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土地と建物

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土地と建物についての法律

売買の問題

不動産売買のクーリング・オフ

 そろそろ家を買おうかと思っていた所、先日、ある不動産会社が開発した住宅地を業者の案内で見学し、現地で手付金を支払って売買契約を締結してしまいました。
自宅に戻ってから、妻と色々検討したのですが、やっぱり考え直した方がいいのではという事になりました。安易に契約してしまったと後悔しています。
知人から、不動産の売買についてもクーリング・オフ制度による解約ができる、と聞いたのですが、どうなのでしょうか?


Ans
 宅地建物取引業法では、日用品などについて特定商取引に関する法律や割賦販売法が消費者保護の観点から定めているクーリング・オフ制度を取り入れ、購入者の意思が不確定な状況でなされたと考えられる契約の申し込みを撤回し、又は成立した契約を解除できるとしました。


契約の申し込みの撤回、解除

 不動産売買におけるクーリング・オフ制度は、従来、不動産業者の広告に誘われて現地案内をうけ、その場で契約させられてしまうというケースが多くあった事から定められたのです。

購入者は次の条件を満たす場合には、書面により契約の申し込みの撤回又は成立した契約の解除が出来ます

宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地建物の売買である事
宅地建物の引き渡し前あるいは代金全額の支払いを完了していない事
次の場所以外で契約がされている事

  1. 業者の事務所
  2. 継続的に業務を行う事が出来る施設のある所
  3. 1団の団地を分譲する為の現地案内所(テント張りは認められない)
  4. 1団の団地の分譲で、代理・媒介を行う業者の事務所及びこれらに準ずる場所
  5. 購入者が自ら申し出た場合の自宅または勤務先

業者が次の内容を書面で買主に告げた日を含めて8日以内である事

  1. 買受の申し込みをした者又は買主の氏名住所
  2. 売主である業者の称号または名称、住所、免許番号
  3. 本制度の内容・効果を告げられた日から起算して8日を経過する日までの間は、宅地建物の引き渡しを受けて代金の全部を支払った場合を除き、書面により買受の申し込みの撤回又は契約解除をする事が出来る事
  4. 申し込みの撤回などがあった場合、業者はそれに伴う損害賠償または違約金の支払いを請求出来ない事
  5. 申し込みの撤回などは、買受の申し込みの撤回などを行う旨を記載した書面を発した時にその効力を生じる事
  6. 申し込みの撤回などがあった場合、手付金その他の金銭が支払われていれば、業者は遅滞なくその全額を返還する事


手付金

 今回のケースにおいて、手付金を放棄して契約を解約する事も考えられます
しかし、その場合には業者が「履行に着手」したかどうかが問題になります。もし、業者が履行に着手した後でしたら、この方法による解約は認められなくなってしまうからです。

(宅地建物取引業法37条の2)
(民557条)


手付金の種類

 手付金とはどのようなものなのでしょうか?


Ans
 一般的に、手付金には「証約手付」「解約手付」「違約手付」の3種類があると言われています。

手付の種類

証約手付

  • 契約成立の証拠という効果に着目した手付で、全ての手付に認められる性質です。

解約手付

  • (手付を支払った側が)手付金を放棄し、又は、(手付を受け取った側が)その倍額を支払う事により、契約締結時から相手方が履行に着手するまでの間いつでも、契約を解除する事が出来るという性質をもちます。

違約手付

  • 契約後に債務不履行があった場合に、授受のあった手付金額を賠償金額と考えて、これを没収したり、受領した金額の倍額を支払わなければならないとされるものです。

 売買契約をする際に、「証約手付」なのか「解約手付」なのかは契約当事者の取り決めによります。もし、当事者が何ら取り決めをしていない場合には、その手付は「解約手付」の性質を有するとされています

申込証拠金や売買代金との関係

 売買契約をするに際して、いくらかのお金を授受する事があります

①数億円の契約をする際に数万円といった売買代金に比べて極めて少額のお金が授受されたり、
②逆に契約金額の半額以上といった多額なお金の授受がなされる場合もあります。


これらを手付金として扱う事が出来るのでしょうか?
①の場合には、これを「証約手付」と考える事も可能ですが、あまりに少額である時は、いまだ売買契約は成立しておらず、授受された金額は申込証拠金であり、買主はこれを放棄する事により売買予約契約を解除する事が出来ると考えるべきでしょう。

なぜなら、少額な「手付金」授受により、多額な売買契約に拘束される事はバランスが悪く感じられ、不当性があります

②の場合には、既に授受された金額は「手付金」ではなく、契約の履行である売買代金の一部支払いであり、そこに「手付」の概念を入れる余地はないと考えられ、その金額を放棄し、またはその倍額を支払って契約を解除するという事も出来ないということになります。


解約手付における履行の着手

 「解約手付」の場合、(買い手が)支払った金額を放棄し、又は(売り手が)その金額の倍額を支払って契約を解除することが出来るのは相手方が契約の履行を着手するまでとなっています


買主としては、残代金を用意し、売主に対し残代金支払いの意思を告げ、売主に対し履行の請求をするといった積極的な行動をとれば、履行の着手があった事になります。

(民420条、557条)



売主の代理人と売買する際の注意点

 やっと資金も貯まったので、土地を購入しようと思ってます。しかし、売主である本人は一度も顔を見せる事はなく、全て代理人が代行しています。こうした事から、代理人を通じて売買をする際、何か注意すべき事はありますか?

Ans
 代理人が売主本人から売買をする代理権を与えられているかを確認する必要があります。そのためには、売主本人からもらった委任状があるかどうかを確認する必要があると思います。

代理人と称する者の代理権の有無

 代理人と取引を行う場合には、直接本人とする場合より危険を伴う事がありますので注意してください。

代理人が本人を代理する権限を有していなかった場合や、代理権の範囲を超えて取引してしまった場合などは、契約は有効に成立しないのが原則です。

したがって、代理人が売買につき本当に代理権をもっているかどうかを確認する必要があります。もちろん、本人に直接確認する事が出来ればいいのですが、そうでない場合は、本人からもらった委任状を持っているかどうかを確かめるべきです。

そして、その委任状に押されている売主本人の印鑑が実印である事を印鑑証明書で確認できれば一応大丈夫でしょう。

表見代理(ひょうけんだいり)

 代理権があると思って契約したにもかかわらず、代理人に代理権がなかった事が判明した場合、本来でしたらその売買契約の効力は本人には及びません。

しかし、代理権があると信じて代理人相手に取引した者を保護する必要があるとの観点から、一定の場合、本人に契約の効力が及ぶ事が認められています。

この一定の場合()とは、

  • 代理人に代理権を与える旨を表明したが、実際には代理権が与えられていなかった。
  • 代理人が、与えられた代理権の範囲を超えて代理してしまった
  • 代理人に代理権を与えたが、その後代理権が消滅した

という場合であって、
更に相手方が代理人に代理権があると信じるにつき正当な理由がある場合(

この(の内どれか1つ以上)との要件がある場合は、代理人に代理権がある時と同じ効力が認められています。これが表見代理といわれているものです。

 例えば、(代理人の代理権を疑うべき事情があった場合は別として)
本人の意思に基づいて委任状や実印そのものが交付されている場合に、実印の押してある委任状を持っていた者の代理権を信じて取引したというのであれば、

それは、正当な理由があったという重要な要素になり、たとえ代理人と名乗る者に実際に代理権がなかったとしても、本人との間に契約は成立する事があるのです。

又、委任状が偽造されていた、実印が盗用されていた場合には、本人に契約の効力は及びませんので、くれぐれも慎重に契約を進める事をお勧め致します。

(民99条、109条、110条、112条)



売買契約書

 友人から不動産を購入する事になりました。売主が友人という事もあり売買契約書を省略しようと思うのですが、契約書を作成しなくても大丈夫なのでしょうか?

Ans
 不動産の売買契約について契約書がなければ契約が成立しないという事はありません。しかし、後日、何らかの紛争が生じることもあり得ますので、契約書は是非とも作成しておいたほうがいいかと思われます。

意思主義

 売買は売主と買主の意思が合致すれば成立します。(意思主義
どんなに高額な動産や不動産であっても同じです。
不動産に関してみれば、所有権移転登記手続き、代金支払い方法、不動産の引き渡しなどの手続きが何事もなく完了すれば契約書がなくても問題ありません。

しかし、後で売主が売ったつもりはないとか言い出す事もありまし、代金支払い方法についても最初に口約束で決めた方法で支払わなくなってしまったりしますし、不動産の引き渡し期限も曖昧になってしまう事もあり得ます。

 この様な後の紛争を防止するためだけでなく、紛争が生じてしまった場合に早く、確実に終了させる事が出来ますので契約書を作成しておいたほうがいいでしょう。

&deco(b,blue,,){相手が友人だからこそ、友人との関係をこれからも友好にしていくためにも、必要なのではないでしょうか}

契約書の内容

 売買契約書については、これから相手方と契約する内容によっては市販の契約書を使用する事で十分である事も多いかと思われます。
しかし、不動産に借地権や借家権がついていたり、担保権の対象になっている事もあります。

 この様に、契約後も第三者との関係が継続する場合ですと、市販の契約書では十分とはいいきれず、その他にもさまざまな法的な問題がありますので専門家(不動産業者や弁護士)に関与してもらう事が宜しいかと思われます。

契約書の注意点

契約書には数多くの項目が記載されますが、以下は一般的に特に注意を要するものです

  • 売買の目的物(どこの土地、建物か)
  • 売買代金はいくらなのか。どのような方法で支払うのか
  • 手付金を支払う場合、その手付の法的性格は何か
  • 所有権の移転時期(登記)、引き渡し時期はいつか
  • 引き渡し時に引き渡すべき書類は何か

 その他、契約内容によって注意を要する項目があるかと思われます。契約書をよく読み、相手方と何度も合意事項を確認し疑問点をなくしてからサインをする事が大切です。

(民555条)


借地上の建物を譲渡する場合

 土地を借りて家を建てて住んでいたのですが、引越をしようと思い、この家を処分しようと思っています。この場合、予め地主さんに事情を説明しないといけないのでしょうか?又、地主さんが許可しなかった場合はどうすればいいのでしょうか?

Ans
 賃借している敷地上の建物を譲渡するには、敷地賃借権の譲渡または転貸が伴います。ですので、建物譲渡をする際には、賃借権の譲渡について賃貸人の承諾を得る必要があります。

借地上の建物を譲渡する際には、建物譲渡の他に賃借権の譲渡や転貸という事を考えなくてはなりません。

地主の承諾、許可の裁判            

(以下は賃借権の譲渡の場合についてです)
 賃借権の譲渡には、賃貸人の承諾が必要とされていますが、この承諾が得られない場合には、予め賃借人は裁判所に対して、地主の承諾に代わる許可の裁判を求める事ができます。

地主の承諾や裁判所の許可もないまま借地上の建物を譲渡した場合には、地主は、無断譲渡を理由に、敷地の賃貸借契約を解除する事ができます。
とはいいましても、無条件に解除する事ができるわけではなく、無断譲渡があったにもかかわらず、地主と借地に人との信頼関係が破壊されるに至っていない場合には、解除する事は出来ないとされています。

又、事前に承諾に代わる許可を得る事ができたにもかかわらず、この手続きをしないで借地権譲渡をする事は、地主に対する背信行為になると考える事ができます。

安易に承諾を得ずに借地権譲渡をする事は危険ですし、譲受人にも後々大変を掛ける事になります。

譲受人の取るべき手段

 無断で借地権譲渡をし、地主が賃貸借契約を解除した場合における譲受人の取るべき手段として、建物の買い取りを地主に請求する事ができます。(地主に時価で買い取るよう請求する事ができます)
ここで注意すべきは、地主に請求する事ができるのは建物だけであり、借地権は買い取りの対象になっていない事です。

(民612条)
(借地借家法14条、19条)


媒介契約の種類は?

家を売却する時、不動産業者と媒介契約を締結する事になりました。
媒介契約とはどのような契約でしょうか?

Ans
媒介契約とは当事者の一方または双方からの依頼により売買などの契約の成立に尽力する事を目的とする契約です。
不動産売買の媒介契約は3種類があります。

  1. 明示義務のある一般媒介契約
    売主が複数の業者に媒介や代理を依頼する事の出来る契約で、依頼者(この場合、売主)が依頼業者全員に依頼先を明示する義務のあるもの
  2. 明示義務のない一般媒介契約
     売主が複数の業者に媒介や代理を依頼する事の出来る契約で、依頼者が依頼業者に対して他にも依頼している業者を明示する義務はないもの
  3. 専任媒介契約
     売主が一業者のみに媒介や代理を依頼する契約で依頼者が他の業者に重ねて依頼する事が禁止されているもの

専任媒介契約では、依頼者が重ねて他の業者に依頼する事を禁止されているなど依頼者にとって不都合な事がある為、その契約の有効期間は3カ月とされ、契約を更新しなければそれ以上出来ない事になっています。

媒介契約は委任契約ですので有効期間の定めのある一般媒介契約と専任媒介契約以外の有効期間の定めのない一般媒介契約に限り、いつでもどちらからでも契約解除できます。
解除するには依頼をやめる旨の意思表示をすればいいのですが、確実を期すために内容証明郵便でするのがいいかと思われます。
(民643、651)
(宅地建物取引業法34の2)

家屋の新築を依頼したいのですがその場合の契約は


マイホームを建築しようと思っています。そこで、知り合いの建設会社に工事を頼もうと思っているのですが、この場合、どの様な契約になるのでしょうか?

Ans
この場合において最も多い契約は建設会社等に設計、施工を依頼する形態で、請負契約と言われる契約です。

請負契約は仕事の完成に重点のある契約で、仕事の完成によってはじめて報酬請求権が発生します。
その他の契約の形態として

  • 労務の提供自体に重点がおかれている雇用契約
  • 事務処理自体を目的とする委任契約

等があります。

請負契約は口約束でも契約は成立する(諾成契約)のですが、事後的な紛争を避けるためにも契約書を作成する事が重要です。
一般的には建築会社が民間連合の協定に係る工事請負契約約款を基本に契約書を作成する事が多いようです。

請負契約を公正証書にする事については注文者側としては実益がなく、請負業者の請負代金の強制執行により回収できる法律上の利点があるだけだと思われます。

(民623条、631条、643条)
(建設業法19条)

スケッチの書き直し程度で設計料を支払わなければならないのでしょうか

自宅新築をしようと設計士を探し、スケッチを書いてくれました。
スケッチによる案を3回手直ししてもらったのですが、納得できるものではなかったので正式に断った所、設計料の請求を受けました。
これは支払わなければならないのでしょうか?

Ans
基本的には設計契約が黙示的に成立しているかどうかという問題になります。しかし、スケッチ程度でしたら施主側からも具体的な要求があったとは言えませんし、設計士側としても本格的な設計業務を行ったとは言えないと考えられますので、設計料の支払い義務は発生していないと考えられます。

設計士に設計図所の作成依頼をする場合、段階的に

  • 企画設計
  • 基本設計
  • 実施設計

に分けられます。
このうち、企画設計とは施主の意思決定を促す趣旨で行う簡単なスケッチ程度と言えますが、この程度であっても双方で契約成立していれば、内容に沿って設計料支払い義務が生じます。
双方の合意がない場合のスケッチ程度でしたら報酬請求の対象にならないという趣旨の判例が有ります。

又、打ち合わせを繰り返していくうちに設計図書を提示される程度に及べば、施主としても正式な設計業務に入っている事が理解できる状況なので黙示の契約として考えるべきでしょう。

この様な状況ですと、契約している状態なのかそうでないのか曖昧な部分が多くなりますのでトラブルを事前に防ぐためにも契約を交わすのかしないのか、契約書に報酬請求発生段階等を明示し、はっきりさせておいた方がいいかと思われます。

農地の売買をするには

友人から土地を譲ってもらい自宅を建てようと思っているのですが、その土地が農地なんですけど、家を建てられるのでしょうか?

Ans
農地を農地以外に転用(転用のための売買を含む)する場合には、原則として、都道府県知事の許可をうけなければなりません。この許可をうけないでなされた転用のための売買は無効となり、買主は土地の所有権を取得する事ができません。

農地転用許可申請

農地を購入する際には、予め目的の農地が転用の許可を得る事ができるかどうかを確認しておく必要があります。
農地法5条、平成21年の農地法改正の施行通達によると立地基準と一般基準とがあります。
これらの基準をみたしていれば許可がなされます。
農地転用の許可を得る為には農業委員会を経由して、都道府県知事に許可申請書を提出しなければなりません。この申請書には契約内容、転用計画、資金調達など記載し、登記事項証明書、公図写しなどを添付しなければなりません。

農地の売買契約における注意点

農地転用許可を受ける前に売買契約を締結する場合には「農地法5条の許可があった時に売買の効力が生じる」という条項を売買契約書に入れて停止条件付売買契約にしておく必要があります。その他に、契約時に手付金を支払う場合には「許可されなかった場合には手付金を返還する」という特約を入れておくのも重要です。
そしてこのような売買契約を締結していれば、買主は所有権移転請求権を取得している事になり、この権利を保全するために仮登記をする事ができます。この仮登記をしておけば、万一、この農地が二重売買されて他の人が(農地転用の)許可を受けて本登記をうけたとしても
仮登記の抹消請求をする事ができません。

また、知事に対する許可申請書には売主・買主双方が連署する必要がありますので、双方許可申請に協力する義務を負う事になります。したがって、一方の当事者が許可申請に協力しなければ、他方の当事者は訴えをもってこれを強制する事ができます。

(農地法3条~5条)
(農地法施行令3条~22条)
(農地法施行規則6条)


借地借家などの問題

共有の土地、建物を貸す場合

 私たち兄弟3人の父母が亡くなり、兄弟3人平等の割合(持分3分の1ずつ)で建物を共同相続しました。
この建物が空き家だったのですが、知らない間に他の兄弟2人が結託して私に無断で第三者に賃貸し、家賃をとっている事を知りました。
共有である以上、共有者全員の同意がなければ賃貸借契約は無効だと思うのですが、どうなのでしょうか?
また、他の兄弟2人が受け取っていた家賃も、3分の1は私がもらう権利があると思うのですが、それについても併せてお願いします。


Ans
 短期賃貸借の期間を超える賃貸借契約か、借地借家法の適用のある賃貸借契約であれば、原則として共有者全員の同意が必要ですので、賃貸借契約は無効になります。
又、受け取り済みの家賃も3分の1は貴方がもらう権利があります。


共有物の管理、変更、保存

 民法では、共有物に「変更」を加えるには、共有者の全員の同意が必要であるとされています

この「変更」とは、土地を埋め立てるとか、建物を改造するといった物質的変更を意味し、共有物を売却する等の法律的処分も含むと言われています。

又、「管理」については、変更の場合を除くほかは、各共有者の持分の価格に従い「過半数」をもって決します。
「管理」とは、前記の「変更」に至らない程度での共有物の利用、改良行為を意味します。

判例で認められたものとして、賃貸借、使用貸借契約の解除、賃借権譲渡の承認、借地上の建物買取請求権の行使等があります。

保存」とは、共有物の現状を維持する行為を意味します。
例として、第三者が共有物を勝手に使用したり、勝手に第三者名義に登記した、などの妨害行為があった場合に、これを排除することなどです。


賃貸借契約の締結

 多くの判例で、共有物を賃貸する事は原則として

  • その期間が民法602条の短期賃貸借の期間(土地については5年、建物については3年)を超える場合は、長期間にわたり、共有者の使用収益を制約し、事実上処分に近い効果をもたらすから「処分」に該当し、共有者全員の同意を必要とする。
  • その期間が短期賃貸借の期間を超えない場合は、いまだ「処分」に至らず、「管理」に該当し、共有者の過半で決定できる

とされています。

 この場合、借地借家法の適用がある土地、建物については、短期間の賃貸借であっても、同法によって短期の定めが無効となったり、有効としても原則として更新が認められるなど、長期間の賃貸借契約となるのが通常ですので、「処分」に該当し、全員の同意が必要とされます。

 この他にも、借地借家法の適用があっても、業務用の貸しビルとして建築され、テナントに賃貸する事が当初から予定されていた建物で、賃貸した相手がそのようなテナントであった事例では、過半数で決する事が不相当とはいえない事情があるとして、共同相続人の過半数による契約が有効とされた例もあります。


受け取り済みの賃料

 賃借人から受け取り済みの賃料については、過半数による賃貸借契約の効力の有無を問わず、共有持分権に基づき受け取った他の共有者に対して、自己の共有持分に相当する支払いを請求する事が出来ます。

(民251条、252条、602条)


建物を貸す際の注意点

 老後の生活資金の事を考えて、初めてアパートを建て、人に貸そうと思っています。建物を貸す際にはどのような事に注意したらいいのでしょうか?


Ans
一般的な回答ですが

  • 信用できる不動産業者に入居者を斡旋してもらう
  • 入居者の信用性、資力をよくチェックする
  • あなたの希望や実情に合った契約条件での契約書を作る

と言ったことかと思います。


不動産会社を利用する

 一般に、個人自ら入居者を見つける事はなかなか難しいのが実情ですので、信用できる不動産業者に入居者の募集・仲介を依頼した方がいいでしょう

また、老後の生活資金の事を考えての事ですから、継続的に賃貸を業とする事になりますので、賃貸人の協会などに入会して様々な有益情報を得ることも大切です。

入居者の信用性

 建物を貸す際に、貸主は、「安心して貸せる」という担保がなければ、他人に自分の建物を貸そうとは思いません

自分の建物を貸すわけですから、不動産会社に全てを任せっきりにしないで、どのような方が自分の建物を借りるのかを知る事がよろしいかと思います。

住民票、源泉徴収票や所得証明書といった、公的資料を提出してもらう等が一例です。

又、賃貸借契約書に、「暴力団である事が判明した場合は契約を解除する事が出来る」などの、入居者の信用確保の為の条項を入れておく事も大切です。

基本的な事ですが、借主が個人でも会社であっても、必ず連帯保証人を付けてもらう事にして、資力を証明する資料も提出してもらう事も大事です。

契約条件・内容に関与

 契約書については、不動産業者が使用している定型的な契約書を利用する事が多いでしょうが、これを一部訂正する等して自分の希望・実情に合った契約書を作るようにした方がいいでしょう

一部訂正をする事がなかったとしても、その定型的な契約書の内容を理解する事が必要です。

建物の賃貸借については借地借家法の適用がありますので、契約内容によっては無効とされてしまう事もありますので注意が必要です。


主に問題の多い点として

期間・更新  
 1年以上の期間であれば有効です。
しかし
(期間の定めがなく)いつでも要求があり次第立ち退く
所定の期間が来たら立ち退く

等といった特約は、
正当の事由がなければ解約申し入れや更新拒絶をする事が出来ない
との借地借家法の規定に反するものになりますので無効です。

その代わりに

  1. 定期建物賃貸借(定期借家)(公正証書などの書面が必要)
  2. 取り壊し予定建物の賃貸借 (公正証書などの書面が必要)
  3. 一時利用目的が明らかなもの

これらについては例外扱いされています。
又、1.については、契約期間の満了により賃貸借契約が終了する旨の記載した書面の交付・説明が必要となっています。

使用目的
 建物の使用目的が住宅用か店舗・事務所用なのかも記載しておくべきです。
それと併せて
「借家人が家主に無断で用法を変更すれば契約を解除する事が出来る」
等の条項を入れておく方がいいかと考えます。

修理・修繕
 何も特約をしないと原則として家主が修繕義務を負いますが、
「修繕及びその費用は全て借家人が負担する」という特約を入れれば、借家人が修繕義務を負う事になりますので有利な内容になります。

しかし、現実ではどちらの場合でも具体的な区分をするとなると難しい場合が多いようです。
「有益費・必要費の償還請求もしない」という特約も有利に働きます。

造作の買取り
 「賃借人が賃貸人の同意を得て付加した畳、建具などの造作につき買取をしない」
といったような趣旨の特約は、借地借家法では有効とされるようになりました。

退去時の補修義務
 賃借人に退去時に補修させる範囲をあらかじめ具体的に明示しておくと有利です。

消費者契約法との関係

 不動産賃貸借についても、平成13年4月1日以降に締結されたものについては、同日施行された消費者契約法の適用を受けますので、消費者契約法の契約の取消しの要件に該当する場合には取り消す事が出来ます。

(借地借家法26条、28条、29条、33条、38条~40条)


抵当権が付いている不動産を賃貸する

今のマンションが手狭になり、今より少し広い賃貸マンションの一室を賃借しようと思っていたのですが、マンションに抵当権が付いている事がわかりました。このまま借りても大丈夫なのでしょうか?

Ans
 抵当権の付いている不動産を賃借する際、そのまま何もしないでいると、後日不動産が競売されてしまうと、原則として買受人に賃借権を対抗する事が出来なくなりますので、明け渡しを求められます。これを避けるためには、賃借時に賃貸借の登記をし、かつ全抵当権者の同意を得て、その旨の登記をする必要があります。

賃借権と抵当権

 不動産の賃借権と抵当権の優劣は、それぞれが対抗要件を備えた時期の順序によって決まります

  1. 賃借権の対抗要件
    土地については、賃借権の登記または借地人所有の地上建物の登記
    建物については、賃借権の登記または借家人への建物の引き渡し(借家人の建物占有)
  2. 抵当権の対抗要件
    抵当権の設定登記

となっています。
つまり、①のいずれかと②の登記の時期を比較して、先の方が優先されます。

 そうなりますと、今回の場合においては既に抵当権設定登記が付されている不動産を賃借しても、抵当権の方が優先し、抵当権に基づき競売がなされた場合には、原則的には買受人に賃借権を対抗できないという事になります。
(例外として、平成16年3月31日以前に設定された短期賃借権があります。)

抵当権者全員の同意を得た賃借権

 平成16年4月1日施行の民法改正により、上記の例外扱いがなくなった代わりに、導入されたのが『抵当権者の同意を得た賃借権』という制度です。

 これは賃貸マンション、テナントなどの正常な賃借権を保護するためのもので、既に抵当権が付いていても、抵当権者全員から賃借権を優先的に扱うようにするという同意を得て、賃借権を登記するとともに、その同意も登記するというものです。
(賃借権の登記も必要になりますので賃貸人の承諾も必要です)

ポイントは、抵当権者全員の同意が必要という事になります。一部の抵当権者の同意だけではだめなのです。
同意をするかどうかは抵当権者の自由ですが、商業施設などでは、優良な賃借人を確保する事ができますので、抵当権者としては債権回収に有用となる場合がありますので、抵当権者が同意に応ずる事も十分考えられます。

登記できる事項

賃借権を登記する際に、登記できる事項(登記事項)を登記しておかないと、後で抵当権者に対抗できません。
登記事項としては、

  • 賃料の額
  • 存続期間または賃料の支払い時期の定めがある時はその定め
  • 賃借権の譲渡・転貸を許す定めがある時はその定め
  • 敷金がある時はその旨
  • 土地の賃借権設定の目的が建物所有である時はその旨
  • 定期借地、事業用借地、定期借家、取毀し予定借家などの定めがある時はその定め

などです。
ポイントとしては、
 敷金については、上記民法改正前は登記事項ではありませんでしたので、登記されていなくても買受人に対抗でき、買受人は旧所有者(賃貸人)が負担していた敷金返還債務(賃借人に敷金を返すという債務)を承継するものと解釈されていましたが、改正後は、敷金の登記がされていなければ、買受人は敷金返還債務を承継しないと解されます

 この様に、全抵当権者の同意登記をした後、登記事項において抵当権者の不利な結果になるような変更をしたい場合、抵当権者の同意を得て、その旨の登記をしておかないと抵当権者に対抗できません。不利な結果になるような変更ですのですんなりとは同意してもらえないかもしれません。

ですので、当初の賃借権優先の同意をもらう際に、ある程度の事情変更について、予め同意をもらっておく特約を付しておけば、抵当権者に対して同意の存在を主張して、登記事項変更の付記登記に応ずる事を法的に請求する事が出来るようになります。

(民387条)

社宅から社員が退職後も出て行かない

私はある会社に、「入居者は社員に限る」という約束で社宅として建物を貸しました。しかし、入居者が会社とのトラブルで会社を退職したのですが、まだ居座っている状況で、会社も賃料を支払わなくなってしまいました。
会社と退職した社員にどう請求すればいいのでしょうか?

Ans
 会社の賃料不払いを理由に会社との賃貸借契約を解除し、会社と退社社員の双方に、建物の明け渡しと滞納賃料の請求をすればいいと思われます。

賃貸借と考えられる社宅

 社宅といっても業務と密接に関連する「業務社宅」やそのような関連性の薄い「一般社宅」というものもあります。
業務社宅は、当該労働関係、利用規定の趣旨などに従い処理される事になりますが、一般社宅は、借地借家法の適用をうけると考えられます。

 社宅の使用料が一般の賃料相場より相当低い時は、賃貸借ではなく使用貸借と考えられ、社員が退職した場合は、通常は、直ちに社宅を会社に明け渡すべき事になると思われます。

 しかし、社宅利用料が一般の賃料と同程度かそれよりやや低い程度でしたら賃貸借と考えられますので、借地借家法の適用をうけることとなります。借地借家法の適用をうける賃貸借において、「社員の地位を喪失したら直ちに社宅を会社に明け渡す」という約束は、借地借家法に違反する事になり、無効です。

 ですから、明け渡してもらうには、解約の申し入れ後6カ月が経過する事と正当事由がなければなりません。(社員の地位を喪失したなら正当事由として認められる場合があります。)

賃貸借と転貸借

 賃貸人との関係では、会社が賃借人、社員が転借人という事になります。転貸借(会社と社員)は、有効な賃貸借(家主と会社)を前提としていますので、賃貸借が終了すれば原則として転貸借も終了せざるおえません。但し、賃貸借期間満了による終了、賃貸人と賃借人の合意による賃貸借終了は、(転借人の事も考え)当然には転借人に対抗できません。

 賃貸人(家主)としては、賃借人(会社)が賃料を支払わなければ、賃借人(会社)に対して催告をしたうえで、賃料不払いを理由に賃貸借契約を解除をすれば、建物の明け渡しと滞納賃料の請求を、転借人(元社員)に対しても請求をする事が出来ます。
この場合、賃貸人(家主)は賃借人(会社)にだけ催告をすれば良く、転借人(元社員)にする必要はありません。

(民601条、613条)
(借地借家法34条)

建物建築で使用した新建材で賃借人が病気になった場合

居住用建物を新築し、賃貸する事にしました。暫くして、賃借人が建物に使用された建築資材から出る化学物質が原因で病気になったので、治療費を払って欲しい、と言われました。本当に、使用された建築資材に問題があるなら責任は建築業者にあり、家主が責任を負う事はないと思うのですが、どうなのでしょうか?

Ans
まずはじめに、賃借人の方が健康に戻られる事を願います。
この問題に対しては、建物の新建材と病気の発生との因果関係が証明され、その事を家主が予見し、結果を回避する事ができたのであれば、家主も責任を負う事になります。

賃貸借契約

民法によると賃貸借契約は、貸主が物件を借主に使用収益させる義務を負い、その対価として借主が賃料を支払う義務を負う事が要素となる契約です。

物権を使用収益させる義務とは、物権を通常の使用収益に適するような状態において借主に提供する義務とされています。
この物件を居住用の建物に当てはめて考えてみますと、健康、衛生上特に問題ない良好な居住環境において提供するという事まで含むと解されています。

義務不履行

そうなりますと、家主(賃貸人)がこの義務を怠れば家主の債務不履行となり、それについて責めに帰すべき事由がなかった事(過失がなかった事)を証明しなければ、損害賠償責任を負う事になります。

仮に新建材と病気の因果関係が認められたとすると、家主は先ほどの義務を怠った事になりますし、新建材に問題があるならそれを使用した建築業者の責任も考えなけれればなりませんが、建築業者だけに責任を負わせる事では済まなると思われます。

家主の義務不履行があった場合、家主の責めに帰すべき事由がないかどうかですが、家主に病気発生を予見する事が可能かどうか、予見可能で結果を回避する事が可能であったかどうかが問題になります。

使われた建材による当該病気の発生が他にも事例があり、一般に知られている状態であるならば、当然その事を予見する事ができ、何らかの方法で結果発生を回避する事ができたといえますので、家主にも責任があるという事になります。

逆に、一般には知られていないレアな例だとすると、家主がそれを予見する事は困難であり、責任を認める事は出来ないという事になります。
病気の症状と資材の因果関係は認められるが、医学界ではまだ十分認知されていなかったとして家主の責任が否定された判例があります。

(民601条、415条)

土地を借りる時に注意すべき事は

他人の土地を借りて工場を建てようと考えています。
どの様な事に注意すればいいでしょうか?

Ans
契約前に、まず現地を目で確かめ、その土地の登記事項証明書を取り、その権利関係を確認する事が大事です。

土地について

まず、物理的な事を自分の目で確かめる事です。
所在位置、地形、境界など。
境界については、地主の人や、隣地の人の確認を受ける事が確実です。
その土地の権利関係は登記事項証明書で確認しなければなりません。
その土地に先行する権利があるのか?登記簿所の地目は農地になっていないか?所有者は誰なのか?(共有名義なのか?故人名義なのか?)等を確認してください。
もし登記簿上の地目が田、畑などの農地になっている場合には農地法所定の転用許可が必要になります。
登記事項証明書は所轄の法務局へ行けば入手できます。

建築物について

又、その土地を建築する上での公法上の制限(建築基準法、都市計画法)についても確認しておかなければなりません。
都市計画法による市街化調整区域内でしたら宅地であっても許可がないと家を建てる事が出来ないのが原則です。
これらは市町村の担当課に問い合わせてみて下さい。

(農地法4条、5条)(都市計画法29条)

土地を貸す場合の注意点

ある会社から事務所を建てたいので土地を貸して欲しいと言われました。どの様な事に注意すればいいのでしょうか?

Ans
土地を貸す時に注意すべき事は借地借家法の適用する対象になるのか、賃貸借期間、賃料をどう決めるか、賃料の支払いを確実にしてもらう方法をどうするか、と言った事を考えるべきです。

借地借家法では「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」を「借地権」と呼び、存続期間、更新拒絶制限などの点で、民法上の土地賃借権よりも強力な保護を与えています。
住宅用の建物、店舗、事務所、倉庫、工場などを建てる為の土地の賃貸借契約をすると「借地権」が発生し、簡単には返してもらえなくなります。
これとは別に駐車場の一部にこれに付随する管理小屋などは主たる使用目的が「建物所有の目的」ではないため、借地借家法の適用はありません

賃貸借期間

原則として、30年以上の期間を定める事が必要です。
例外として
一般定期借地権は50年以上、建物譲渡付き借地権は30年以上、事業用定期借地権は10年以上50年未満となっており、公正証書の作成が必要なものもあります。
貸す側としては一時使用の目的で3年の期間を定めても借地借家法の適用を免れうる「一時使用目的」が裁判上認定されることは難しいです。

賃料

賃料は自由に決められますが、周辺の相場などを調べた方がいいでしょう。賃料不払いがあった時の為に敷金、保証金などは預かっておいた方がいいでしょう。
この他に、社長さん個人、その他の資力のある人に連帯保証人になってもらう方がよいでしょう。

契約書を作成する場合には
建物の増改築には地主の書面による承諾を必要とすると言った条項を入れておくと有利です。

(借地借家法1条、3条、22条、23条)

借地権の発生する目的要件

中古車展示場として期間10年の約束で土地を貸しています。その一部に事務所用の仮設建物(プレハブ)があります。賃貸期間が過ぎ、自分で使用する必要が出てきたので、借主に明け渡しを求めた所、「建物があるから借地権が発生し、存続期間は30年になるから応じません」と言われました。
借地権が発生しているのでしょうか?

Ans
借地の主たる目的は中古車展示場としての使用であり、事務所はその為の従たる目的にすぎませんので「借地権」は発生していません。

借地借家法で「借地権」とは「建物所有を目的とする地上権又は土地の借地権」とされています。
ご質問の場合に照らしますと事務所の目的は中古車展示場の使用目的に付随するものとして建築されたものと言えます。
ですので、本来の借地契約の存続期間(ここでは10年)と同時になり、撤去を求める事ができます。

この他にも、住宅展示場、ゴルフ練習場、バッティング練習場、駐車場、資材置き場等の付随する事務所等があっても同じように考える事ができます。

(借地借家法2条)

農地を貸す時に注意する点は

現況は荒れ地ですが、登記簿上地目は畑となています。
建設業者から「資材置き場として使いたいので貸してほしい」と言われました。そのまま貸しても大丈夫なのでしょうか?

Ans
原則として、荒れ地でも農地ですのでこれを資材置き場として貸すには農地法により、事前に農地を非農地に転用する許可を受けるか、転用目的での賃貸借の許可を受ける必要があります。但し、市街化区域内の場合は、届出だけで済みます
契約段階では、これらの許可、届け出を条件とする条項を入れた方がいいでしょう。

農地については農業を保護する政策目的のため、農地法により農地の権利移動をする場合、宅地など非農地への転用をする場合には原則として、農業委員会又は都道府県知事の許可が必要とされています。但し、市街化区域内では農業委員会への届出で済みます。
これら許可、届け出なしで転用しますと3年以下の懲役または300万円以下の罰金という刑事罰を受ける事がありますし、この契約は無効とされます
ご質問の場合も許可、届出が必要です。

転用許可基準

農地から非農地への転用(または転用目的の権利移動)許可を受けるには一定の要件が必要で、その基準があります。
農地として残す必要性の高いものから低いものまで(農用地区、甲種農地、第1~3種農地)分けられていますので、対象農地が許可、届出を受けられるかは予め市町村の農地担当課に相談した方がいいでしょう。

契約段階

  • 契約する前に届出で済むのか許可が必要なのか調べる
  • 契約する段階で許可、届出があった時に受け渡すなどの条件を付ける
  • 許可、届出が受けられなかった場合の契約解消の取り決めを特約として入れる

これらに注意する必要があります。

(農地法3条~5条、64条)
(農地法施行令3条~22条)


マンションについて

マンションの建て替え決議と第三者

 私の住んでいるマンションで建て替え決議をした場合に、マンション所有者から部屋を賃借している者や担保を付けている銀行など第三者との関係はどうなっているのでしょうか?


Ans
 建替え決議は、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で行わなければなりません。建替え決議も集会の決議ですので、区分所有者及びその承継人に対してのみ効力が及び、第三者には効力が及びません。
第三者に該当する者として分譲マンションの所有者から部屋を借りている賃借人、マンション購入時にローンを組んでマンションに担保を付けた銀行などの金融機関、その他に、マンションの敷地が借地である場合の地主などがあります。
以下ではこれらの者について説明していきます。


マンションの賃借人との問題点

 マンションの所有者から部屋をかりている賃借人についてです。
建て替えのために取り壊しを行うには賃借権を消滅させなければなりませんので、マンション所有者と賃借人との間で協議をし、賃貸借契約を合意解除して終了させることになります

 又、協議が調わなければ、賃貸借の期間満了時に更新を拒絶するか、期間の定めがなければ解約の申し入れによって賃借権を消滅させる必要があります。
この場合では、建て替え決議がなされた事が、賃貸借の更新拒絶または解約の申し入れの正当事由として考慮されます。


金融機関との間の問題点

 マンションを購入する場合には、銀行などの金融機関でローンを組んで、マンションに担保を付ける事が一般的です

そうした場合に、建て替えのためにマンションの取り壊しを行うと、抵当権の目的が消滅してしまうことになり、金融機関の権利が害される事になります。
ですので、金融機関の承諾なく、建物の取り壊しを行う場合、金融機関は取り壊しの差し止め、禁止、あるいは、損害賠償請求をしてきます。

 又、民法では担保を毀滅した場合には、一括弁済を請求出来る事が定められていますので、それに基づいて、ローンを組んでいたマンションの所有者は、一括弁済を迫られる事になります。
そのような事にならないようにあらかじめ、建て替え参加者は、抵当権者と交渉して抵当権を消滅させておかなければならないのです


敷地の賃貸人との間の問題点

 マンションの敷地が借地で、取壊し及び従前の借地権残存期間を超えて存続するマンションを建て替えた場合においての問題点として、地主が建て替えに異議を述べない場合には、従前の借地法が適用される借地契約で30年、現在の借地借家法の適用される契約では20年、借地権が存続します。
又、異議が出れば、更新拒絶が正当か否かの問題になります。借地権が定期借地権の場合には、建物の建て替えによる存続期間の延長がありません。

(建物の区分所有等に関する法律63条)
(民137条)


マンションの建て替える際の基本

 私はかれこれ築30年以上経過したマンションに居住しています。築30年以上となると外壁はもちろん、生活する上で多少問題が発生してしまうのが現状です。補修も考えたのですが、やはり建て替えを検討しなければならない時期なのかと思っています。
マンションの建て替えについて教えてください。


Ans
 マンションの建て替えは、区分所有者及び議決権のそれぞれ5分の4以上の多数による集会の決議(建替え決議)により、することができます。

建替え決議の手続き

 建て替え決議とは、現在のマンションを取り壊して、その敷地に新たにマンションを建築する旨の集会の決議の事をいいます

集会で建替え決議をしようとする時は、集会の日より2カ月以上前に招集通知を差し出さなければなりません。
(規約で2カ月以上より長い期間に定める事も出来ます)

この通知には

  • 再建決議の議案の要領
  • 建て替えを必要とする理由
  • 建て替えをしないで改修工事等で済ませようとした場合に要する費用の額と内容
  • 建物の修繕計画があればその内容
  • 修繕積立金として積み立てられている額

といった事を通知する事になります。

そして、集会の日より1ヶ月前までに説明会を開催して前記の通知内容を説明しなければなりません。

建替え決議

 説明会を開催した後に、マンション建て替えについての集会が開催され、建替え決議がなされます
建替え決議は、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で行わなければなりません。
(ここで、区分所有者の5分の4を計算する際には、1人の区分所有者が複数の専有部分を所有している場合も1人として計算されます)

この建替え決議においては、

  1. 再建建物の設計の概要
  2. 現在の建物の取壊し及び再建建物の建築に要する費用の概算額
  3. 費用の分担に関する事項
  4. 再建建物の区分所有権の帰属に関する事項

これらを定めなければなりません。
その際に、3と4については各区分所有者の衡平を害しないように配慮しなければなりません。

建替えに反対の区分所有者

 建替え決議が可決された場合、これに反対の区分所有者に対して建て替えを強制するものではありません

建替え決議に賛成した区分所有者は、建替え決議に賛成しなかった区分所有者に対して建替えに参加するか否かの催告をする事ができます。

そして、参加不参加が確定した後、、建替えに参加しない区分所有者に対して区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すよう請求する事が出来ます。

これによって、建て替えに参加する区分所有者だけで建て替えができる事になります。

補足
建替えに不参加した者の生活に著しい困難が生じるおそれがある場合は、裁判所は1年以内の期間、明渡しを猶予する事が出来るものとなっています。

(建物の区分所有等に関する法律62条、63条、64条)


前所有者が滞納したマンション管理費を支払った中古マンションの購入者

 先日、中古マンションを購入しました。管理組合から、前所有者が滞納していた管理費を支払うよう請求がきましたので、請求額を支払ったのですが、この支払った額を前所有者に対し、返還請求する事が出来るのでしょうか?


Ans
前所有者に対し、支払った額の返還請求をする事が出来ます。

建物区分所有法

 区分所有建物を購入した者を特定承継人といいます

特定承継人は、前区分所有者の権利義務一切を包括的に承継する者とは異なり、区分所有建物の区分所有権を取得するだけであり、その他の権利義務を原則的には承継されません。

しかし、この原則を貫くとマンションの維持管理費が十分でなくなるおそれがあります。また、その不足分を他の区分所有者にしわ寄せが行くといった事も考えられ不公平です。

そのため、建物区分所有法8条では管理費等の滞納のある区分所有建物を購入した者は、前区分所有者が滞納していた管理費等の支払い義務を負うとしました

とはいっても、新区分所有者はその滞納している管理費が、消滅時効にかかっている部分まで支払う必要はありません。


 その他の問題として
そうした新区分所有者が区分所有建物を第三者に譲渡したとしても、一旦支払い義務を負った前区分所有者の滞納管理費の支払い義務を免れるわけではないと考えられています。

前区分所有者への請求

 
新区分所有者が、滞納管理費を支払った場合、本来の支払い義務者である前区分所有者に対し、返還請求する事が出来ると考えられています。

しかし、売買契約の内容の中に、「新区分所有者が滞納管理費を支払う」といった様な事が定められている時は、返還請求できないのは当然です。

競売による区分所有建物の取得

 競売による区分所有建物の購入の場合には、競売による売却価額の決定に当たって、管理費の滞納の有無が考慮されていますし、管理費の滞納があった場合にはその事が公示されています

ですから買受人は滞納管理費がある事を知った上で安く競落できる上に、前区分所有者に対し滞納管理費を請求するというのは公平ではありません。

競売の場合、新区分所有者はたとえ滞納管理費を支払ったとしても、前区分所有者にその額を請求する事が出来ないというのが合理的な考え方です。

 この考え方とは逆の結果ですが
判例においては、競売において、滞納額が明示等されているのは、単に買受人に不測の損害を被らせる事のないように配慮しただけのものであり、新区分所有者に本来的な支払い義務があるわけではないとして、新区分所有者の返還請求を認めたものがあります。

(建物区分所有法8条)
東京高判平17・3・30・1915・32



マンションでの上の階の住人の生活騒音

マンションの上の階で、フローリングの床を飛び跳ねる音がうるさかったので注意しましたが、聞いてくれません。どのような措置をとる事が出来ますか?

Ans
 マンションの上の階の住人に対して、あなた自身が損害賠償請求あるいは騒音行為の差し止めを請求する事が出来ます。また、区分所有者全員あるいは管理組合法人も騒音行為の停止、騒音予防行為の請求を請求する事が出来ます。

 分譲時にフローリング床の設置しているマンションでは、比較的、階下に対する騒音を考え、遮音設備を整えているところが多いようです。しかし、居住者がフローリング床を改装するような場合があり、そのような場合には騒音対策はとられない事が多いでしょう。

受忍限度

 あなたが階上の住人の騒音に対して何らかの法的措置をとる事が出来るのは、その騒音が「受忍限度」を超えている場合です。
ここでの受忍限度とは、社会生活上一般的において社会生活を営む上で受忍するのが相当と認められる限度、という事であり、その限度を超えて初めて違法性の要件を備えるのです。

 ある裁判例で、50~60デシベル程度の音がほぼ毎日聞こえ、午後7時以降、時には深夜にも及ぶ事があったという事例では、受忍限度を超えるとしています。

区分所有者全員で取り得る措置

 あらかじめ、騒音が出ないように規約で使用方法を具体的に規制しておくなどしたうえで、管理組合から騒音を出す住人に勧告するという方法が考えられます。

 その他に、建物の区分所有等に関する法律では、
共同の利益に反する行為をした場合またはその行為をするおそれがある場合、には他の区分所有者全員または管理組合法人は、行為の停止、行為の結果の除去、行為の予防に必要な措置をとる事が出来る
としています。

この規定によって、騒音行為の停止やカーペットを敷く事による防音措置を講ずることを要求できます。
但し、裁判を起こすには集会の決議が必要です。

あなた1人でとれる対処法

 あなたは階上の住人に対して、損害賠償請求する事が考えられます。
この場合には、

  • 相手の故意過失
  • 受忍限度を超えている事
  • あなたの損害の発生
  • 因果関係

が必要となります。
裁判で実際に認められたとしても損害額は大きい額でありませんが、以後の騒音の予防効果が期待できます。

 その他に、騒音行為の差し止めを請求する事が出来ます。
具体的にはカーペットを敷くなどの騒音が発生しないような措置を求める事になります。

この場合には、相手の故意過失は要求されませんが、受忍限度に関して、差し止めによる相手方の不利益と当方の利益を比較して、損害賠償の請求の場合より厳しい判断をする事になります。

(建物の区分所有等に関する法律6条、57条)
(民709条)

分譲マンション管理費の消滅時効期間は

分譲マンションの住民の中に長期間にわたり管理費を滞納している人がいます。そのため支払いを請求したのですが、「時効だから払わない」と言われてしまいました。
管理費の支払い義務も時効消滅してしまうのでしょうか?また、するとしたら何年間放置すると時効消滅してしまうのでしょうか?

Ans
分譲マンションの管理費は定期給付債権にあたりますので、5年で時効消滅してしまいます。

定期給付債権の短期消滅時効

民法169条に
「年又はこれより短い時期により定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、5年間行使しないときは、消滅する」
とあります。(定期給付債券)

 定期給付債権とは、定期金債権という基本権に基づいて発生する個々の具体的な債権(支分権)の事をいい、1年以下の期間ごとに発生する支分権について適用があると解されています。

分譲マンションの管理費

 分譲マンションの管理費を考えてみますと、管理規約に基づき、通常1か月ごとに管理組合に納めるものですので定期給付債券にあたると解されています。

 かつて管理費は、短期消滅時効が認められた根拠は当てはまらないという理由で一般の10年の消滅時効期間が適用されるという説もありました。
しかし、最高裁判所は

(分譲マンション管理費等の債権は)管理規約の規定に基づき、区分所有者に対して発生するものであり、その具体的な額は総会の決議によって確定し、月ごとに所定の方法で支払われるものである。この様な本件の管理費等の債権は、基本権たる定期金債権から発生する支分権として、民法の169条所定の債権に当たるというべきである。その具体的な額が共用部分等の管理に要する費用の増減に伴い、総会の決議により増減する事があるとしても、その事は上記の結論を左右するものではない

として、5年の消滅時効にかかることを明言しました。

(民169条)
最判平16.4.23判タ1152.147

マンションにおける瑕疵修補について

新築分譲マンションを購入後、分譲業者にアフターサービスの修補を請求しましたが、建築業者が修補にやってきたのですが、売主と建築業者との関係はどうなっているのでしょうか?

Ans
マンションの分譲契約にアフターサービスの特約がある場合、売主は建築業者に対しアフターサービスによる修補を代行させているのです。

売主の瑕疵担保責任

売主の分譲業者は分譲マンションに隠れた瑕疵がある場合、その瑕疵の存在について故意過失を問わず

  1. 損害賠償義務を負い
  2. 瑕疵の程度がひどく契約の目的を達成する事が出来ない時は契約の解除になります。

これが民法に書かれている売主の瑕疵担保責任と言われるものです。

売主の瑕疵担保責任には「修補」という事がありません。
分譲マンションの買主にとってはこれから住むのですから修補の請求の方が重要です。
ですので、アフターサービスによる修補の定めが設けられているのです。
ここでいいます「瑕疵」とは
売買の目的物が通常有すべき品質や性能を有していない事をいいます

補足として

請負人の瑕疵担保責任

請負人の瑕疵担保責任は売主の瑕疵担保責任とは少し違います。
請負人の瑕疵担保責任も請負人の瑕疵について故意過失は問われません。
しかし、

  • 隠れた瑕疵の他に明白な瑕疵も含まれます
  • 注文者は原則として瑕疵修補請求があります。
  • マンション等土地の工作物については瑕疵があっても契約解除をする事が出来ません。
  • 売買契約での損害賠償の範囲は信頼利益の賠償ですが、請負契約での損害賠償は履行利益の賠償と重くなっています。
  • 瑕疵担保責任を請求する期間が違います

(民566条、570条、634条~640条)

分譲業者の値引き販売

分譲マンションを購入する際に、分譲業者から「値引きはしません」と言われたので値引きなしで購入したのですが、売れ残りが出たので値引き販売する旨の広告を出しました。
分譲業者に対して何か請求する事ができるでしょうか?

Ans
将来にわたり値引き販売は一切しない旨の約束がなされていれば、分譲業者に損害賠償の請求をする事ができます。

マンションの分譲業者がマンションを販売する際、いくらで販売するかは原則自由です。(契約自由の原則)ですので、値引き販売する事も自由です。
しかし、分譲に際して、買主に対し、将来にわたって一切値引き販売をしない旨の約束をしていた場合に、売れ残り住戸を値下げ販売する事は契約違反であり、これによって生じた損害賠償を請求する事ができます。

裁判例として

値引きしませんと言われて販売価格で購入、その後1年くらい経って売れ残り住戸を値引き販売したために、買主が分譲業者に対して損害賠償請求した事案で裁判所は

値下げ販売しないとの分譲業者の担当者の話はその時点(売買の時点)での話をしていたのであって、1年後や2年後のに売りたいとか買いたいとかという話をしていたのではないから「本件売買契約時点ではこれ以上の値引きはない」旨を述べたにすぎず、将来にわたって値引きしないとの約定が成立したとはいえない

東京地判平20.1.28

管理費等を滞納していた区分所有者が孤独死をした場合

先日高齢の区分所有者が孤独死をしました。生前から滞納していた管理費や修繕費等、これから発生するこれらの費用は誰に請求したらいいのでしょうか?

Ans
孤独死でも、相続人が存在する事もありますから、まず、相続関係を調査する事が必要です。相続人がいれば相続人が包括承継して滞納費用を負担するのが原則です。相続人がいない、相続人が相続放棄した場合は相続人不存在による相続財産管理の手続きをとる方法があります。

相続人不存在による相続財産管理の制度

亡くなった区分所有者の戸籍を調査しても相続人が見つからなかった場合、相続人全員が相続放棄をした場合、相続人が存在しない事が確定すれば、原則、国庫に帰属しますが、戸籍調査だけで相続人の不存在が確定するわけではありません。
相続人が存在しない事を確定する事と、相続財産の管理と清算を行うための制度として、相続財産管理の精度があります。

相続人が存在する事が判明し、相続人がマンション区分所有権を相続した場合は、清算されなかった管理費等は相続人に請求する事になり、相続人が現れない場合、亡くなった方と特別な縁故があった者に区分所有権が分与された場合は、特別縁故者に請求する事になります。特別縁故者もいない場合は国庫に帰属する事になりますので国庫に請求する事になります。

(民951条~959条)

マンションの1階部分の所有者とエレベーター管理費用

9階建てのマンションの1階部分で店舗として使用しています。1階なのでエレベーターを全く使用しないのにエレベーター管理費用を負担する事に疑問を持ちます、どうなのでしょうか?

Ans
店舗は1階にあり、エレベーターを使用する機会は全くないと思われますが、エレベーターはマンション全体の共用部分と解され、管理費用を負担しなければなりません。

1階部分の方においては、エレベーター設備は

  • 2階部分以上の所有者にとっての共用部分である
  • 1階部分の人について管理費用は負担する必要はないか、低額が妥当である

と主張したいところです。

この様な問題においての1つの判決があります。
《事例》
6階建てのマンション、1階部分は店舗、2階以上は住居。
従来は、1階部分の管理費は2階以上の部分に比べ低額だったが、総会において一律面積に応じて負担するとした。

この総会の定めに対して、1階部分の所有者が次の事を主張しました。

  1. エレベーターは2階以上の住居部分の所有者のみが使用する一部共用部分であり、1階部分の所有者は管理費を支払う必要はない、
  2. 従前は面積に比べて低額であったのを面積に応じた金額にする事は、1階所有者にとっては不利益な内容であり、「特別の影響をおよぼすべき時」に該当するので、1階所有者の承諾を得なければならない。

《判決》

  1. エレベーターは規約上共用部分と定められている事、屋上の利用等のため使用する可能性が全くないとはいえないので、一部共用部分とはいえない
  2. 区分建物においては、共用部分において各区分所有者が受ける利益の程度を管理費の額にすべて反映させる事は不可能であるから、共用部分における各区分所有者の得失をある程度捨象し、一律に区分所有者の面積に応じて管理費を負担する事は合理的な方法である

以上の事から、1階部分の所有者には不利益な内容ではあるが、建物の区分所有等に関する法律31条1項後段に規定する「特別の影響を及ぼすべき」には該当せず、1階所有者の承諾は必要ない。

以上の事から、1階部分の所有者もエレベーターの管理費用を負担しなければなりません。負担額については管理組合などと協議を行って決定された方がよろしいかと思われます。 

(建物の区分所有等に関する法律4条、11条1項、19条、31条1項)
東京地判平5・3・30判時1461・72

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