日常、起こり得るトラブルや疑問を法律を通して考えるページ

家族生活 2

夫婦に関する法律

配偶者暴力相談支援センター

 私は結婚して5年になります。最近、夫の帰宅時間が以前に比べて遅くなることが多くなり、会社で気に入らない事があるのかちょっとしたことで夫婦喧嘩になってしまい、私を殴ったり蹴ったりします。友達に相談した所「配偶者暴力相談支援センター」で相談してみてはどうかとの事でした。
 この「配偶者暴力相談支援センター」とは、どのような機関なのでしょうか?


Ans
 配偶者暴力相談支援センターとは、DV法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律)に基づいて設置された機関で、配偶者からの暴力を受けている被害者を救済するための中心的な役割を担っている公の施設です。


配偶者暴力相談支援センターの役割

 配偶者暴力相談支援センターでは、相談員が被害者からの様々な内容の相談に応じて、必要によって様々なアドバイスをしたり、場合によっては警察や児童相談所及び弁護士会等の適当な相談機関を紹介したりしています
 その他に、被害者の心身の健康を取り戻す為にカウンセリングを実施したりすると共に、被害者やその子供等の同伴家族についての緊急の場合における安全を確保するための措置をとったり、暴力を加える配偶者から逃げ出してきた被害者を、その子供等の同伴家族と一緒に一時的に保護する事もしています。

 又、暴力を加える配偶者との決別を決意した被害者に対しては、民間のシェルターを含めた各種の婦人支援施設を紹介して安心して居住できるようにしたり、公共職業安定所や公営住宅を紹介してその利用方法や手続きを説明する等して、被害者が配偶者から自立して生活ができるように支援したりすることもしています。

 配偶者暴力相談支援センターはDV法に基づく裁判所に対する保護命令の申立てに関しても相談に応じたり情報を提供したりしています。


配偶者暴力相談支援センターの場所

 当センターは、被害者を保護する事を中心的役割を担っていますので、現在では各都道府県が設置している「婦人相談所」またはその関連機関がこのセンターの役割を果たしています
 そして、女性の積極的な社会参画の促進を目的として各都道府県が設置している「女性センター」も、配偶者暴力相談支援センターのとしての機能を有する期間として期待されています。これらの中には、電話相談にも対応している女性センターもあります。

この他に、市町村でも配偶者暴力相談支援センターのの役割を担う施設を設置するよう努力されていますので、今後は、こちらのセンターがより利用しやすくなるかもしれません。

千葉県に関しては

千葉県女性サポートセンター
こちらをご覧ください

(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律 第2章)


夫の暴力が酷いのですが

 結婚してそろそろ5年になります。仕事が順調ではないからかもしれないのですが、最近、私の夫は、気に入らない事があるとすぐ私に暴力をふるいます。私は、こんな夫と離婚したいのですが、離婚話を持ち出せば、間違いなく暴力をふるうと思うのです。
何かいい方法はありませんか?


Ans
 あなたは、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」、いわゆる、DV法が定めている「配偶者暴力相談支援センター」から様々な支援を受ける事が出来ます。又、今後も継続して暴力を受けるような場合には裁判所による「保護命令」を利用する事によって、夫の暴力を防止しながら離婚する事が出来るかと思われます。
まずは最寄りの、配偶者暴力相談支援センターへ相談してみてください。


DV法

 夫婦間の暴力もりっぱな犯罪です。夫婦という特別な関係ですので、加害配偶者に加害者意識が希薄である半面、被害配偶者は経済的・精神的な理由によって加害配偶者からの暴力に甘んじざるおえない状況でありますが、そのような事は、外部からはわかりにくい事もあり、深刻な事態をむかえて初めて知るといった事になる場合が少なくありません。

 加害配偶者から暴力を受けている被害配偶者を保護し、夫婦間での真の男女平等を実現しようとする法律がDV法です。
DV法は、法律上の婚姻関係にある夫婦だけでなく、内縁関係にある夫婦にも適用されますし、離婚後の暴力についても婚姻中から暴力を受けていれば適用されます。離婚後の暴力を防止する場合や保護命令の場合で生命や身体に害を加えることを内容とする脅迫とはいえない場合等を除いては、身体に対する暴力だけでなく、被害配偶者の心身に有害な影響を及ぼす言動も含まれます。いわゆる「言葉の暴力」と言われているものです。

 DV法は、各都道府県や政令指定都市が設置する「配偶者暴力相談支援センター」を被害者保護の中心的な機関とする一方で、警察官に加害配偶者の暴力を制止してもらったり、被害配偶者を保護する事で被害発生を防止させたり、加害配偶者からの暴力による怪我や病気の治療に当たった医師等の医療関係者等に警察やセンターへの通報に努めさせて被害配偶者を保護しようとしています。
又、加害配偶者からの暴力が継続している場合には、一定の要件の下で裁判所からの「保護命令」によって、加害配偶者を被害配偶者から一定の期間遠ざける事も可能です。


配偶者暴力相談支援センターと保護命令

 配偶者暴力相談支援センターは、被害者に対しての相談、カウンセリング、一時保護及び自立支援のための指導を行うほか、警察や福祉事務所と連携して被害配偶者の保護と加害配偶者による暴力の再発防止のために必要な措置を行います

 保護命令とは、被害配偶者が、加害配偶者の身体的な暴力または加害配偶者による被害配偶者の生命、身体に害を加える事を内容とする脅迫を受け、更に身体に対する暴力によってその生命身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと認められるときに、その被害配偶者の申立てによって、地方裁判所が加害配偶者に対し接近禁止、退去命令のどちらかもしくは両方の命令を発するものです。

加害配偶者がこの保護命令に違反した場合には、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」という刑事罰によって保護命令の実効性が確保されています。

(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律)


別居中、夫に生活費を請求できますか?

 あまりにも横暴な夫との同居に耐えることができず、私は2人の子供を連れて実家に帰りました。しかし私には収入がありませんので、いつまでも実家の世話になっているわけにもいきません。
せめて、夫に子供達の生活費だけでも払ってもらいたいと思っているのですが、可能でしょうか?


Ans
 これから先あなた方夫婦がこのまま別居状態でいるかどうかわかりませんが、あなたが夫と離婚するまでの間は、夫にはあなたと2人の子供の生活費を負担する義務があります。そして、あなた方夫婦が離婚した場合でも、夫には2人の子供の生活費を養育費として負担する義務があります。

このような事になったならば、あなたと夫の話し合いによって、この生活費の具体的な金額を決める事になります。
しかし、話し合いで金額を決める事ができない場合は、家庭裁判所で婚姻費用分担の調停や審判の手続きにより具体的な金額を決める事になります。


婚姻費用

 民法では、衣食住という日常生活に必要な生活費だけでなく、医療費や教育費及び冠婚葬祭費や夫婦各自の小遣い等の交際費、夫婦を中心とした家庭がその収入や社会的地位に応じた社会生活を営むために必要な費用を婚姻費用と呼んでいます
この婚姻費用は、夫婦がその資産や収入その他一切の事情を考慮して分担して負担する事としています。

具体的には、夫だけが働いていて妻は家事や育児に専念している家庭の場合には、夫が婚姻費用の全額を負担している事になりますし、夫と妻の双方が働いて収入を得ている場合には、夫と妻との話し合いによるか双方の収入比などによって婚姻費用を分担する事になります。

今回の場合において、あなたには収入がありませんので、夫が婚姻費用を全額負担する事になります。そして、婚姻費用の分担義務は、婚姻関係にあることから直接に生じる義務であり、あなたの家事労働に対する対価という意味はありませんから、別居中でも、夫に対して婚姻費用の分担を請求することが出来るのです。


婚姻費用の具体的金額の定め方

 別居中に夫が負担すべき婚姻費用の金額は別居中の妻と子供が夫と同程度の生活を維持できる金額であるとされています
なぜなら、婚姻関係にある夫婦とその間の未成熟な子は同一水準の生活を営むべきだからです。(生活保持義務)

しかし、家庭の生活実態は家庭ごとに千差万別ですので、夫婦ごとに実態に即した婚姻費用の具体的な金額を定める事は非情に容易なことではありません。
そこで家庭裁判所は、大別して3種類の方式が採用されていましたが、審理が長期化する傾向があるという欠点がありました。

そうした中、東京と大阪の現役裁判官を中心とした「東京・大阪養育費等研究会」が、養育費と婚姻費用の具体的金額を迅速かつ簡易に算定できるような方法と、この方法に基づいた算定表を作成して発表し、平成15年4月からは、多くの家庭裁判所で、この算定表を利用して婚姻費用や養育費の具体的な金額を定める調停や審判が実施されるに至っています。

(民766条)


共稼ぎ夫婦の生活費について

 夫と私は共に会社勤めをしていて、子供が2人います。
今までは2人の給料を半分ずつ出し合って、それを生活費とし、又家事も分担し合っていました。
しかしこの度、夫が管理職に昇進しました。これについては喜ばしい事なのですが、管理職に昇進すると職場の付き合いも多くなり、夫はこれまでのように生活費を負担する事が出来ないと言っています。
子供の生活費も考えなければならないので、非常に困っています。夫はどれくらいの生活費を負担すべきなのでしょうか?


Ans
 一番の解決方法としては、夫婦間での話し合いにより、具体的な負担額を決める事だと思います
しかし、話し合いが成立しなければ、貴方が家庭裁判所に申立てをする事により、調停または審判によりご主人が負担すべき生活費の金額が決定される事になります。
 その際には、内閣府等が毎年発表している、貴方の家庭と類似する標準家庭の標準生計費を必要な生活費と仮定し、この標準生計費を貴方とご主人の収入の比率で案分した金額がご主人が負担すべき生活費として決められるかと思われます。


生活費の分担方法

民法には、夫婦及び子供の生活費についての具体的な負担額の決定方法についての定めはありません
そこで、家庭裁判所における実際の審判例としては、

  1. 労研消費単位方式
  2. 生活保護基準修正方式
  3. 標準生計費方式

の3種類が主に用いられています。
この中で、同居中の共働き夫婦の各自の婚姻費用の負担額を決定するのによく用いられているのが、3の標準生計費方式です。


各夫婦が負担すべき生活費

 標準生計費とは、一定の時と場所における標準的な生活水準を維持するに必要な生活費のことをいい、人事院あるいは各都道府県人事委員会等の毎年行われる勤労世帯の家計実態調査による、その年の標準的な世帯の標準的な家計費及び総務省が毎年発行する家計調査年報で報告されるその年の標準的世帯の標準的家計費の事をいいます。

この標準生計費を現実の共働き夫婦の各人の収入比率で按分する事により、当該夫婦が負担すべき生活費の具体的な額を算出することができるのです。

これは標準的な数字であり、

  • 標準生計費に相応するだけの生活費が必要であるだろうといった、推定する事が出来るという意味で合理性がある
  • 毎年更新されるのでその時代に合った数値である

というメリットがあります。
しかし、貴方の家族構成、生活水準と各統計に表れている標準家庭との間に大きな隔たりがある場合には、合理性のない数値となりますので利用しずらく、現実離れした結果となってしまうというデメリットもあります。

(民760条)


親子に関する法律

親権者を変更したいのですが

 数年前、私は夫と離婚しました。離婚する際1人子供がいましたので、夫との話し合いで子供の親権者は夫がなりました。
その時私は子供を養っていく余裕がなかったのですが、現在では安定した職に就き、余裕も出来ました。
 このような状況で私は、親権者を夫から私に変更しもらいたいと思っているのですが、可能なのでしょうか?


Ans
親権者の変更についてですが、家庭裁判所が必要があると認める時、家庭裁判所の審判又は調停により親権者を変更する事が出来ます。


家庭裁判所の審判、調停

 離婚の際、父母の一方が親権者として定められた後でも家庭裁判所が必要があると認める時にはその審判又は調停により、親権者を変更する事が出来ます
 この様な事ができるのは、親権者として定められた父母一方が親権者として適当でないことが判明した場合や、事情の変更により親権者を替えるのが適当であるとなった場合に対処する為です。

但し親権者の変更は、親権者の指定とは違って父母の協議では変更する事が出来ません。何故かといいますと、親権者の変更は現在の親権者にとっては子に対する養育義務を放棄する事になるからです。
一般的には

  • 親権者が所在不明の時
  • 精神病などで事実上親権を行使する事が出来ない時
  • 親権者が子を虐待したり子の面倒を見ずに放置しているような場合

こういった場合が先程の「家庭裁判所が必要があると認めるとき」にあたるといえるでしょう。
この様な事情がない時は、父母の監護能力、生活環境、子に対する愛情などを総合的に考慮して判断されます。

 子が現在の親権者のもとで安定した生活を送っている時は、他方の親の生活環境等が多少勝っていたとしても、親権者を変更して子の生活に変動を生じさせる事が必ずしも子の利益になるかどうかは疑問です。
更に、子の意思や希望も尊重されなければなりません。子が15歳以上の時には、家庭裁判所は審判にあたって必ず子の意見を聞かなければならないとされています。
 今回のご質問の場合のポイントは、現在の親権者である父親がこれまでに子をどのように監護養育してきたか、子供自身の意思がどうなのかという事かと思われます。


変更の手続き

 親権者変更の審判、調停の申立権者は子の親族です。そして、審判の申立ては子の住所地の家庭裁判所、調停の申立ては相手方である現在の親権者の住所地の家庭裁判所になります。
 その後、審判調停により親権者が変更された場合には、申立人は審判・調停の確定した日から10日以内にその旨の戸籍の届出をしなければなりません。


家事事件手続法施行

 親権や子の監護に関する問題は、子供にとっても重要な問題であります。そのような事から、子の福祉の観点から考えると、可能な限り家庭裁判所の判断に子供の意向を反映される事が必要です。

 そうした事から、平成25年1月1日施行された家事事件手続法においては、家庭裁判所は、調停手続きの際や審判手続きの際には、子の年齢にかかわらず、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思の把握に努め、子の年齢のや発達の程度に応じてその意思を考慮しなければならないとされています。
 
又、審判手続きの際には、15歳以上の子については、家庭裁判所は審問という手続きによってその子の陳述を必ず聴取しなければならないとされていますし、子が未成年であっても意思能力を備えている場合には、利害関係人として審判手続きに参加できるとされています。
 そして、子が利害関係人として参加する場合に必要があると認められる場合、家庭裁判所は、子の手続的な能力を補うために、弁護士を手続代理人として選任する事ができるとされています。

(民766条、819条)
(家事事件手続法167条~172条)


監護者とは

 私は結婚をしたのですが、すれ違いの生活が多かったので夫と協議離婚をしました。子供は1人授かったのですが、親権者は経済的に豊かである夫にするという取り決めをしました。
しかし、夫では息子の面倒が十分に見れないため、私が息子の養育に当たっていたのですが、数年経ってから夫が急に息子を引き取りたいと言ってきました。私としては、息子をもう少し成長するまで養育していきたいと思っているのですが、可能なのでしょうか?


Ans
夫との協議や家庭裁判所での審判によって、あなたがお子さんの監護者になるという方法があります。


監護者とは

 未成年の子供の親権者は、通常、子供を監護養育してく事と、子供の財産の管理の両方を行うものとされています。しかし、ケースバイケースで親権者以外の者に子供の監護養育を委ねた方が子の福祉にかなう場合が多々あります。
このような場合、養育する者を親権者以外に定める事が出来ます。この者を監護者といいます。


監護者と親権者

 監護者を定めた場合、親権の内容の中で身上監護権を監護者が財産管理権を親権者が行使します。又、父母の一方が監護者となった場合には、15歳未満の子の養子縁組に際して監護者の同意が必要とされています。


監護者の決め方

 監護者を定めるかどうか、もし監護者を定めるならば誰にするのか、監護期間、監護方法、監護費用の負担といった事項は、当事者間の協議で定める事が出来ますが、子の利益を最も優先に考慮しなければなりません
当事者間の協議で定める事が出来ない場合は、家庭裁判所に申し立てをして、審判で決めてもらう事が出来ます。その際に家庭裁判所は、子の福祉の観点から監護に関する事項を定めます。

(民766条)
(家事事件手続法150条、151条、152条、154条)


私達の娘(未成年)が子供を産みました

 私達の娘は、18歳です。2年位前から1つ年上のボーイフレンドがいたのですが、その方と関係をもって妊娠をし、子供を産みました。近いうちに、これからの事についてそのボーイフレンドとその両親とで話し合いをもつ機会を得たのですが、その前に少し法律の事について知っておきたいと思っているのですが、親権は誰が行う事になるのでしょうか?


Ans
 今の状態ですと、娘さんが生んだ子供の親権は、娘さんが成人するまであなた方ご夫婦が行使する事になります。但し、娘さんのボーイフレンドが認知したり、そのボーイフレンドと娘さんが結婚した場合には少し事情が変わってきます。


親権者の親権代行

 はじめに、未成年者が子供の親になった場合の親権者について一般的な事を説明します

 親権者は、子供の監護・養育を行ったり、子供の財産を管理・処分したりするとった重大な権限をもっています。
しかし、今だ親権に服している未成年者には、その子供に対する十分な親権の行使を期待する事はできませんので、未成年者が子供の親権者になった場合、子供に対する親権は、その未成年者自身の親権者が未成年者に代わって行うものとされています

この事を、親権者の親権代行といいます。
そしてこの場合、未成年者自身が子供の親権者として行う行為は無効あるいは無権代理行為となってしまいます。

今回のケースにあてはめると、あなたの娘さんは、あなたのお孫さんの母親であり、お孫さんの親権者です。しかし、娘さんは未成年者ですので、娘さんの親権者であるあなた方ご夫婦が、お孫さんに対する親権を代行する事になります。


生まれた子供が認知された場合

 以上とは異なり、娘さんのボーイフレンドがあなたのお孫さんを認知した場合にはどうなるのでしょう

認知した子供に対する親権は、父母の話し合いで決める事が出来ます。
つまり、娘さんとボーイフレンドとの話し合いによってボーイフレンドの方に親権者になってもらう事も出来ます。
しかし、今回のケースでは、娘さんのボーイフレンドも未成年者のようですので、先程と同じようにボーイフレンドが成人するまで、ボーイフレンドの父母が代わって親権を行使する事になります。


子供の父母が結婚した場合

 これとは別に、未成年者であっても、結婚すれば成人に達したとみなされますので、娘さんとボーイフレンドの方が結婚すれば、娘さん達自身がお孫さんの親権を行使する事ができます
但し、この場合、ボーイフレンドとお孫さんとの間に法律上の父子関係を発生させるためには、結婚とは別に、ボーイフレンドの方にお孫さんを認知してもらう事が必要です。


将来についての話し合い

 このような事からお孫さんの親権を行使するのが誰であるかは、ボーイフレンドがお孫さんを認知するのかどうか、また娘さんとボーイフレンドの方が結婚するのかどうかによって変わってきます
親権を行使するのが娘さんたち自身の場合や、あなた方ご夫婦の場合、ボーイフレンドの方のご両親である場合も可能です。

 どのような事であれ、親権者となる者を決める際には、生まれてきたお孫さんのためを思って親権を行使する気持ちを持っている者でなければ、名前だけの親権者となってしまいます。お孫さんの将来のためを考え、どのような方法をとるのがベストなのかを、ボーイフレンドのご両親も含めて、十分に話し合いをされる必要があります。

(民753条、789条、819条、833条)


夫が子供の財産を勝手に処分

 現在、私と夫の間に未成年の娘が1人います。私の父は、生前、目に入れても痛くないぐらい私達の娘を可愛がってくれて、遺言で私達の娘に不動産を残してくれました。
しかし、この娘名義の不動産を夫が娘の親権者として勝手に知人に売却した事を最近になって知りました。この不動産を取り戻したいと思っているのですが、出来るのでしょうか?


Ans
 娘さん名義の不動産を取り戻せるかどうかは、貴方の夫が単独名義で売買契約をしたのか、貴方との共同名義で契約したのかなどの事情により結論が変わってきます。


親権の共同行使

 未成年の子の父母は婚姻中一方が親権を行う事の出来ないといった特別の事情のない限り子の親権者として、子の財産を子に代理して処分する事が出来る権限があります
この一方が親権を行う事の出来ないといった特別の事情として

  • 行方不明である
  • 重病にかかっている
  • 父母が事実上離婚していて一方が子と長期間別居している

といった事があげられます。
このような特別の事情がない場合に親権を行使する場合は父母が共同で行う事とされています。
これを、「親権の共同行使の原則」といいます。


親権の共同行使と相手方

 今回のご質問のように、売買契約のような取引行為においては、親権の共同行使に違反する行為を一律に無効としてしまう事は出来ません
その理由として、こうした取引を有効と信じた相手方の信頼を保護し、取引の安全を図る必要があるからです。
以下に大きく2つに分けて説明します。

  1. 一方親権者の単独名義で取引をした場合
    一方親権者が単独名義で相手方と取引をした場合、つまり「子法定代理人親権者○○××」といった名義で取引をした場合は、親権の共同行使の原則に反している事が外形上明らかですので、原則として無効となります。

    しかし、この場合、取引の相手方が、一方親権者が単独で親権を行使する権限があると信じ(先程の特別の事情があると信じていた)、そう信じるのももっともだ、という事情があれば、例外として取引の無効は主張できません
    相手方の信頼を保護し、取引の安全を図る必要があるからです
  2. 共同名義で取引した場合
    一方親権者が他方親権者の名義を無断で使用した場合、つまり「子法定代理人親権者○○××、○○△△」といった共同名義で取引をした場合は、原則として取引の無効を主張する事は出来ません
    その理由として、共同名義で取引が行われれば、相手方は親権が共同行使されたと信頼するのが通常ですので、その信頼を保護して取引の安全を図らなければならないからです。

    しかし、この場合でも、一方親権者が他方親権者に無断で共同名義で取引をした事を、相手方が知っていた場合まで相手方を保護する必要はありませんので、その場合は例外として、取引の無効を主張する事が出来るものとされています。

 今回の場合にあてはめて考えてみますと、
もし、夫が自分ひとりの名義で売買契約をしていた場合(1の場合)、不動産を取り戻せるのが原則となり、例外として夫が知人に、「貴方が行方不明だから自分1人で親権を行使できる」などの嘘の説明をし、知人がそうだと信じ込んでしまったといった事情があれば、取り戻しが認められない可能性があります。

 これに対し、夫があなたの名義を用い、共同名義として売買契約をした場合(2の場合)、原則としては無効を主張する事が出来ない事になり、例外として、知人が、夫が貴方に無断で貴方の名義を用いた事を知っていたというような事情があれば、不動産を取り戻す事が出来ます。

 いずれの場合においても、その取引における事情を調べてみませんと結論が出ません。

(民110条、818条、824条、825条)


その他家族に関する法律

後見人等になった人に対しての費用や報酬

 後見人、保佐人、補助人(以下、後見人等)となった人が事務処理を行う為の費用や、報酬はどのように支払えばいいのでしょうか?


Ans
 後見(保佐、補助)の事務を行う為に必要な費用、後見人等の報酬は、本人(被後見人、被保佐人、被補助人)の財産の中から支払われる事になります。


後見、保佐、補助の事務費用

 後見人等が事務を行う為に必要な費用は、本人(被後見人、被保佐人、被補助人)の財産の中から支弁するものと定められています。なぜならば、これらの事務処理は、本人の利益のために行われるものだからです。

 例えば、財産管理を行う為に必要な通信費や交通費などを挙げる事が出来ます。したがって、後見人等は、これらの費用を建て替えて支出した後、本人に請求する事も出来ますし、本人の財産から直接支出する事も出来ます。
 この際に、後見人等がこれらの費用を本人の財産から支弁するのに家庭裁判所の許可等を得る必要はありません。その代わりに、後見人等に就任した際に、事務のための費用が毎年どのくらい必要であるのかを予め予定しておく必要はあります。


後見人等の報酬

 家庭裁判所は、後見人等に対し本人の財産の中から相当な報酬を与える事が出来ます。後見人等の事務は本人の利益のために行われるものですので、その報酬も本人の財産の中から支弁するのが相当です。
 しかし、事務費用の場合とは異なり、報酬額については家庭裁判所が決めるものとされています。実際には、後見人等から報酬付与に関する審判の申立てを受けて家庭裁判所が相当な額を決定します。
この申立ては任務終了後に行う事もあれば、在職中に一定時期までの報酬の支払いを求めることもできます。そしてこの申立てを受けた後、家庭裁判所は、後見人等と本人の資力、後見人等と本人の間柄、後見等の事務の難易度や在職期間、後見人等が管理する財産の額などを考慮して報酬額を決定します。

(民861条、862条、876条の5、876条の10)
(家事事件手続法39条、別表第1第13行)


後見開始の審判を受けた後の登記

 先日、私の知人との会話の中で「(知人の)伯父さんが後見開始の審判を受け、その事が登記された」といった事を知人が言っていたのですが、この登記制度について少し聞きたいのですが?


Ans
この後見登記制度は、平成12年の民法改正によって創設された制度です。後見、保佐及び補助の開始の審判がなされると、登記所に備える「後見登記等ファイル」に所定の登記事項が登記されます。


平成12年以前では

 後見登記制度が創設される以前は、禁治産宣告や準禁治産宣告の審判がなされると公告され、かつ本人の戸籍に記載されていました

 ちなみにですが、この禁治産宣告や準禁治産宣告の審判は、現行法では後見、保佐、補助開始の審判に相当する制度です。これは、禁治産者等の取引行為は、後で取り消す事が出来ますので、取引の相手方が禁治産宣告や準禁治産宣告を受けているかどうかの事実を戸籍によって知り得るようにして取引の安全を維持する為でした。
しかし、プライバシー保護の観点から、公告や戸籍への記載を廃止し、代わって後見登記制度を創設したのです。


後見登記制度の内容

 後見、保佐及び補助開始の審判に関する登記は、家庭裁判所書記官の嘱託によって行います。登記は、法務大臣の指定する法務局で行います

登記される基本的な事項は次のようなものになっています。

  •  後見、保佐または補助の選択、開始の審判をした裁判所、審判の事件の表示、審判確定年月日
  •  成年被後見人、被保佐人または被補助人の氏名、生年月日、住所、本籍
  •  成年後見人、保佐人または補助人の住所氏名
  •  登記番号
  •  成年後見監督人、補佐監督人または補助監督人が選任された時は、その者の住所氏名
  •  保佐人または補助人の同意を要する行為が定められた時は、その行為
  •  保佐人または補助人に代理権が付与された時は、その代理権の範囲
  •  複数の成年後見人、保佐人、補助人が共同して権限を行使すべき事が定められた時は、その定め


登記事項証明書の請求権者と取引の相手方の保護

 登記記録についての登記事項証明書や閉鎖登記事項証明書を請求する事が出来るのは、プライバシー保護の観点から、本人、成年後見人等、や一定の親族などに限定されいます
ですから、成年被後見人等と取引をしようとする相手方は、直接、登記事項証明書を交付請求する事ができない事になります。

この場合、取引の相手方は本人の判断能力に疑問を抱いたり、成年後見人等の代理権の有無を確認しようと考える場合は、本人や成年後見人等に対して登記事項証明書の提示を要求して、審判の有無や内容、成年後見人等の代理権の有無や範囲を確認する事になります。

(後見登記等に関する法律4条、10条)
(家事事件手続法116条)


成年後見人の具体的な仕事

 遠く離れた実家に私の母が1人で暮らしています。
最近、その母に認知症の症状が出始めているという事を実家の近所の方が教えて下さいました。一番心配なのは母の体調についてですが、お金の管理についても心配です。こうした事を知人に相談したのですが、「成年後見人を付けてもらってはどうか」というアドバイスをしてくれました。
この「成年後見人」という人は何をしてくれるのでしょうか?


Ans
 成年後見人は、認知症などにより本人の判断能力が十分でなくなったときに、親族等の申出により、家庭裁判所の審判によって選任されます。
 その後、選任された成年後見人は、本人の療養看護及び財産管理に関する事務を行います。
(このサイトの、家族生活→家族についてのその他の問題→成年後見制度を参照してください)


成年後見制度

 成年後見制度は、民法改正を経て、平成12年4月から施行されました。
成年後見制度は、判断能力の不十分な方を支援し保護する為の制度です
例えば、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者といった方々が対象です。

 その目的とは
本人の保護、自己決定権の尊重、残存能力の活用、ノーマライゼーションという新しい理念(すべての人が健常者と均等に当たり前に生活できること)との調和を図りながら、柔軟かつ弾力的に利用しやすくするといった事を目的とする制度です。

成年後見人の仕事の内容を大きく分けますと

  • 財産管理
  • 見守り活動
  • 身上監護

といったように分ける事が出来ます
以下で、これらについて簡単に説明いたします。


財産管理

 成年後見人は、本人の財産に関して、包括的管理権を有し、財産に関する法律行為について包括的代理権を持ちます
このように、本人の財産を全て管理して利用する事が出来る事になりますが、先程の理念が大前提となります。

すなわち、財産管理を行う際には、成年被後見人の意思を尊重し、かつその心身の状態及び生活状況に配慮しなければならないとされています。
つまり、本人のために、本人に代わって、財産管理をする事が出来るという事です。
財産管理の内容は
財産の把握(調査等)
財産の管理(保管・支出等)

に大別する事が出来ます。

  • 財産の把握(調査等
    成年後見人はまず、本人の財産の状況把握が必要となります。本人がこれからどのように生活していくのかといったライフプランをたてる為にも、どのような財産があるのか、収支のバランスはとれているのかなどを把握する事はとても重要です。
    よって、成年後見人は本人の財産調査として年金、金融機関への問い合わせ等をする事が出来ます。
  • 財産の管理(保管・支出等)
    成年後見人は、本人の財産について、通帳、印鑑、年金通帳、権利証等を管理する事になります。本人に不動産がある場合には、不動産の管理も重要な仕事となります。
    また、本人が賃借物件や施設入所しているような場合には、賃料や施設費の支払いも重要な仕事です。成年後見人の財産管理の権限は、本人のためのものですが,生活に必要のない財産の運用や売却行為は許されていません



見守り活動

 成年後見人が、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うにあたり、「成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活状況に配慮しなければならない民法858条)」とされていますので、成年後見人には身上配慮義務、本人尊重義務が課されています

よって、成年後見人はその職務を適切に行う為、成年後見人と本人とが定期的に面接をするなどして、本人の心身状況を正確に把握して、状況に応じで適切に対処する事になります。


身上監護

 成年後見人の仕事の内容として、成年被後見人の生活、療養看護に関する事務がありますが、これらはどういったものなのでしょうか

 成年後見人の仕事は、あくまでも「法律行為」でありますので、介護や看護といった事実行為は含まれていません

法律行為としての身上監護事項と考えられているものとしては

  1. 介護・生活維持に関する事項(介護サービス契約の締結等)
  2. 住居の確保に関する事項(賃貸借契約の締結等)
  3. 施設の入退所等に関する事項(施設入所契約の締結等)
  4. 医療に関する事項(医療契約の締結)
     但し、医療同意権は含まれていないというのが現在の法務省の解釈ですので注意してください
  5. 教育・リハビリに関する事項(教育・リハビリに関する契約の締結等)
  6. 異議申立て等の公法上の行為等

といった事が考えられます。


裁判所による監督

 成年後見人は、家庭裁判所により選任され、家庭裁判所の監督を受けます
家庭裁判所が監督するとは

  • 成年後見人は、およそ一年に一度、財産管理の内容を家庭裁判所に報告する事が必要とされています
  • 本人の居住用不動産の売却にあたっては裁判所の許可が必要です(民法859条の3)
  • 成年後見人が不適任となった場合には、家庭裁判所により解任される事もあります

 以上のように、成年後見人は家庭裁判所の監督の下で、本人のために、本人に代わって、本人の意思を尊重しつつ、その身上に配慮しながら、身上監護と財産管理に関する法律行為を行ってくれます。

(民858条、859条、863条)



高齢者虐待防止法

 新聞の社会欄に高齢者虐待防止法という言葉があったのですが、どのような法律なのでしょうか?


Ans
正式な法律の名称としては、
「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」
(以下、高齢者虐待防止法とします)です。
この法律は、高齢者虐待の防止に関する国等の責務、虐待を受けた高齢者に対する保護のための措置、養護者による虐待を防止するための養護者に対する支援のための措置等を定めたものです


高齢者虐待防止法の目的

 この法律は、平成17年にこの法律が成立、平成18年4月1日から施行されることになりました。

 この法律の目的は高齢者の介護者による高齢者に対する虐待が深刻な状況にある事に対して、高齢者の虐待に関する国等の責務を明らかにし、虐待の防止、虐待を受けた高齢者に対する保護の為の措置や、高齢者の介護者への支援の措置等を定めて、高齢者の権利の擁護や介護の負担の軽減を図ることです

 この法律の焦点は大きく分けますと

  1. 養護者による高齢者への虐待(養護者とは、現に高齢者を養護する者で養介護施設従事者等以外の者)
  2. 養介護施設の従事者等による高齢者への虐待(養介護施設とは、老人福祉法又は介護保険法に規定する施設)

となっています。
以下では、1について述べたいと思います。


高齢者虐待の定義

 高齢者虐待防止法において、高齢者とは、65歳以上の者とされています。以下は、養護者によるどの様な行為を虐待と定めているかについてです

  1. 高齢者の身体に、外傷が生じたり、生じるおそれがる暴行を加える事(身体的虐待
  2. 高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置や、養護者以外の同居人による1、3又は4といった行為と同様の行為の放置等をするといった養護を著しく怠ること(ネグレクト
  3. 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと(心理的虐待
  4. 高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること(性的虐待
  5. 養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分する事、その他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること

上記の5については、養護者だけではなく高齢者の親族も加害者の対象になっています
これは、現に世話をしていない親族であってもこの様な経済的虐待を行う可能性が大いにあるからです。
 例えば、たまに高齢者の家に来る親族が、高齢者本人の金銭を本人に無断で使用したり、高齢者本人に使用させない等といった行為です。


虐待の通報、届出

 この法律において、養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した人は、虐待により高齢者の生命や身体に重大な危険が生じている場合には、すみやかに市町村へ通報しなければなりません。(通報義務
その他の場合には、市町村に通報するよう努めなければなりません。(通報努力義務

 このように、通報義務を高齢者の生命、身体に重大な危険が生じている場合に限定したのは、高齢者虐待は家庭内のプライバシーや人間関係にかかわる面もあるからです。その他に、高齢者自身が市町村に虐待されている事を届け出る事ができます。


通報、届出に対する市町村等の措置

 これらの通報や届出を受けた市町村は、速やかに高齢者の安全確認等の事実確認を行い、必要に応じ、一時保護のために高齢者を施設に入所させるなどの措置や、成年後見の審判の請求を行うなどして高齢者の保護を図ります

 虐待により高齢者の生命、身体に重大な危険が生じているおそれがる時は、市町村長は、地域包括支援センターの職員その他の高齢者の福祉に関する事務に従事する職員に高齢者の住居に立ち入って調査や質問をさせる事が出来ます。
また、この立ち入り調査において必要がある時は警察署長に援助要請をする事とされています。

 その他に、虐待を受けた高齢者は、老人福祉法に基づいて特別養護老人ホームへ入所する場合がありますが、この場合、市町村長や養介護施設長は、虐待を行った養護者がその高齢者に対して面会を求めてきた時、その面会を制限する事が出来るようになっています。


養護者に対する支援

 虐待の防止や虐待を受けた高齢者の保護の為には、養護者に対する支援も重要な事です

その為、市町村長は、養護者に対して相談、指導、助言などを行い、養護者の心身の状態に照らして緊急の必要がある場合には、高齢者が短期間養護を受ける為に必要な居室を確保するなど、養護者の負担を軽減する為の措置を講ずるものとされています。

(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)


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