来契約については民法が中心的だったのですが、現代では複雑化、高度化、情報化の進んだ社会となってしまい、民法の前提問題である「対等で自由な契約」とは言えなくなっています。
こうした不都合を避けるため、一定の場合に消費者を保護する事にしました。
事業者の情報提供義務
同法3条1項で事業者に対し
- 契約の内容が消費者にとって明確かつ平易になるよう配慮する
(透明性の原則) - 勧誘に際して契約内容について必要な情報を提供する
(情報提供義務)
事について努力する義務を課しています。
消費者側にも、提供された情報を活用して契約内容について理解するよう努めるものとする
となっています。
消費者側も契約当事者としての責任を果たさなければなりません。
消費者が契約の取り消しが出来る場合
大きく分けて2通り(①、②)あります。
①事業者の情報提供が不適切なため、消費者に誤認を生じた場合
- 不実告知
重要事項について事実と異なることを告げた - 断定的判断の提供
確実でないのにあたかも確実であるかのように告げる
(目的物が確実に上がりますよぉ~と言われる) - 不利益事実の不告知
消費者の利益になる事は告げるが、不利益となる事を告げない
②事業者による不当な強い働きかけがあり消費者が困惑した場合
- 不退去
消費者が出ていってくれと言っているのに、その住居から退去しない - 監禁
消費者が出ていくと言っているのにそれをさせない
こうした不適切行為が原因で契約を締結した場合は消費者は契約を取り消せます。
契約が無効とされる場合
同法10条で
信義則に反して消費者の利益を一方的に害する時はその条項を無効とする
としております。
具体的には
- 債務不履行責任、不法行為責任、瑕疵担保責任を免除する条項
- 消費者の支払う損害賠償額の予定が平均的な額を超えた条項(無効となるのは超過分のみ)
- 遅延損害金等の未払い金の年14.6%の割合を超えた条項(無効となるのは超過分のみ)
消費者契約法はあくまでも事業者と消費者との契約に適用されます。
事業者同士等には適用されません。
補足
平成18年に消費者契約法が改正され内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体が事業者に対し差し止め請求をする事が出来るようになりました。
(消費者契約法3条、4条、8条、9条、10条、12条、12条の2)
インターネット取引
インターネットで商品を購入するつもりもなかったのですが、誤って購入ボタンを押してしまいました。この場合、購入しなければならないのでしょうか?又、何かの事情でデータが相手方に到達しなかった場合はどうなのでしょうか?
Ans
電子消費者契約法により、画面上に取引の意思を確認する措置が講じられていない場合には、契約は無効となります。又、購入の返事が届いていない場合には、契約は成立していませんので購入義務はありません。
機械の操作ミス、質問者のように購入するつもりもないのにボタンを押してしまった、といった、インターネット特有の問題が生じています。
平成13年に「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」(電子消費者契約法)が制定、施行されました。
錯誤
承諾のデータが相手に到達した場合、相手に「買う」という意思表示がなされますが、内心では買うつもりはない。この様に意思表示と内心の真意が異なる事を「錯誤」といいます。民法では錯誤の場合は、その意思表示は無効となり、意思表示が無効なら契約も無効という事になります。
しかし、例外があります。
ちょっと注意すれば意思表示を間違える事はなかったのにそれすらしなかった(重過失といいます)。この様な場合も無効にするのは相手方との関係で不公平ですし、安心して契約する事も出来ません。
この様な場合には無効を主張する事ができないとしています。
コンピュータの操作ミスは重過失になるのかどうか、この点が問題となる所です。ありがちな操作ミスを全て消費者の責任とするか、全て業者の責任とするのか、どちらも問題があります。
電子消費者契約法はインターネット画面上で申し込みを行う前に申し込みの内容を確認する措置などが講じていない場合に、操作ミスによる申し込みは無効としました。
この措置が講じてある時は民法の規定通り「重過失」があるとされる事が多いと思われます。
契約が成立する時期
民法は契約は「申し込み」と「承諾」があった時に成立するとされています。対面取引ではこれで問題ありません。
相手が遠くにいる時(隔地者間の取引)の場合は、「申し込み」があって「承諾」の返事を出した時に契約は成立します。(発信主義)
そうなりますと、インターネット取引は隔地者間の取引ですからボタンを押した時契約は成立してしまいます。
又、データが間違いなく相手に着けばいいのですが、何かの事情でそうでない時は問題です。
この様な事から電子消費者契約法は隔地者間の取引であっても「承諾が到達した時」に契約が成立する事にしました。
したがって、ご質問の後段では、まだ契約は成立していないので、購入義務はない事になります。
クーリング・オフの新設
平成20年6月、特定商取引法の改正により、クーリング・オフの規定が新設されました。
それによると、通信販売いおいて返品特約について広告に表示していない場合には、購入者は商品の引き渡しから8日間は契約の解除ができるもとのされています。
ご質問においては、仮に契約が有効でも、解除権を行使する事も可能であると思われます。
(民95条、526条、527条)
(電子消費者契約法3条、4条)
(特定商取引法15条の2)
コンプリートガチャ(コンプガチャ)が平成24年7月1日から規制されますが、利用者は直ちに損害賠償請求を起こす事が出来るのでしょうか?
Ans
消費者庁がコンプリートガチャ(コンプガチャ)について景品表示法に抵触するとの判断をしました。
消費者庁は有料のコンプガチャはゲーム上で
- 「ガチャ」と呼ばれる有料の電子くじを引いてアイテムを取得し
- 数種類のアイテムを揃えると別の希少なアイテム(レアアイテム)がもらえる
という仕組みであり、1においては問題ないが2という仕組みをつくって有料ガチャに顧客を誘引するという
「当該取引に付随して提供される経済上の利益であって、「便益、労務その他の役務」に当たるもの、すなわち、景品表示法第2条第3項の「景品類」に該当します。」
と発表しました。
又、コンプガチャという名称ではなくてもビンゴゲームのように図柄を合わせるとアイテムがもらえる仕組みが違法になる場合もあるとしています。
詳しい事はこちら
損害賠償請求については今回の措置は、
- 景品表示法上においてのカード合わせに関する考え方
- 景品表示法の運用基準の改正に関するパブリックコメントについて
を公表した事であり
景品表示法の運用基準の改正
ですので難しいかと思われます。
マルチ商法について
友達から、貴金属の販売をやらないかと誘われました。話によると、貴金属1個を買って会員となり、会員となったら今度は貴金属を買い受け、それを販売してマージンがもらえるというもので、買った人が会員になると地位が上がりマージンも増えるとの事です。強引に誘われてしまい契約をしてしまったのですが、販売する自信もないので解約したいのですが、どうすればいいのでしょうか?
Ans
いわゆる、「マルチ商法」と言われる誘われたものと思われ、クーリング・オフをする事により、解約をする事ができると思われます。
マルチ商法
マルチ商法とは、商品を購入するか、又は一定の取引料を支払って会員となり、そして会員を勧誘すればするほど地位が上がり、その会員の販売した商品の利益から分配を受けられるものを「マルチ商法」といいます。
会員を勧誘し、またその会員が他の会員を集めると分配利益も増える。こういったネズミ算式に増えていくという所に欺瞞性があります。永遠に会員が増えていくなんて事はあり得ませんので、そのうち破綻する事は目に見えています。
また、商品が売れそうもないものだったり、近所の人との関係もうまくいかなくなるおそれもあります。
マルチ商法はそれ自体が禁止されているわけではありませんが、取引料が必要である等の重要な事実を隠して勧誘したり(事実の不告知)、商品の特性を偽って勧誘する(不実の告知)等の事があったら特定商取引法の規制対象になり、罰則もあります。
マルチ商法と特定商取引法
特定商取引法では「連鎖式販売取引」として次のような規制を設けています。
- 勧誘する際は、連鎖取引であることを知らせ、その内容やクーリング・オフについて記載した書面を交付する
- これら書面の受領の日(商品代金を支払った場合は、商品を受け取った日)から20日以内にクーリング・オフができる事
クーリング・オフができない場合でも、マルチ商法の危険性がありますので、公序良俗違反による契約無効、不法行為による損害賠償の請求をする事ができる場合もあります。
また、勧誘の話が「不実告知」など、消費者契約法の要件に該当する場合には、消費者契約法による、追認をする事ができるときから6カ月以内ならば取り消す事ができます。
(民90条)
(特定商取引に関する法律34条、40条)
(消費者契約法4条)
ネガティブオプションという悪徳商法
頼んでもいないのに洗濯用石鹸が送られてきました。一緒に一枚の説明書きがあり、それによると、「購入するなら代金を送金、不要なら一週間以内に返送して下さい、返送がなければ購入を承諾したものとみなします」とのことでした。送られてきて一週間が過ぎてしまったのですが、代金を支払わなければいけないのでしょうか?
Ans
この様に、購入の申し込みをしていない者に対し一方的に商品を送り付け、購入しない旨の通知や商品の返送をしない限り購入したものとみなすとして代金の請求をする商法を「ネガティブオプション」といいます。
民法の大原則
民法の大原則である、契約が成立するためには売主の「買って下さい」と買主の「買いましょう」の意思の合致が必要です。
しかし、今回の場合は売り主側の申し込みはあるものの、買主側の承諾の意思表示はありません。たとえ、売主が「返送なければ、購入したものとみなす」と添え書きやパンフレットに書かれていても同じ事です。
売買契約が成立していないけど、商品は手元にあるという状態になりますが、この商品をどのように扱ったらいいのでしょうか?
この場合は、自分の物を保管するのと同程度の注意を払って保管すればよいと解されてます。
商品の保管とその後の取り扱い
特定商取引に関する法律59条では、
商品が届いた時から14日、または送りつけられた側が、その商品の引き取りを要求した時から7日を経過するまでに引き取りに来ない場合は、送り主側はもはや商品の返還請求をする事ができないとして、消費者を保護しています。
これらの期間を過ぎた後は、送りつけられた側はその商品を自由に処分する事ができます。
しかし
この期間経過前に、商品を使用したりすると、購入する意思があるとみなされて代金支払義務が生じてしまう事もありますので、注意して下さい。
クレジットカードの問題
クレジットの分割払いで購入した商品が来ない
ある欲しかった商品をクレジットカードの分割払いで購入したのですが、その商品が送られてきません。
しかし、クレジット会社からの代金の引き落としはされています。私は支払い続けなければならないのでしょうか?
Ans
クレジットで購入した商品が送られてこない、権利が実現しない、また役務が提供されない時は、これらをうける事が出来るまでクレジット会社に対し、支払いを停止する事が出来ます。
又、商品に欠陥があった時、契約が詐欺によるものである時も同様です。
クレジット契約の仕組み
この商品が欲しいけど今ちょっと持ち合わせがないから、クレジットカードでその商品を購入する事が出来る。
便利なシステムですよね。では、このシステムはどのようになっているのでしょうか?
購入者は、商品等についてクレジット会社の加盟店(販売業者)との間で「売買契約」をします。そして同時に購入者は、クレジット会社との間で「立替払契約」をします。
つまり、クレジット会社が、購入者の支払うべき代金を加盟店(販売業者)に立替え払いをし、購入者は、この立替払金と手数料を分割して弁済するという契約です。
非常にに簡単に申しますと、クレジット会社からお金を融通してもらい、そのお金で商品を買い、分割弁済するという事でしょうか
抗弁の接続
先程の説明の中で、2つの契約「販売業者と私の売買契約」、「クレジット会社と私の立替払契約」がありました。
これらの契約は、別個の契約です。
もしそうであるなら、販売業者に対する商品等が送られてこないとか、商品に欠陥があるからという言い分(抗弁)で、商品が来るまで代金は支払わないとか、完全な商品が来るまで代金は支払わない等といった事を、「売買契約」の当事者である販売業者に主張できたとしても、「売買契約」の当事者ではないクレジット会社には主張できないという事になってしまいます。
しかし、これではあまりに不公平です。
そこで、昭和59年の割賦販売法の改正により、クレジット会社と加盟店の販売業者の経済的一体性を考え、販売業者に対する抗弁(言い分)は、クレジット会社に対しても主張する事が出来るようになりました。(抗弁の接続といいます)
したがって、クレジット契約をした際に商品が送られてこない等の場合には、分割金の支払いを拒む事が出来るのです。
但し、抗弁の接続が認められるのは、割賦販売法の適用が認められる時だけです。割賦販売法上の商品・指定権利・役務を購入した場合でなくてはなりません。
その他に、支払総額が4万円以上である事が要求されます。
(ローン提携販売にも認められません)
支払い停止の方法
この様な状況になってしまった場合に支払いを拒絶したいわけですが、具体的には、その抗弁事由が判明した段階で直ちにクレジット会社に対し、商品名、販売業者名、抗弁事由、などを明らかにして支払いを拒絶する旨の内容証明による通知を出します。
これと同時に、支払方法が銀行などの自動引き落としであるならば、そのまま引き落としが続いていく可能性があるますので購入者の方で引き落としを中止するよう申し入れておく事も必要です。
こうして支払い拒絶をしたとしても、それ以前に支払われた金員の返還まで請求する事が出来るわけではありませんので注意して下さい。
もちろん、支払い拒絶後に引き落とされたものについてはクレジット会社に返還請求する事が出来ます。
(割賦販売法30条の4)
クレジットカードの現金化
街を歩いていると、「クレジットカードのショッピング枠で即日融資」などという広告を見かけます。どういった仕組みなのでしょうか?
Ans
これは「クレジットカードの現金化」と言われているものです。これは、クレジット会社の会員規約に違反していることになり、更に極めて高い金利でお金を借りる事になりますので、利用すべきではないと思われます。
クレジットカードの現金化
クレジットカードのショッピング枠を利用して現金を融通する事を「クレジットカードの現金化」「ショッピング枠の現金化」などと言われています。
これには2種類あります。
- 買取屋方式
クレジットカードで商品を購入し、その商品を買取屋に売り、その代金を受領するというものです。
例えば、クレジットカードで50万円のバックを購入し、それを業者に30万円で売るという方法です。
- キャッシュバック方式
その業者からクレジットカードでキャッシュバック付き商品を購入し、キャッシュバックを受けるというものです。
例えば、クレジットカードで50万円の時計を購入し、同時に業者から30万円のキャッシュバックを受けるという方法です。
どちらの場合も、購入した者は、クレジット会社に対し50万円の債務を負担する事に何らかわりはありません。
カード会社の会員規約
クレジットカードの利用について、各クレジット会社は会員規約を定めています。その規約の中では、「換金目的によるクレジットカードの利用を禁止する」といった条項があるのが通常です。
そうであるなら、先程のクレジットカードの現金化は「換金目的によるクレジットカードの利用」に他ならず、会員規約違反であることは明白です。
会員規約違反であるなら、カード会社はカード利用者との間でクレジット利用契約を解消する事もあり得ます。そうなれば、債務を一括弁済しなけらばならなくなる事になりかねません。
支払困難になるリスク
先程のどちらのケースでも、50万円の債務負担をして、30万円しか手元に残りません。もし、仮に1カ月でクレジットの決済をしたとすると、1か月で20万円の利息を支払ったのと同じ事になります。
つまり、極めて高利な借入をしたという事と同じ事になり、支払困難に陥る事は明白です。
対策として
支払困難に陥らないための対策としては、「クレジットカードの現金化」に手を出してはいけないという事です。
もし、手を出してしまった場合には、大体かなりの高利率になっている思われますので、不法行為、不当利得返還請求が可能だと考えられます。
(民90条、708条、709条)
(利息制限法1条)
(出資法5条)
倒産したデパートの商品券
あるデパートの商品券が家にあったのですが、そのデパートが破産してしまいました。この商品券は使えなくなってしまうのでしょうか?
Ans
デパートが破産してしまったので、従来通りに商品券は使えません。しかし、一定の場合に消費者を保護しており、商品券の購入額の一部が戻ってくる事があります。
商品券についての法律
商品券については昭和7年に制定された「商品券取締法」が規制していました。そして、時代の流れに対応しきれなくなり大改正が行われ「前払い式証票の規制等に関する法律」が平成2年10月から施行されました。
この法律において「前払い式証票」についての定義を要約してみますと
- 金額等が記載(または電磁的記録)されている証票等で、この金額に応ずる対価を得て発行されるもの。商品の購入等をするときに、その代価の弁済のために交付等をする事により使用できるもの
具体的には、商品券、ギフトカード、テレホンカード等
- 上記と同様の証票ですが、金額ではなく、物品の数量が記載(または電磁的記録)されているもの
一般的にいう、ビール券、たばこ券等
と言えるかと思われます。
前払い式証票(いわゆる商品券)のしくみ
商品券等の仕組みはいたって簡単です。
前もって一定の金額を前払いしておいて、後にこれら証票を交付または提示して物品を購入したり、役務の提供を受け、予め前払いしておいたお金でこれらの代価を弁済するというものです。
したがって、発行主体(デパート)が破産すればその行使はできなくなりますので、あとは破産債権者として届け出て、破産手続きの中で配当を受けるという事になってしまいます。
しかし、これでは消費者に酷であるという事で、消費者保護の制度を用意しています。
消費者保護の制度
この法律では、基準日の商品券の未使用残高が1000万円以上の場合にはその残高の2分の1以上につき発行保証金として供託等をしなければならないとしています。
そして、財務局長等が商品券等の利用が出来なくなったと認めた場合に、この供託金を原資として還付をする事になっています。
還付は商品券等の所定の様式の届け出と、商品券等を管轄の財務局に提出する事により受けられます。
(誤解をまねく恐れがあるかもしれませんが)もう少し噛み砕いて申しますと
使われていない商品券が1000万円以上あるなら、その残額の半分を発行者側が発行保証金として供託等をしなければならなず、何かあった(破産した)場合には、これを原資にして還付するという事です。
還付される額は 供託金額÷総届出金額 で算出され、そこから手続き費用を差し引いた額となります。
「前払い式証票の規制等に関する法律」においても、情報技術の進展に対応しきれなくなり平成22年に廃止され、かわりに「資金決済に関する法律」が同年制定され施行されました。この法律においても「未使用発行残高の2分の1以上の保全義務」は維持されていますが、実際に手元に残る還付される金額はそれほど期待しない方が宜しいかと思われます。
(資金決済に関する法律14条)
クレジットカードで名義を冒用(無断で勝手に使う)された時はどうなるのですか?
友人が、勝手に私名義のクレジットカードを使ってしまいました。
私に支払いの責任があるのでしょうか?
Ans
友人が勝手に貴方のクレジットカードを使った時は、原則として支払い責任はありません。
しかし、「絶対支払いについては迷惑をかけないから」と頼まれて、これを承諾した場合は、(判例によりますと)支払い責任があるかと思われます。
2つの契約の有効性
「クレジットカードで買い物をする」という行為は1度に2つの契約をしている事になります。
- 商品の売買契約(販売店との契約)
- 商品代金の立て替え払い契約(クレジット会社との契約)
この場合、契約が有効に成立しているかどうかを考えなければなりません。
契約が有効に成立するためには
- 内心、本当に契約をする意思があり
- その意思を相手に表示する
という要件が必要です。
「勝手に使われた」場合にはこの様な内心の意思も有りませんし、表示もしていませんので契約は有効に成立していません。
頼まれて名義を貸した場合
この場合はどうでしょう
少なくとも2の意思表示はあった事になりますが、1についての内心に契約する意思があったのでしょうか?
「いやいやぁ、だって承諾したんだから自分が買主になる事がわかってたでしょう?」
こう考えると契約は有効に成立した事になります。
民法93条によれば
その意思が内心になくても、表示した場合には、その意思表示の効力を妨げられない。とあり但し書きで、相手方がその意思が内心になかった事を知っていた場合にはその意思表示は無効とする。(心裡留保(しんりりゅうほ))
とあります。
これを今回の場面に当てはめてみますと
相手方(販売店、クレジットカード会社)が、その意思(あなたの意思)が内心にない事を知っていた場合には、それを理由として契約の無効を主張できる
という事になります。
しかし現実問題、相手方があなたの内心の意思を知るわけがないのが普通かと思われます。
いずれにしても、名義を貸した人は支払い責任を負うと考えておいた方が良く、もし名義を貸した場合はその点を十分考慮してください。
クレジットカード会社に住所変更届け出の失念
2年前に引っ越しをしたのですが、クレジットカード会社に住所変更届を失念してしまいました。カードの更新時期がきて古い住所に郵送されてしまいました。その後、誰かが新しいカードを利用して請求が私に来てしまったのですが、私はこの代金を支払わなければならないのでしょうか?
Ans
カードの現実の交付がなかったので、カード利用による支払い責任はありません。
カード会員規約には
会員以外の者がカードを利用した時も、原則として、会員が利用代金について責任を負わなければならないと定められています。
(責任条項)
このような条項を正当化する根拠は?
カードの所有権はカード会社にあるとされ、会員は貸与されているにすぎないので大切なカードを注意して保管する義務があるという所を根拠としているようです。
しかし、カードは会員に到着していないのですからこの様な保管義務は観念しえず、この条項も適用の余地がないという事になります。
もう1つの会員規約「変更届け出条項」についても論点がありますが、結局のところ、このカード会員加入契約が効用を発揮するためには、カードの現実の交付が最低限必要です。
この様に現実の交付がなされていないのですから支払い義務は生じません。
この様なトラブルを回避するためにも住所変更届は忘れずにしましょう!
金銭貸借等の問題
年金を差し押さえる事が出来るのでしょうか
現在私は厚生年金をもらって生活しています。実は、サラ金に相当の借金があり、返済が滞っている状態です。
年金は銀行の預金口座に振り込まれていますが、サラ金からついにその口座を差し押さえられてしまいました。このままでは生活していく事が出来ません。
どうしたらいいのでしょうか?
Ans
年金は法律によって差押えが禁止されています。それは銀行預金口座に振り込まれた時にも及ぶと考えられていますので、その差押えは取り消す事が出来ます。
預金の差押えと充当
判決などに基づき、債権者から債務者の預金債権(債務者が銀行に対する「預金返還請求権」)に対する強制執行(差押え)が申し立てられると、裁判所は債権の差押え命令を出し、これが銀行に送達されると銀行は預金者に対し、預金の払い戻しを禁止します。
債権者は債務者の銀行に対する預金債権を取り立てて債務の弁済に充当します。
差押え禁止債権
債権者は、債務者の債権を何でも差し押さえる事が出来るわけではありません。
民事執行法153条によると、給料、賃金については原則として、その4分の3に相当する部分については差し押さえる事が出来ないとあります。
その他にも、厚生年金保険法41条によると、同法に基づく年金については、全額につき差押えが禁止されていますし、国民年金法24条、国家公務員共済組合法49条など多数あります。
これらは債務者の生活保障という社会的政策的見地から定められた規定なのです。
預金口座に振り込まれた年金
では今回の場合のように、年金が銀行預金口座に振り込まれたような場合はどう考えればいいのでしょうか?
年金として銀行口座に振り込まれたとしても、銀行に振り込まれれば、もはやそれは、預金者の銀行に対する「預金返還請求権」という債権にすぎないので、年金そのものではないから差押えは可能であると考える事も出来ます。
しかし、一方で実質的には振り込まれる前も振り込まれた後もそのお金は債務者の生活の為にあるのであって、社会政策的見地から保護すべきあるとの要請に変わりはないとも言えます。
それに加えて、年金受給者の殆どが金融機関の預金口座を利用して受給しているという現状を考えれば、銀行に振り込まれたら年金ではなくなるので差押えが可能だとするのでは、厚生年金保険法などが年金を差押え禁止とした趣旨が全うされないという事にもなりかねません。
判例は、従前は見解が分かれていましたが、年金が銀行預金口座に振り込まれた場合には、その年金相当部分については差押えが禁止されるとしています。
このような事から、今回の場合も年金部分の差押えは禁止され、その部分の差押えは取り消せると考えられます。
(厚生年金保険法41条)
サラ金から差し押さえをするとの通告を受けました
私は、サラ金からお金を借りており、かなりの額になってしまいました。
先日、サラ金から、差し押さえをするとの通告を受けたのですが、差し押さえられる物が家財道具や服などでしたら、これからの生活に困ってしまいます。
どの程度の物を差し押さえられてしまうのでしょうか?又、自己破産の申立ても考えているのですが、この場合についても家財道具はどのような扱いになるのでしょうか?
Ans
家財道具の中には差し押さえが出来ないものもありますので、生活にはさほど支障をきたすとは思われません。
差押え
差押えとは、債務者が占有している動産を執行官の占有へ移す事です。
債務者が差押えられてしまうには、先ず、判決などに基づいて、債権者から動産に対する強制執行が申し立てられると、裁判所から執行官が、債務者が占有する動産に対し、差押えの手続きを行います。執行官はこれを換価して債権者に配当します。
差押え禁止の財産
差し押さえられるのは債務者の占有する動産ですが、全ての動産が対象というわけではありません。
日本国憲法25条では
「国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障しています。
これをうけて民事執行法131条では、債務者の占有する動産の中で差押えが禁止されている物を列挙しています。
差押えを禁止されている財産の中に、「債務者等の生活に欠く事が出来ない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具」といったものがあります。
ここでいう「生活に欠く事が出来ない」とはどのように考えればいいのでしょうか?
一般的には、現在の一般人の生活水準を考慮したうえで、具体的事情に応じて債務者の生活状況を加味して判断すべきだと言われています。つまり、時代や個々人の生活のあり方で変わってしまうという事になります。
実際には、洗濯機、冷蔵庫、テレビ、ラジオ、電子レンジ、ビデオデッキ、掃除機、冷房器具などの電化製品(ただし一つに限る)や、タンス、調理器具、食器棚、食卓セット、ベッドなどが差押禁止財産として扱われています。
破産をした場合
破産をした場合も、破産管財人という人が、破産者の動産に対し、封印執行という差押えと同様の手続きをとります。
この場合にも、破産法にも、民事執行法の差押禁止財産についての同様の規定(すべて同じというわけではありません)がありますので、日常生活を送る事が出来なくなるという事はないと考えていいでしょう。
(民事執行法131条)
(破産法34条)
自己破産とは?
私の会社の同僚が、投資に失敗して、多額の借財を抱えてしまいました。普通に生活するにも困っているようで、カードローンや、サラ金からお金を借りたりして凌いでいたのですが、結局弁済する見通しが立たなくなったようです。どの様なアドバイスをしてあげればいいのでしょうか?
Ans
まず第一に、親類などから低利でお金を借り、高金利の借金を整理するよう弁済計画を立てる事です。しかし、それが無理だという事であれば、裁判所に対して自己破産の申し立てをするべきだと考えます。
自己破産とは
自己破産とは、支払うべき債務があるのに、返済する資金を用意する事が全く立たない場合に、債務者が自ら裁判所に申し立てて、裁判所から破産手続き開始の決定をしてもらう手続きの事です。
破産をすると、裁判所が破産管財人という人を選任します。選任された破産管財人は、破産者の財産を処分して換金し、これを公平に債権者に分配します。(これを配当と言います)
換金する財産が初めからない場合には、「同時廃止」という破産手続き開始の決定と同時に破産手続きを終了させる決定をします。
破産することのメリット
破産する場合のメリットを以下に記します。
- 破産手続き開始の決定後は、債権者の個別的な権利行使が出来なくなります。
→ これらの対応の煩雑さを免れる - 破産手続きの終了後、「免責許可」という決定をもらう事により、債務がすべてなくなる
→ 今まであった債務がなくなり、再出発をする事が出来る
破産によるデメリット
破産によるデメリットは
- 経済的信用の失墜
→ 支払い不能に陥った以上現実的には経済的信用は既になくなっている事が多いので、破産手続き開始の決定をうけようと、うけまいと大差ないかもしれません - 取締役、弁護士、公認会計士などになる資格がなくなる。
→ 免責許可の決定を受ければ資格は回復します。 - 裁判所に対する説明義務を果たさなければならない。
→破産手続きが終わればなくなります。 - 郵便が破産管財人に配達されて開封されますので、プライバシーに関して制約をうける。
→ 破産手続きが終わればなくなります。
破産申し立て手続き
破産申し立てに際しては、支払不能である事を裁判所に認めてもらう必要がありますので
- 負債が、誰に対しいくらあるのか?
- 現在の財産状況
- どのような経緯で支払不能の状態に陥ったのか
これらを資料と共に整理しなければなりません。
破産申し立てを行うと、裁判所が申立人に対し「審尋」という事情を聴く手続きを経て、1カ月程度で破産手続き開始の決定がなされます。
免責許可の申し立てについては、債務者が破産手続き開始の申立てをした場合には、原則として、免責許可の申立てもあったとみなされます。
たまに誤解されている方がいるのですが、破産をすると選挙権がなくなったり、戸籍に記載されるといった事はありません。
(破産法15条、38条、216条、248条)
金銭消費貸借契約を締結する際の費用
貸金業者との間で金銭消費貸借契約を締結する際、締結費用として2万円とられました。これは借主が負担しなければならないのでしょうか?又、弁済をする際にかかる送金料も私が負担しなければならないのでしょうか?
Ans
契約締結費用とは、契約を締結する際に必要とされる費用であり、民法によりますと、それは契約当事者双方折半という事とされています。
契約締結費用
契約は当事者双方のために締結するものですので、その費用を折半して負担するという事が公平であるとの考えに基づきます。
一般的に、契約を締結する際に必要とされる費用とは次のようなものをいいます。
- 契約書作成費用 行政書士、司法書士、弁護士に依頼した場合にかかる手数料
- 公正証書作成手数料
- 契約書に添付する印紙代
等です。
しかし、この規定は当事者の合意で変更する事が出来ます。
今回の場合でも、実際に2万円の費用がかかったのでしたら、合意により借主が負担する事になったものと考える事が出来ます。
また、実際に2万円の費用がかかっていなかった場合はどうなるのでしょうか?
利息制限法3条によりますと
金銭消費貸借に関し、債権者の受ける元本以外の金銭は、礼金、割引金、手数料、調査料その他いかなる名義をもってするかを問わず、利息とみなす
とされています。
つまり、利息以外の名目で金銭を債務者に支払わせる事によって、同法の規制を不当に免れようとする事を防止するための規定です。
そうなると、実際に契約締結する際に2万円もの費用がかかっていなければ、利息とみなされ、利息の天引きが行われたものとみなして扱われる事になります。
弁済の費用
契約に基づき、債務を履行する際にも費用がかかる事があります。
これを「弁済の費用」といいます。
代金や商品の送料などがその典型的なものです。民法では、こうした弁済の費用は債務者の負担とする事にしています。
今回の送金量については、弁済の費用に当たりますので、借主の負担という事になります。
補足ですが、弁済の費用には弁済させるための費用、例えば、催告の通知費用、強制執行、競売の費用なども含まれますので注意して下さい。
(民485条、588条、589条)
(利息制限法3条)
支払督促が来ました
カードで買い物をした後、カード利用代金を全額弁済しました。
にもかかわらず、「支払督促」という書類が裁判所の書記官から送られてきました。内容としては「カード利用代金を支払え」というものです。私は弁済済みですので放っておいたら、再び裁判所の書記官から「仮執行宣言付支払督促」という書類が送られてきました。
このまま放置しておいても大丈夫でしょうか?
Ans
カード利用代金を支払ったのであれば、「支払督促」の送付を受けた日から2週間以内に、「督促異議の申し立て」をしておくべきでした。また、「仮執行宣言付督促」の送達を受けた日から2週間以内に「督促異議の申し立て」をし、さらに執行停止の手続きをとる必要があります。
債権者の支払督促
債務者が貸金の返済など任意に債務の履行をしない時は、債権者が債権を回収するするには、通常、裁判所へ訴えを起こし、審理を得て判決をもらい、強制執行をするという手続きをしなければなりません。
しかし、これには時間と手間がかかりますので、金銭等の支払いの請求等の場合には「支払督促」という手段を使う事ができます。
手続きとしては、簡易裁判所の裁判所書記官に支払督促の申し立てをし、内容に理由があれと認められれば、裁判所書記官から支払督促を得る事ができます。
債務者の督促異議の申立てと債権者の仮執行宣言付支払督促
これに対し、債務者には督促異議の申立権が認められています。
債務者は、支払督促の送達を受けた時から2週間以内に督促異議の申し立てをする事ができ、申し立てた督促異議の部分について、通常の訴訟手続きに移行する事になり、債務者の言い分も聞いてもらう事ができます。
債務者が、支払督促異議を申し立てないで放っておき、2週間が経過すると、債権者は、「仮執行宣言」の申し立てを行います(これをしないで30日経つと前の支払督促は失効します)。この申し立てがあると裁判所書記官は「仮執行宣言付支払督促」という書類を債務者に送付します。
「仮執行付支払督促」は「仮」ではりますが、強制執行ができますので、不動産、給料、預金などを差し押さえられるおそれがあります。
債務者の督促異議の申立と執行停止の申立て
「支払督促」の場合と同様、債務者は「督促異議の申し立て」を2週間以内にしなければなりません。この時、申し立てをしただけでは、仮ですが強制執行を免れる事は出来ません(つまり、差し押さえられる!)ので、「執行停止の申し立て」の手続きを裁判所に対して行い、「執行停止決定」をもらわなければならないのです。また、この決定をもらうには多くの場合保証金を預けておく必要があります。
この様に「支払督促」を放置してしまうと、非常に複雑で時間と手間がかかり費用もかかってしまい、あまりいい事がありません。
督促異議の申立は早く行っておいた方がいいと思われます。又、詳しく理解されたい場合は弁護士さんにご相談下さい。
(民事訴訟法382条~396条)
人にお金を貸す場合に気を付けるべき事は?
友人に100万円を貸してくれと頼まれました。これを貸す場合にはどの様な事に注意すればいいのでしょうか?
Ans
通常は私が貸した事と友達が返す事を約束した証拠を残しておく事が大事です。
一般的にお金を貸す際の注意点を挙げてみます
- 相手の返済能力をみる
(資産があるのか、収入はどうなのか) - 相手の人柄を見る
(返すよう努力する誠実な人であるか) - 返済時期、返済方法、利息をお互い確認する
(返済プラン、利息の割合、利息の支払い方法を確認する) - 借用書を作成する
(3を文章にして残す、借用書の作成日時) - 担保を取る
(不動産なら抵当権、資力のある人を保証人にする)
出来るならお金を貸すというリスクは避けたいものですが・・・。
手形は借用証の代わりにできるのでしょうか?
ある方にお金を貸す時は手形を借用証代わりに取っておくとよいと言われたのですが、どういう事ですか?
Ans
お金を貸す際に借用証だけよりも手形の交付を受けた場合の方が
- 確実に回収できる可能性が高い
- 裏書人にも支払いを請求できる場合がある
- 手形割引によって換金が出来る場合がある
- 簡易迅速な手形訴訟を利用できる
というメリットがあります。
手形を振り出すには
銀行と当座勘定取引契約を結び、当座預金口座を開設して銀行から手形用紙の交付を受けます。
そして、この手形用紙に必要事項を記入し、署名捺印して、手形を振り出します。
手形の交付を受けた場合のメリット
- 借主(手形を振り出した人)は銀行と取引をしているので、手形を不渡りにすると信用は著しく失墜し、6ヵ月以内に2度不渡りにすると銀行取引を停止されてしまい、営業を継続する事が極めて困難になる事態になるので、その事を回避するよう努力する事が期待できます。
- 手形に裏書人がいる場合は振出人から支払いを受けられなかった時は、裏書人にも手形の支払いを請求できる事になってます。
- 交付を受けた手形を満期前に銀行へ裏書譲渡して手形割引を受けられる事も有りますので、返済期限前に資金の回収が出来る事になります。
- 手形が不渡りになって返済を受けられない場合、振出人(裏書人)に対して『手形訴訟』を起こす事が出来ます。
手形訴訟は通常の訴訟手続きよりも簡単で迅速に判決をもらえます。
(手形法15条1項、77条1項1号)
公正証書を作成したい
今回、知人にお金を借りたいと思い相談したところ、公正証書にしましょう。と言われました。公正証書とはどんな機能があるのでしょうか?
Ans
公正証書とは公証人が、法律行為などに関する事実について作成した証書です。貴方の場合、金銭消費貸借契約書を作成ししてもらうわけですが、基本的には私文書の契約書と同一の性格ですが、私文書の契約書よりは貸主に有利なものになります。
なぜ契約書を作成するのでしょう?
なんといっても、後に紛争になった場合の証拠になるからです。当事者のいずれかが「そんな契約した覚えがない」といって裁判になった際には、契約があったことの証明になります。
金銭消費貸借契約でいえば
返す額、いつ返すのか、どの様に(一括か分割か)、利息はどれくらいか、等について貸主、借主が合意した内容を記載します。
公正証書の利点
では公正証書にするとどのようなメリットがあるのでしょうか?
- 証明力が高い
裁判で「そんな契約書はつくった覚えがない」と言われれば、契約書が真正である事を証明するのは、契約の成立を主張する側です。
公正証書ですと契約書は真正に作成されたものと推定を受ける事になり、証明は不要になります。 - 紛失、改ざんの恐れがない
契約書の原本が公証役場に保管されます(当事者はその写しを交付してもらえます)。万一写し(正本、謄本といいます)を紛失しても、公証役場に行って原本の写しを発行してもらえます。 - 強制執行受諾文言
相手が契約を守らない場合、裁判をして判決をもらい強制執行をするという事になりますが、公正証書にすると、金銭の支払いに関する契約ですと「不履行の時は直ちに強制執行に服する」(強制執行受諾文言)という一文を入れる事により、判決がなくても強制執行ができる事になってます。
公正証書の作成には多少の費用がかかります。予め公証役場に問い合わせておくといいかと思います。
口約束でお金を貸した
私は友人にお金を貸しましたが、懇意でしたので借用書も何も作りませんでした。今からでも借用書を作った方がいいでしょうか?
Ans
もし裁判になった場合、お金を貸した事を貴方が立証しなければなりません。金銭貸借に立ち会ったなどの証人、又は証拠がないと「間違いなく」返してもらうというのは困難かと思われます。
お金を借りたら返さなくてはならない事は借用書がなくても当然です。しかし、「借りた覚えはない」と嘘をつく事がないわけではありません。その様な場合には裁判にならざるおえません。
裁判になったら貸主が立証しなければならない事は
①お金を渡した事
②それを返す約束をした事(借りた事)
です。
この立証がうまくいかないと、裁判所は貸主の敗訴判決を出す事になります。こうならない為にも借用書又は契約書を作る事が大事です。
内容をどうするか
では、お金を貸した場合の借用書、契約書に何を記載すればいいのかといいますと
- 当事者(貸主、借主)の住所・氏名
- いつ・いくら貸したか
- 弁済期日はいつか
- 利息はどうするか、取るとすればその利率、返済方法
以上の事を記載し、相手方の署名(自書が望ましい)、捺印(実印が望ましい)をもらう事が大切です。
借用書・契約書を作らなかった場合
この様な場合は、
後で借主に申し入れて作ってもらう
(親しき仲にも礼儀あり)
貸金の一部の弁済を受けた時に、借主に領収書を発行してもらい、「但し、○月○日金××円の金銭消費貸借返還金の内金として」と書いてもらうの1つの方法です。
金銭消費貸借が存在した事を相手に書いてもらう事が大事なのです。
お金を貸していた知人が死亡した
知人にお金を貸していたのですが、先日亡くなってしまいました。まだ残金があります。知人には相続人がいるのですがその方からか残金を返してもらえるのでしょうか?
Ans
原則として、相続人は被相続人(死亡した知人)の債務も承継しますので相続人に対し返還請求する事ができます。
人が死亡すると、相続人は被相続人の財産上の一切の権利義務を承継するとされています。この権利義務の中にはプラスの財産、マイナスの財産があります。
相続人が1人の場合はその方に請求すればいいのですが、複数いる場合は各相続人の相続分に応じた額を請求できるものと解されています。
相続放棄
プラスの財産が多い場合はこれいいのですが、マイナスの財産の方が多い場合ですと、相続人は相続放棄の手続きをとる事があります。
こうなると、相続人は初めから相続人でなかったとみなされますのでその人に対して貸したお金の残金を請求する事はできません。
こうなった場合、貸主は家庭裁判所に相続財産管理人を選んでもらい、その人からプラスの財産の限度内で貸金を返還してもらえますが、全額戻ってくるとは限りません。
印鑑を無断で使用されてしまった
妻が勝手に私の実印を使って借金を作ってしまいました。私はこれを返済しなくてはならないのでしょうか?又、妻以外の場合はどうなのでしょうか?
Ans
どちらの場合も原則として貴方に責任はありません。
しかし、妻が日常の家事に関する取引をして債務を負ったり、表見代理が成立してしまうと責任を負わなければなりません。
原則として、借金は自ら借りて返す事を「約束」したから返済義務があるわけです。ですので、妻、あるいは他の人が勝手に借りたものについて返す義務はありません。
実印があるからといって当然に「返す約束をした」とは言えません。
実印が盗まれたり、勝手に使用されてしまう事を考えればわかりますよね。
以上が原則論です。
日常家事債務
例外があります。
夫婦が婚姻生活をしていく上で、日常の家事に関して負担する債務の事を「日常家事債務」といいます。
日常家事債務に関しては夫婦の一方がした行為について他方も連帯責任を負うこととされています。
つまり、妻のした行為が生活するためになされた等、日常の家事に関する事である場合は、夫もその行為について責任を負います。(妻が日常家事に関する事で借金をすれば、夫も返済義務が生じます)
表見代理
判例によると
相手方(妻と取引をした方)が、《その取引が日常の家事に関するものでなかったとしても》、そう信じるにつき正当な理由がある場合は、夫婦に連帯責任があると解しています。
妻または第三者を問わず、その人に(が)、
- 別の件で何らかの代理権を与えている
- 借財について以前に代理権を与えていた
- 借財についてあたかも代理権を与えたかの表示をした
といった場合で、相手方が借財の代理権を持っていると過失なく信じて取引をした時は、(民法は)貴方に責任を負わせる事にしました。
これを表見代理といいます。
売買代金を借金に切り替える
小売店を営んでいます。仕入れに対する支払いが滞ってしまったのですが、仕入先が、「従前の買掛金をまとめて貸金債務にしませんか」と申し入れてきました。これに応じ、借用書を書いたのですが、以前の買掛金と今回の貸金債務とは、法律上どの様な関係になるのでしょうか?
Ans
従前の買掛金は消滅し、新たに貸金債務が発生する事になります。
簡単に申しますと
今までの債権債務関係がいろいろあり、法律関係を簡素化するためとか、返済期日を猶予するといった理由で、1つの貸金債務にまとめるという事です。
このように、金銭その他の代替物を給付する義務を負う者(例えば貴方)が、相手方に対し、消費貸借の目的とすることを約する契約の事を「準消費貸借契約」といいます。
準消費貸借
準消費貸借契約は以前の債務をなくし、新たな債務が残る事になります。この新しい債務については(金銭)消費貸借と同じ効果が生じます。
法律的には別個のものと捉えられていますが、実質的には同一のものとも見る事ができますので、お互いに影響を与え合う場合があります。
- 従来の債務が成立していなかったり、無効であった(賭博の債務)場合には、新しい債務もこれに影響を受けて効力がなくなります。
例えば、買掛金(100万円)が実はもっと少なかった(50万円)として、新しく準消費貸借にしようとしたならば、それは50万円の金銭消費貸借になります。 - 新たな債務に無効となる原因があった(代理権限のないものが契約をした)場合には、新たな債務は効力が生じず、従前の債務が存続します。
- 従前の債務についての担保や保証人は、別個な債務であることを強調すれば、従前の債務が消滅するので担保や保証人も消滅すると考えられますが、判例は、両債務が実質的に同一である事を重視してこれらは存続するとしています。注意しましょう!
- 消滅時効期間については、買掛債務は2年間、商人間の貸金債務は5年間(商人でなければ20年)となっていますが、どちらを基準とすればいいのかについて
判例は、新たな債務を基準としています。
ですので、今回の場合は時効期間が5年に延びるという事になります。
(民167条、513条、514条、517条、518条、588条)
保証と担保の問題
仮登記担保とは
私は事業を拡大しようと思い、金融業者から2000万円を借り入れました。その際、返済できなかった場合は、私の自宅とその敷地(約4000万円相当)を代物弁済するという予約をして,仮登記しました。
しかし、資金繰りがうまくいかず、期限にこのお金を返せなかったのですが、私はこの土地建物を今すぐに取られてしまうのでしょうか?
Ans
金融業者に対する債務(利息や遅延損害金を含む)と、あなたの土地建物の時価との差額の支払いを受けない限り、あなたの土地建物を取り上げられる事はありません。
仮登記担保
不動産を金銭債権の担保とする制度としては、抵当権や不動産質が法律によって定められています。
しかし、実行の際に競売申し立てという手続きを取るのが煩わしいといった理由で敬遠されがちです。
そのような煩わしさを解消するのが仮登記担保です。
仮登記担保とは、貸金などの金銭債務を担保するため、その不履行(期限までに弁済をしない事)がある時は、不動産などの登記・登録が出来るもので、その所有権を移転する旨の「代物弁済の予約」あるいは「停止条件付き代物弁済契約」といった契約を仮登記担保契約といいます。
今回の場合がまさにこれにあたります。通常は不動産についてなされ、その不動産につき仮登記がなされます。
仮登記担保契約は、競売申し立てをする必要がなく、実際の債務の額より価値の高い目的物を丸取り出来るうまみがあるなどの理由からよく利用されてきました。
しかし、今回の問題からもわかりますように2000万円を借り入れのために、4000万円相当の土地建物を丸取りされるというのは明らかに不当です。
そこで、「仮登記担保契約に関する法律」(以下、仮登記担保法)はこの様な不都合を回避する為の規定を加えています。
通知および所有権の移転時期
仮登記担保法によると、先ず第一に、債権者が仮登記担保権を実行しようとする(担保目的の不動産の所有権を債権者に移転させる)なら、債権者は、債権者が担保権設定者(通常はお金を借りた人)に支払うべき清算金(担保目的不動産の時価から債権額を減じたもの)があるときは、その見積額を担保権設定者に通知しなくてはならないことになっています。
そして、その通知が到着してから2カ月が経過しないと所有権移転の効力が生じない事になっています。
又、担保目的たる不動産の価額が、債権額より低い場合は、清算金がない旨の通知を債権者はしなければならず、この通知の到着後2カ月を経過して初めて所有権移転の効果が生ずるのです。
そして債権者は、前記2カ月経過時点(清算期間といいます)で清算金を支払わなければなりません。この清算金の支払いと目的物の引き渡し及び所有権移転登記手続きとは同時履行の関係にあるされていますので、清算金の支払いの提供があるまで、担保権設定者(通常は債務者)は引き渡し及び所有権移転登記手続きをなす事を拒む事が出来ます。
また、担保権設定者は、債権者が通知してきた清算金見積額に一方的に拘束されるわけではありません。もし、不当に安い清算金の見積り
であれば、担保権設定者はこれを争う事が出来ます。
受戻権
この他に、担保権設定者は、上記の清算金の弁済を受けるまでは、債権額(利息または遅延損害金を含む)を債権者に提供して、担保の目的である不動産などの所有権を取り戻す事が出来ます。
これを、受戻権といいます。
受戻権を行使できるのは、清算金の弁済を受けるまでですが、さらに清算期間経過後5年以内で、且つ、今だ第三者に目的の所有権が移転していない場合に限ります。
(仮登記担保に関する法律 1条、2条、3条、11条)
抵当権が設定されている不動産が売却されてしまいました
私は友人にお金を貸し、担保として友人の土地建物に抵当権を設定し、登記しました。
ところが最近、この友人は事業に失敗したらしく借財を返す為にこの土地建物を第三者に売却してしまったそうなのです。
私が貸したお金は、まだ抵当権によって担保されているのでしょうか?
Ans
その土地建物が売却され、第三者名義に登記されていたとしても、あなたは、その土地建物につき抵当権設定の登記がしてありますので、まだ、債権は抵当権によって担保されています。
抵当権
抵当権とは、不動産を対象にした担保です。
債務者にその不動産の使用を認めながら、債務者が弁済しない時は、その不動産を競売して、その代価から優先的に弁済をうける権利です。
この権利の登記をすれば、登記後にその不動産の購入者等の第三者に対しても、その効力が及びます。この土地建物を購入した人は、こうした危険なものを買ってしまった事になるのです。
抵当権消滅請求
抵当権の付いた土地建物を購入した買主としては、せっかく大金を出して購入したのに、売主の事情で競売されてしまうなんて納得いかないのは当然です。では、競売を防ぐにはどうしたらいいのでしょう。
民法に、抵当権消滅請求という制度があります。
この制度によると、買主は、競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権者であるあなたに代価または特に指定した金額を弁済または供与する事によって、一方的に抵当権を消滅させるというものです。
この制度は、抵当権者に損害を与えない範囲で、買主がせっかく手に入れた土地建物を手放す危険をなくさせようという事を考慮した制度です。
例えば
その土地建物が合計で4000万円程度だとします。
買主は、4000万円を債権の順位に従って支払うので抵当権をとってくださいと抵当権者などに言えるのです。
提供金額に不満がある抵当権者
この例から、友人の債務額が4000万円以下ならば、貴方は労することなく債権の回収をする事が出来ますので、この提供金額を不満なく受け取る事でしょう。
しかし、友人の借金が5000万円であり、且つ、競売をすれば5000万円で売れる事が見込まれているとしたらどうでしょう。
提供金額である4000万円を受け取ったとしても、無担保の債権1000万円が残ってしまうので抵当権者としては不満が残ります。
こうした不満がある時は、抵当権者は抵当権消滅請求の申し出の送達の日から2カ月以内に競売を申し立てなければなりません。
これをしないで2カ月が経過すると買主の申し入れた代価または指定する金額を承諾した事になります。
こうする事により抵当権者は、買主の申し出た金額に拘束されることなく競売手続きにより弁済をうける事が出来ます。
商工ローン問題
よく「商工ローン」という言葉を耳にするのですが、これはどういったものなのでしょうか?
Ans
一部の悪質業者が事業者に対して貸し付けをする際に、違法又は違法すれすれの貸付、回収等を行っている問題を総称して「商工ローン問題」と言っています。
商工ローン
「商工ローン」に公式な定義があるわけではありませんが、一般的には「事業者向けに無担保で金融をする業者」のことをいいます。これらの業者は借り入れに際して連帯保証人を付けさせるのが一般的であるようです。
これらの業者が「出資取締法」「利息制限法」「貸金業法」等の規制を遵守して営業していれば問題ありませんが、一部の悪質業者は巧妙な勧誘を用いて、十分な説明をしないで包括根保証を取り付けたり、短期の手形を悪用したり、保証料名目による利息の制限を潜脱したり、過酷な取り立てをする等を行っています。
これが「商工ローン問題」と言われるもので、平成10年頃から問題にされるようになりました。
悪質な商工ローンの手口は、多岐にわたりますが、そのうちの代表的な手口について説明してみたいと思います。
包括根保証の悪用
悪質な業者は、出資取締法で規制されている上限に近い利息で貸し付けをします。こういった所で借り入れをしようと思う方は、残念ながら、財務体質が良いとはいえない事業者が多いのが実情です。
したがって、高利率では返済しきれなくなる可能性が高くなります。そこで重要なのが連帯保証人という事になります。悪質な業者は(お金を持っている)連帯保証人の方をターゲットにしているのです。
連帯保証と根保証
一般の連帯保証というのは特定債務を連帯保証するものなので、ある債務(1000万円借りた)に対して、連帯保証人はその債務を返済すれば、その責任は終わりです。
これに対して根保証というのは、借り入れをするについて継続して一定額の枠を保証するものです。
例えば、債務者Aが1000万円を借り入れる際に2000万円を限度でBが根保証をしたとします。
根保証の場合は、仮にAが1000万円を返済したとしても、保証人Bとしての責任は終わりません。再びAは1200万円を借り入れたとしたら、Bはそれについても保証しなくてはならないのです。
根保証の問題点として
- 根保証は一般の人にはあまりなじみが薄いので、この様な危険性が知られていない
- 保証人になろうとする人はこの危険性を十分に認識しないまま根保証契約に署名捺印してしまう事が多い
- 悪質業者はこの危険性を十分に説明しなかったり、又は危険性がないかのように誤信させて根保証契約をさせる
と言った事があるかと思われます。
「根」という一言が付くだけで大きなリスクを背負う事になります。
こうした契約自体の有効性については問題がありますが、しかし、契約書が作成されてしまうと、裁判をしてもそれを無効だとする事は、なかなか難しいというのが実情です。
利息制限法の潜脱行為
悪質な商工ローンは高利でお金を貸し付けるばかりでなく保証料名目で毎月数パーセントの金員を支払わせたり、事務費用などと称して金員を徴収したりする事があります。
利息制限法3条によると
「元本以外の金銭は、・・・・・・名義をもってするかを問わず利息とみなす」とされていますので、先程の事も全て利息として扱われる事になります。
その結果、判例によると、利息が利息制限法所定の制限を超えた時には、超過部分は元本に充当される(借りたお金を返した事になる)としています。
処罰
平成22年6月18日から、貸金業者が貸し付けの利息と合算して貸付金の年20パーセントを超える割合となる保証料の契約をした時、受領をした時、支払の要求をした時は5年以下の懲役もしくは1000万円の罰金に処し、またはこれを併科されます
各地の弁護士会への相談
悪徳業者の手口は多岐にわたります。
各地の弁護士会では、こうした悪質な商工ローンに対する対策弁護団を作っています。悪質な商工ローン業者の被害にあわれた方はこれら対策弁護団に相談されると宜しいかと思われます。
(利息制限法2条、3条)
(出資取締法5条、5条の2)
空リースと知らず連帯保証人になった
私の会社で今回、新しい機械を購入するらしく、リース会社とリース契約を締結しました。その際、私が連帯保証人になりました。私は知らなかったのですが、実際は社長が機械販売店と謀って、機械の引き渡しをしないこととしてリース契約を結んだという事です。
会社がリース料を支払わないので、私はリース会社からリース料と遅延損害金を請求されてしまいましたが、これを支払わなくてはならないのでしょうか?
Ans
いわゆる空リースに当たるものです。連帯保証人が空リースである事を知らなければ、錯誤として支払いの責任を免れると考えられます。
空リース
この問題の全体の仕組みはどうなっているのか説明してみたいと思います。
- 会社が十分な資金がないにもかかわらず、新しい機械を購入したいと思っている
- 代わりにリース会社に機械を購入してもらい、代金を機械販売店に支払います。(所有者はリース会社)
- 会社はリース会社から機械を借り受けて使用します。その際、機械は機械販売店から会社に引き渡されます。
- 会社とリース会社は代金、税金、保険料、金利等を合計してリース総額料として約定した年数にわたり分割して支払う、という賃借という形式をとります。
機械販売店とリース会社は売買契約
リース会社とあなたの会社は賃貸借契約
ということになります。
リース契約の法的な性質については法形式と実態が乖離しているため様々な説がありますが、この様な金融取引的な性質があるといっていいかと思われます。
リース会社が購入した機械は直接あなたの会社に引き渡され、あなたの会社はリース会社に借受証を発行します。
この場面では、機械の所有者(リース会社)は機械の引き渡しがあった事を現認するわけではありません。
ここに、悪事を働く者が入るすきがあるのです。
会社の社長と機械販売店が謀って「機械を引き渡した事にして」借受証を発行し、機械販売店はリース会社から代金を受領する。つまり、リース会社を騙して資金の融通を行ったのです。
この様に商品の引き渡しがないのに借受証を発行し、リース代金を受けとる事を「空リース」といいます。
空リースの場合、会社はリース会社に対し、機械を受け取っていない事を理由にリース料の支払いを拒むことはできない、とするのが判例の立場です。当然ですよね。
連帯保証人の責任
そうなると、その際の連帯保証人についてはどうでしょうか?
連帯保証人が空リースである事を知っていたなら責任がある事は問題ありませんが、知らなかった場合はどうなるのでしょうか?
知らなかったのですから、連帯保証契約に錯誤がなかったかどうかが問題になります。錯誤があれば、民法により連帯保証契約は無効となります。
最近の判例では
リース契約には、リース物件の引き渡しを主債務(リース代金の支払い義務)の発生原因とする事が書かれている。そして、この主債務の発生原因が「引き渡し」である事は連帯保証契約の内容にもなっている。
連帯保証人は「引き渡し」がない「空リース」により発生した債務を「引き渡し」がある事により発生した債務であると誤認したのであるから、契約内容の誤認があったという事になり、「錯誤」に当たる
とされています。
この見解に従えば、連帯保証契約は無効となり、責任を免れるという事になります。
勝手に保証人にされた場合の責任
私たち兄弟には父から相続した土地があります。
この度、兄がこの土地を売却するというので、実印と印鑑証明を渡した所、兄が勝手にこれらを使い、私を借金をした際の保証人にしてしまいました。私は保証人としての責任を負わなくてはならないのでしょうか?
Ans
原則として、あなたに保証人としての責任はありません。
しかし、貸主がお兄さんをあなたの代理人であると信じ、信じた事に正当な理由がある場合は、表見代理(ひょうけんだいり)が成立し、あなたは保証人としての責任を負わなければならない場合があります。
保証契約について
通常、保証契約は債権者と保証人との間で保証契約をするのが一般的です。しかし、この契約は代理人がすることもできます。
今回の場合、貸主とあなたが保証契約をしたわけではありませんし、
お兄さんに保証契約をする権限を与えてもいないのに、お兄さんはあなたの代理人として行動したとしても、お兄さんのなしたあなた名義の保証契約の効果はあなたに及びません。(無権代理といいます)
つまり、あなたはそのような約束をしたわけではないので、保証人としての責任は負いません。
相手方の事を考える表見代理
相手方はどうでしょう。お兄さんに代理権があると信じていたのに、実は代理権が無かったとしたら、気の毒です。
そこで民法は、表見代理という制度を設け、ある一定の場合に、あたかも(今回の場合、あなたが)代理権を与えた時と同じように、無権代理人(今回の場合、お兄さん)のなした法律行為の効果が本人(今回の場合、あなた)に及ぶこととしています。
表見代理が成立すると、今回の場合、あなたが保証人になり、その責任を負う事になります。
表見代理には3種類あります。
- 法律行為をする代理権を与えたかのような表示をした場合(実は与えていない)
- その法律行為をする代理権を与えていないけれど、別の法律行為をする代理権は与えていた
- かつてその法律行為をする代理権を与えていたけれど、それは消滅している
いずれもその法律行為は無権代理ですが、この何れかの内1つ(2つあってもかまいません)が当てはまり、相手方が代理人と称する人にその代理権があると信じ、その信じた事に落ち度がない場合には、表見代理が成立します。
実印と印鑑証明
今回の質問にあてはめてみますと、2.の場合にあたるかと思われますので、あなたは保証人としての責任を負わなければなりません。
と言いますのも、貸主に落ち度があったかどうかは、具体的な事件に則して様々な事情を考慮して判断されます。
今回の場合は、実印と印鑑証明を交付していますので、(貸主に)落ち度がないと判断するのに重要な意味を持っているからです。
追認してしまうと遡及する
無権代理による法律行為は本人には及ばないけれど、本人が、その無権代理行為を認めてしまうと、遡及してその効力が生じてしまいます(追認(ついにん)と言います)。
保証人に勝手にされてしまった場合に、責任を取らなければならないものと誤解して、貸主に支払う旨の意思表示をしてしまうと、追認した事になってしまい、とりたくもない責任を負わなければならなくなりますので、注意してください。
連帯保証人と普通の保証人の違いとは?
知人に保証人になってくれと頼まれました。
書類をみると「連帯して保証する」と書かれていて、保証人欄には「連帯保証」と記載されていました。連帯保証人とはどの様なものなのでしょうか?
Ans
連帯保証人は保証人より、重い責任を負います。慎重にお願いします。
保証と連帯保証の違い
保証も連帯保証も借主の代わりに債務を履行する(借金を払う)ということは変わりがありません。
違いは
普通の保証人は、借主が支払えない時に初めて責任を負います。
連帯保証人は借主と同じ立場で責任を負います。
どの様な場面で違いが出るかと言いますと
①貸主が債務者より先に保証人に債務の履行を請求してきた時
②貸主が債務者より先に保証人に強制執行を掛けてきた時
③保証人が数人いる時
保証人の出来る事
①においては
貸主に対して、先に債務者の方に請求してくれと主張できます。
(催告の抗弁)
②において
貸主が債務者及び保証人に対し債務名義を有している時は貸主はいずれに対しても強制執行を申し立てる事が出来ます。
この場合、保証人は債務者より先に強制執行をかけられた時は、貸主に対し、債務者に先に強制執行してくれと主張できます。但し、保証人は債務者に返済するだけの資力があることを証明しなければなりません。
(検索の抗弁)
③において
保証人は債務者の債務を保証人の数で割った額を返済すればいい事になってます。
(分別の利益)
連帯保証人において
①において
債務者と同じ立場なので催告の抗弁は出来ない
②において
債務者と同じ立場なので検索の抗弁は出来ない
③において
債務者と同じ立場なので分別の利益はない
この様に比較してみると責任の重さが違う事がおわかりになるかと思います。
貸主としてみれば、返済してくれる人が数人いればそれだけ確実性が増しますよね。
保証人になる時、保証人をつける時の注意点
知人に「絶対に迷惑を書けないから保証人になってくれないか?」と言われました。どの様な点に注意すればいいのでしょうか?
Ans
保証人となる事を考えている場合は、主債務者(この場合、知人)の資力、保証債務の内容、を確認する必要があります。
又、保証人をつけようと考えている時は、保証人の資力、保証意思、行為能力などの調査・確認をし、保証契約書を交わしておくとよいでしょう。
保証契約とは主債務者と保証人との間の約束ではなく、債権者と保証人との約束です。ですから、いざという時が来てしまった場合、『主債務者(この場合、知人)が「絶対に迷惑を書けないから」と言われて保証人になったんだから払わないよ!』という言い訳は通用しませんので、保証人になる際には「自分が払う場合がある」という覚悟が必要です。
保証人になる際の注意点
- 主債務者の資力(支払能力)や担保を確かめる
十分な資産があるか、債権者が他に担保を取っているか等 - 保証条件を吟味する
保証債務の額、期間を確認する
金額の書いてない借用書・保証書等ではないか - 連帯保証なのか、他に保証人がいるのか調べる
単なる保証なら、催告の抗弁権、検索の抗弁権があり、他に保証人がいれば分別の利益もありますが、連帯保証にはこれら全てありません。 - 普通保証か根保証か調べる
根保証の場合、保証した件にもとづくすべての債務について保証しなければなりません。非常に重いものです。
2についてですが、主債務者が欺す意思であれば詐欺が成立しますが、これを取り消すには債権者がこれを知っていなけばなりません。
又、錯誤無効を主張しようとしても、ちょっと注意して債権者に確認すれば、保証する額がわかったなどの、重大な過失があれば出来ません。
貸金業者からの借り入れにかかる保証人になる場合
貸金業者からの回収に酷い目にあうという話も聞きます。貸金業者は、保証契約締結前に、保証内容を事前に書面通知しなければならない事になっていますので、この書面を十分に吟味する必要があります。そして、保証契約締結した時に、遅滞なく保証契約および貸付契約の内容を明らかにする正面を交付しなければなりません。
保証人をとる時の注意点
保証人になってくれる方を考える場合については
- 保証人となる方の本人確認
- 保証人の資力の調査
資産がある等 - 保証意思の確認
先ほども述べましたが、保証契約は債権者と保証人との約束です。保証意思のない保証人との契約は、後日、契約の無効が認められることがあります。 - 保証人の意思能力
保証人が制限行為能力者(未成年、成年被後見人、被保佐人、被補助人)でない事。《取り消されてしまいます》 - 書面での保証契約
保証契約は書面でしなければ効力は生じません。保証契約書には保証金額、保証内容、保証人の氏名を記載します。
*返済を確実にしようとする場合には公正証書によるといいでしょう。
(民446条、449条、450条、452条、453条、456条)
(貸金業法17条)
根保証について
知人に頼まれて、知人と取引先金融機関との継続的取引について保証にとなりました。契約書には「この取引により生じた一切の債務について連帯保証をする」と書かれていました。私はこれら全部の債務について責任があるのでしょうか?
Ans
一定の法律関係から、将来発生するであろう不特定多数の債務を保証するものを、根保証といい、ご質問のような根保証は以前は原則として有効でしたが、平成16年11月成立(平成17年4月1日施行)により、書面によらない根保証、極度額の定めのない根保証は無効とされ、根保証の期間も一定期間に限られることとなりました。
今回の根保証は無効になると思われます。
根保証が単なる保証と違う点は、保証する債務が1つだけではなく、思いもよらぬ保証債務も負担しなくてはならない事にあります。
特に極度額の定めや保証期間の定めのない「包括根保証」は危険が大きすぎます。
ですので、先ほどの民法一部改正により「包括根保証」は原則禁止、「貸金等根保証契約」について規制が設けられました。
改正点
この一部改正により
- 極度額の定めのない根保証は無効
- 元本の確定期(つまり保証期間)は契約で定められた5年以内とされ、契約で5年以上だったとしても5年に短縮されます。
又、保証期間の定めのない時は契約締結の時から3年を経過した時点で元本が確定するこになります。
その他の改正として
保証期間でも
- 債務者、保証人に対して強制執行、担保権実行手続きが開始された時及び破産手続き開始決定がされた時
- 債務者、保証人が死亡した時
と言った事由が発生すれば元本は確定する事になりました。
どの様な場合に適用されるのか
今回の改正は、貸金等債務についての場合であって、売掛金債務、賃借人の債務などには適用されません。
又、保証契約が書面でなされなかった場合については無効となります。
(民446条、465条の2~465条の4)
(改正法附則4条)
保証人になろうとしている人が保証金額における思い違い
知人に連帯保証人になって欲しいと言われました。その際、保証金額は100万円ぐらいだと聞いていたので、契約書に署名しました。少し気になっていた事は、保証する債務の金額が記載されていなかった事です。暫くして、金融業者から、保証額1500万円と記入された契約書を提示され、それを支払うよう請求されました。
私はこれを支払わなければならないのでしょうか?
Ans
1400万円の部分には「錯誤」があったものと思われ、そうであるならば、この部分についての保証は無効となります。だだし、錯誤につき「重大な過失」がある場合には、無効を主張する事ができません。つまり、全て支払う義務が生じます。
要素の錯誤
民法の基本原則、「契約は守らねばならない」
この基本原則は、ある内容の約束だとわかっていて、その様な内容の約束をしたのだから、その約束を守る義務があるのは仕方がない、という事を根拠にしています。
しかし、その様な約束だとわかっていなかった時は、その原則は当てはまりません。
民法は、契約の当事者が理解していた内容(内心的効果意思)と契約書に書かれた内容(表示意思)に食い違いがある時を「錯誤」と呼び、その錯誤が重要な部分に及んでいる時(要素の錯誤)には、意思表示を無効としています。
今回の場合では、保証人の場合は100万円の保証だと思っている(内心的効果意思)けれど、契約書には1500万円の保証だと記載されている(表示意思)。そうなると、錯誤があると考えられます。
そして、100万円と1500万円の違いは契約内容の重要な部分に関する錯誤(要素の錯誤)であると言えます。
そうであるならば、保証の意思表示に要素の錯誤がある事になるので保証は無効、従って、支払う義務はなくなるという事になります。
無効を主張できない!! 重大な過失
しかし、民法では、それには条件がある、と言っています。
もし、錯誤に陥った契約当事者がほんの少しの注意をしたら錯誤に陥らなかったような場合には(重大な過失)、無効は主張する事ができません。
では、「重大な過失」と言えるにはどんな場合かについて
判例は
契約書を読めば、すぐに保証内容がもっと大きい事が容易にわかるのにこれを読まなかった場合には、保証人側に重大な過失がある、とされたものがあります。
個別具体的な事情によって違ってきますが、今回の場合を考えてみますと、
- 保証金額が白紙になっていたのですから、その点を貸主に確認する必要があり、それほど難し事ではなかった。
- 保証人には貸金業者から契約内容を通知する書面が事前に交付される事になっているので、保証金額を確認する余裕が十分にあった。
これらをあえてしなかったとなりますと、重大な過失があったとなる可能性があります。
(民95条)
(貸金業法17条)